メディア

まだまだ強いオンプレミス 一番採用されているサーバは?【読者調査】企業のITインフラの現状(2025年)/前編

ITインフラのクラウドシフトが進んでいるが、まだまだオンプレミスを採用する企業は多い。企業ITインフラの形態や、採用されているサーバ、オンプレミスでのトラブル事例を紹介する。

» 2025年03月19日 18時45分 公開
[キーマンズネット]

 企業におけるITインフラのクラウドシフトが進んでいる。IDC Japanが2024年6月に発刊した「国内ITインフラ市場 売上額予測:2023年〜2028年」によると、国内ITインフラ市場の2023〜2028年における支出額のCAGR(年平均成長率)は7.9%で、2028年の売上額は8兆5478億円と予測されており、その中でもパブリッククラウドサービス(IaaS)が最も成長するという。2028年には国内ITインフラ市場における売上額構成比が35.7%にまで拡大するとのことだ。

 そこでキーマンズネットは「企業のITインフラについてのアンケート/2025年」(実施期間:2025年2月21日〜3月7日、回答件数:212件)を実施。前編となる本稿は、ITインフラの形態や、採用されているサーバ、オンプレミスでのトラブル事例を紹介する。

過半数がクラウド利用もオンプレミスが最多

 はじめにITインフラの形態を聞いたところ「オンプレミス」(34.9%)が最多で、「ハイブリッドクラウド」(25.5%)、「パブリッククラウド」(18.4%)、「プライベートクラウド」(9.9%)と続き、過半数がクラウドを利用していることが分かった(図1)。従業員規模別では、規模の大きい企業群ではハイブリッドクラウドが採用される傾向があった。

図1 勤務先におけるITインフラの形態(従業員規模別)
図2 勤務先におけるITインフラの形態(従業員規模別)

 また、ハイブリッドクラウド採用企業に理由を聞いたところ「既存のオンプレミス資産を生かすため」(57.4%)、「クラウドの拡張性を活用するため」(53.7%)、「パフォーマンスを最適化するため」(42.6%)が上位に挙がり、既存のオンプレミスを生かした上でクラウドを組み合わせて活用しているのが分かる(図3)。

図3 ハイブリッドクラウドを採用した理由

 また、業務領域ごとのインフラの形態を聞いたところ、機密性の高いデータを扱い移行リスクの高い基幹系システムはオンプレミスで運用し、メールシステムやグループウェアなどの情報系システムはパブリッククラウドを利用するなど、複数サービスを組み合わせることによって自社状況に合わせた環境を整備している。

オンプレミス採用企業に聞く「導入理由」と「現状課題」

 続いてオンプレミス採用企業に対して理由を聞いたところ、「セキュリティ、コンプライアンス対応のため」(47.7%)、「オンプレミスでしか運用できないシステムがあるため」(38.3%)「データ保護のため」(31.7%)、「コスト削減のため」(25.8%)と続いた(図4)。

図4 オンプレミスを採用した理由

 特に大規模帯の企業群では、セキュリティやコンプライアンスへの対応やオンプレミスでしか運用できないシステムが残っているとの声が多く、反対に規模の小さい企業群では運用に慣れていることやカスタマイズの柔軟性を挙げる声が多い傾向にあった。

 オンプレミス運用における課題では「運用が属人化している」(55.5%)や「運用の負荷が大きい」(28.9%)といった運用コストの重さに票が集中した(図5)。

図5 オンプレミス運用時の課題

 他にも「クラウド連携が難しい」(25.8%)や「新しい技術を採用できない」(24.2%)、「スケーラビリティに制約がある」(23.4%)など、良くも悪くも自社環境がロックされてしまうことを問題視する意見もあった。

 ちなみに、今回最も採用率が高かったオンプレミスサーバのメーカーは「Dell Technologies」(25.8%)で、次いで「Hewlett Packard Enterprise(HPE)」(18.0%)や「富士通」(16.4%)も上位に挙がった(図6)。

図6 採用しているオンプレミスサーバのメーカー

システム崩壊にデータ損失…オンプレミスのトラブル事例から学べること

 最後に、オンプレミス採用企業がこれまで経験してきたトラブル事例を参考に、運用時に注意すべき2つの点を紹介したい。

 一つは機器の故障によって障害が発生することだ。「サーバが故障した時にバックアップデバイスに障害が発生しデータの損失を経験した」や「ファイルサーバがネットワークポートの不具合で突然つながらなくなった」「仮想システム(VDI)が突然ダウン、システム崩壊し長期にわたり復旧しなかった」など、突然の機器故障によって業務を止めざるを得なくなったケースが多く寄せられた。

 故障の原因は「地震などの災害時に機械故障に見舞われた」や「経年劣化に拠るディスクブレーク」「機器の突然の故障や事故メンテナンスを怠って不調になる」などが挙げられ、機器の定期メンテナンスに加え、さまざまなケースを想定したバックアップ体制を組んでおく必要がありそうだ。

 想定外に運用負荷がかかるというのは、オンプレミス運用時に注意したい2つ目のポイントだ。「機器老朽化による入れ替えのデータ保護」や「設備点検などによる業務への影響」のようにメンテナンス時に業務を中断させてしまうことがあったり、「HDD故障やサーバ不具合などリモートでは対応できず現地に行く必要がある」といった手間が生じたりすることもある。「情シスが休暇を取っている日にトラブルが起きた際、出勤日まで何も手を打てない」と不安を抱える方もいた。

 こうしたトラブル経験もあってか、現場からは「クラウドとのハイブリッド化によりバックアップ体制を強化したい」や「CPU、メモリ、HDD以外の閾値管理も欲しい」「壊れにくい機器を開発してほしい」など、クラウド化への支援やさらなる機能強化を求める要望が多く挙げられた。

 以上、前編は企業におけるITインフラの形態として多かった「オンプレミス」や「ハイブリッドクラウド」の採用企業に対し、採用理由や運用課題を聞いてきた。後編では「パブリッククラウド」の利用企業を中心に利用実態を紹介する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。