目に見えない特殊な光「エバネッセント光」で造形することで、マイクロサイズの工場構築も夢じゃない。驚きの造形技術に注目だ。
今回は、3Dプリンタと同じように樹脂を硬化させてナノサイズのモノを思い通りに作り上げる「ナノサイズ3Dプリンタ」こと「エバネッセント光造形」技術だ。マイクロマシンやナノマシンが世界中で研究され、リソグラフィや高分子の化学合成による製造法が発表される一方で、これは目には見えない「エバネッセント光」と呼ばれる特殊な光で造形する。半導体ウェハの微細欠陥の計測や、未来の「マイクロサイズの工場」構築にもつながる研究とは、一体どんなものなのか。
ナノサイズ3Dプリンタとは、エバネッセント光のエネルギーで樹脂を硬化し、50〜100ナノメートル程度のオーダーで造形を行う装置だ。東京大学先端科学技術研究センターの高橋哲教授らのチームが十数年前から研究する。
基本的には、一般化してきた光造形3Dプリンタと同様に光で樹脂を固める仕組みだが、その光に伝搬光ではなくエバネッセント光を使うところが大きな違いだ。従来の光造形3Dプリンタでは、マイクロメートル以下の加工分解能を得ようとすると、一般的に硬化させるのは点、または線であり、それを連続して行うことで大きな造形物を作ることになる。
エバネッセント光造形技術では、ナノメートルオーダーの加工分解能を維持したまま、一括面露光が可能であり比較的大きな面積を一度に作りこめる。1層目を作ったら、さらに2層目、3層目と作り込むことで、複雑な形状を仕上げられるわけだ。
現在のところ、図1のように鮮明な模様を100ナノメートルの厚さ、つまり食品用ラップ(十数マイクロメートル)の100分の1以下で一括造形を実現した。厚みは広い範囲でコントロール可能で、50ナノメートル以下の薄膜の作成や約500ナノメートルの層の10層積層にも成功した。
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