「この定例会議、意味あるの?」「会議に時間を取られすぎて残業に」。不満を持つ人も多いのに、なぜ無駄な会議は減らないのか。
毎日朝から晩まで会議に追われ、なかなか自分のタスクをこなす時間が取れない。会議に出席してもいたずらに時間を費やすばかりで、建設的な議論が行われているように思えない。そもそも、開催目的が曖昧な会議が多過ぎる。結果、相次ぐ会議で生じてしまった後れを取り戻すために、残業や休日出勤でカバーせざるを得ない……。
こんな不満を、きっと多くのビジネスパーソンが抱えていることだろう。にもかかわらず、無駄な会議はなかなか減らないし、長引く会議時間も一向に短縮されない。一体なぜなのか? 今回は、会議の見直しをテーマに、会議の生産性を上げる「考え方」とそれを支援する6つのツール群を紹介しよう。
日本企業は欧米の企業と比較すると、昔から会議を好む文化があった。全体方針がトップダウンで現場に下される欧米企業に対して、日本企業は現場の合議による「すり合わせ」で方針をボトムアップで固めていく文化が根強い。従って欧米企業に比べると自ずと会議の頻度は多く、かける時間も長くなる傾向がある。
そして、こうした「すり合わせ文化」がまさに、かつての日本企業の強さを支えていたのだ。従って、欧米企業と比べて会議の数が多いことや、会議時間が長いことを一概に悪いとは決め付けられない。
しかし、これまでの会議の在り方を見直し、その運用の改善に乗り出す企業が増えてきている。その背景には、少子高齢化による労働人口減少に対応するために、多くの企業が従業員の生産性向上に真剣に取り組み始めたという事情がある。
今後、企業が確保できる人材の数は限られる。にもかかわらず経済のグローバル化の進展で、市場競争は激しさを増している。こうした事態に対応するには、業務の無駄をなるべく減らし、生産性を底上げしていくしかない。そのためには、会議に費やしている無駄な時間や労力にも積極的にメスを入れていこうというわけだ。
ただし、そうした取り組みの成果が順調に上がっている企業は、まださほど多くないようだ。多くの企業に社内コミュニケーションに関するコンサルティングを実施している日本能率協会コンサルティング エンパワーソリューションセンターセンター長チーフ・コンサルタント 笠井洋氏によれば、会議には本来、意見や知恵を出していく「創造重視型」、意思決定を行う「意思決定型」、情報共有のための定例ミーティングに代表される「行動重視型」の3つのタイプがあるという。そして日本企業では、圧倒的に行動重視型の会議が多いと指摘する。
「日本企業では、チーム内での情報共有や進捗(しんちょく)を確認するだけの会議が非常に多く見られます。しかしこうした会議は、ITツールなどをうまく活用して普段から情報共有の機会を設けていれば、かなり減らすことができるはずです」
日本能率協会コンサルティングが企業に対して会議効率化を指南する際、真っ先に提案するのが「ミーティングデザイン」、つまり会議を設計することだという。「その会議の目的は何か」「その会議で扱う議題は何か」「会議のゴールをどこに設定するか」「具体的に何をアウトプットするのか」。こうした事柄をあらかじめきちんと定義し、ドキュメントにまとめた上で、会議の参加者同士で共有しておく。
次に「会議同士の連関」をデザインする。ある会議で話し合って出した結論は、次にどの会議にどのような形でインプットされ、さらにそこで話し合われた結果は次にどの会議に反映されるのか。こうした、社内各所で行われている会議同士の連関性と、それぞれのインプットとアウトプットの定義をきちんと整理する。
さらには、会議が行われた後のフォローも大事だ。せっかく有意義な議論が行われても、そこで決まった事項がその後きちんと履行されなければ、せっかく開いた会議の意味がなくなってしまう。大事なのは、会議で決まったアクションプランがその後きちんと履行されているのかどうか、その進捗状況がリアルタイムで可視化できる仕組みが求められる。
このように、会議の在り方を見直す際には「全体」「詳細」「事後」の3つの切り口から会議を設計し、それをきちんと明文化しておくことが重要になる(図1)。
会議の在り方を見直し、かつその運用を効率化するには、やはり会議の主催者が率先してミーティング・デザインに取り組み、かつ会議のファシリテーションスキルを磨く必要がある。しかし現実問題として、従業員に対して会議運用のコツを体系的に教育している企業は少なく、かつ今後は少子高齢化で優秀な人材の確保はますます難しくなっていく。
そこで、さまざまなITツールを有効活用することにより、たとえ腕利きのファシリテーターがいなくても、会議を効率的に運用する試みが進んでいる。本稿ではそうしたITツールを便宜上、「会議支援ソリューション」とひとまとめにしているが、その中には極めて多種多様なジャンルのソリューションが含まれている。
以降、代表的なものを“6つ”ピックアップして簡単に紹介する。
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