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「売れたのに利益にならない」を解消する最新SCMとは?IT導入完全ガイド(2/2 ページ)

» 2016年07月19日 10時00分 公開
[原田美穂キーマンズネット]
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SCM導入の反省と「第三世代SCM」のトレンド

 当時のSCMで課題となったのが、「ITによる最適化をロジックとして盛り込み過ぎたこと」だ。需要と供給の予測をシステム上にロジックとして組み込んでしまうと、突発的なイベントや外部要因などを組み合わせた判断が難しく、変動が少ない、または変動のトレンドが一定の分野でなければ対応しにくくなってしまう。

 例えば、突発的なイベントで在庫が逼迫(ひっぱく)したとして、急激に増加した需要を基に「需要トレンドが伸び続ける」と判断してしまうと、イベント終了後に在庫が積みあがる結果になる。一方で、先行してこうしたイベント情報を把握できた場合は一時的に人の判断で生産を増やしておきたいこともある。

 こうしたことから、「マニュアル(手動)回帰」が進んだのが2008年ごろ。実績情報を基にしたシナリオシミュレーションと、それを基にした意思決定を推進しようというSCM改革第二のトレンドだ。

 このとき、業務で問われたのは実行計画の最適化だけではなく、「変動への追従」や「将来の採算性」といった、機敏に将来を予測する能力だ。外部環境の変化が発生した際すぐにパラメータを調整して計画を組み立てなおす速度が求められたといってもよいだろう。

 さらに、さまざまな分野でグローバル化が進み、また消費者側のニーズもさらに多様化してきた現在では、ますます定型的な需給予測のロジックを使い続けることは難しく、むしろイベント発生時にどれだけ迅速に判断できるかが重要になってきている。

SCM改革のトレンド 図1 SCM改革のトレンド(出典:クニエ)

業績の上ぶれも下ぶれもマイナス要素に、財務情報との連携

 株式市場に上場している企業であれば、業績の見通しに変化があった場合にどれだけ速くリスクや影響範囲を確定して公表できるか、が投資家からの評価指標の1つになっている。

 この「業績見通しの把握と迅速な公表」は、万一の災害対応や、リスク情報の開示だけではない。当初見込みを大幅に超える「業績の上方修正」という、通常であれば歓迎されるような情報であっても、開示タイミングが遅ければ、「情報の適宜開示ができない企業」として株式市場からマイナスの評価を受けかねない。

損益分岐点の判断 図2 損益分岐点の判断1つとっても計画時と実際とでは差が開く(出典:田中大海「S&OPの勘所」)

 こうしたリスクを回避するためにも、ヒト・モノの管理だけでなく、カネと連動して分析する体制が必要とされている。そこで度々注目を集めているのが「Sales and Operating Planning(S&OP)」という考え方だ。

 この考え方自体は古くからあるものだったが、電子・電器メーカーのように製品ライフサイクルの短い業界を中心に、サプライチェーン情報をひも付けて将来の財務リスクを判断する目的で業務プロセスに取り入れる企業が増えている。また、大規模な設備投資が必要な業界でも、このS&OPを投資判断に役立てようとする動きも出てきている。

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