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モバイル活用に「EMM」が不可欠な理由IT導入完全ガイド(3/5 ページ)

» 2016年08月29日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

MDM機能

対応するリスク=盗難・紛失、デバイスの不正利用(なりすまし)

 デバイスを置き忘れたり盗まれたりした場合、不正利用される可能性がある。これに対しては基本的には端末パスワードを設定し、かつ推定されにくいものにすることが不可欠だ。これにはパスワードポリシーを作成し、設定と桁数などを強制する機能がある。ただしパスワードが破られる可能性は常にある。

 そこでデバイス内部の情報を消去するのが次の対策だ。これにはリモートロック、リモートワイプがあり、管理者側から通信で端末を遠隔ロックしたり、データ消去したりできる。リモートワイプは従来はデバイス全体に対して行うものだったが、現在は企業利用領域だけのセレクティブワイプ機能が追加され、企業情報に関わる領域だけを選んで消去できるようになった。

 なお、紛失したデバイスに「デバイス回収用のメッセージと連絡先情報の表示」「デバイス回収時まで有効な強制ロック」「デバイス位置情報の強制取得」といった回収まで視野に入れた機能を搭載するEMMツールもある(図2)。

図2 紛失デバイスへの回収・連絡用メッセージ表示 図2 紛失デバイスへの回収・連絡用メッセージ表示(出典:アイキューブドシステムズ)

 しかしリモートコマンドが届く通信可能エリア外にデバイスがある場合にはコマンドは実行されない。そこで「デバイス初期化コマンドの無期限継続」や一定条件のもとでの自動部分ワイプを設定できるツールもある。ただし紛失・盗難が発覚する前に攻撃者が不正アクセスして目的を遂げてしまう可能性や、計画的な攻撃者なら、そもそも電源さえ入れずに内部ハードウェアを取り出して解析、データを取り出す可能性がある。

 そんな場合でもデータを保護できるようにデータ暗号化は重要だ。暗号化そのものはデバイス搭載の機能が使われるが、AndroidやWindowsでは使用/不使用の設定がユーザーに任されている。これをEMMツールで強制設定する、又は設定することをメッセージなどで督促できる。

対応するリスク=脱獄/root化によるマルウェア侵入、システム情報や業務情報の漏えい

 エンドユーザーの中にはポリシー外の利用を望む者もいる。脱獄(iOS)やroot化(Android)によってOSによる制御からデバイスを自由にする方法がネット経由で入手可能なため、試行してみる人は後を絶たない。これが行われるとマルウェア侵入の可能性が高くなり、ルートパスワードが参照されて外部からデバイスの制御が奪われる可能性がある(図3)。

 デバイス内のみならず、接続する社内システムが不正侵入される危険も考えなければならない。EMMツールはそんな危険をはらむ脱獄/root化されたデバイスを早期に発見し、社内システムへの接続拒否や警告メッセージの表示、強制ワイプなどの対応を可能にする(図4)。

図3 ルートパスワードの奪取例 図3 ルートパスワードの奪取例(出典:モバイルアイアン)
図4 脱獄/root化デバイスの発見 図4 脱獄/root化デバイスの発見(出典:モバイルアイアン)

対応するリスク=デバイス固有機能、外部インタフェースを利用した業務情報漏えい

 デバイスの機能にはカメラ、画面キャプチャー、Wi-Fi接続、Bluetooth接続、SDカード利用などもある。これらは業務上必要になるケースも多いが、特定業務では禁止ポリシーが望ましいことも多い。EMMツールではその場合、デバイスやグループごとに、強制的にこれら機能の利用制限ができる。

 この他、資産情報(機種、OSバージョン、電話番号、シリアル番号、導入アプリなど)が一元管理できる機能、定義情報(プロファイル)の配布や削除機能などが主なMDM機能である。

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