今回の日本発表のために来日した、マイクロソフト コーポレート バイスプレジデント マイクロソフト デバイス担当のパノス・パネイ氏は、かつて日本に住んでいたことがある。同氏は、その際に感じた、日本のものづくりにおける「ディテールにこだわり、妥協しない」という精神がこのSurfaceファミリーに反映されていると述べる。
発表会ではSurface ProとSurfaceペンの相性と性能をアピールするため、心書家の岸本亜泉氏が筆をSurfaceペンに持ち換え、ライブで作品を描くというデモも行われた。岸本氏は「筆圧を変えることで“かすれ”などが再現される。デジタルでここまでできるのかと感動の連続」とコメント。
このようなアート分野での活用はともかく、ビジネス分野ではペンデバイスやタッチデバイスがどのように有用になるのか。マイクロソフトはその問いに「クラウド」と「ソフトウェア」で答える。
発表会では、マイクロソフトの「OneNote」にSurfaceペンで書き込んだ数式を認識し、自動でそのグラフを表示するデモを行った。これまでであれば紙と鉛筆でメモをしたものを再度PCへタイプしていたが、OneNoteとペンがあれば1カ所で合理的な作業ができるというものだ。
さらに、マイクロソフトが現在開発中のコラボレーションサービス「Whiteboard」のデモが行われた。これはデジタルキャンバスにて再現したホワイトボードで、Surfaceデバイスを持っていれば、遠隔地でもコラボレーションが可能というもの。
例えば、Surfaceペンを用いてWhiteboardに三角形をラフに描くと、その図形を認識し“清書”してくれる。あとから三角形の角度を変更し、直角にすることも可能だ。
ちなみに、四角を描いたあとにその中にけい線を描くと、それが「表」として認識される。手書きでそのセル内に文字を書いて、行をソートすることも可能だ。このWhiteboardはクラウドでつながり、別のユーザーがリアルタイムに追記している様子も見ることができる。マイクロソフトのSkypeと組み合わせることで、コラボレーションがより深まるというものだ。Whiteboardは2017年秋にリリースを予定している。
これらのデバイス、ソフトウェアを見ると、マイクロソフトはユーザーに対し、長いスパンでSurfaceデバイスの浸透を狙っていると想像させられる。狙う市場の1つは「学生」だ。Windows10 Sを搭載したSurface Laptopは海外では教育市場向けを想定して展開されており、デジタルネイティブの学生が使いやすさや、デザインを重視してSurfaceファミリーを選択することを期待しているように感じられる。
ちなみに、Surface Proはフィンランドのテキスタイル企業「Marimekko」(マリメッコ)とのコラボレーションを実施しており、専用スキンシールを販売する予定だ。学生や女性を中心に人気が出そうである。
しかし、マイクロソフトが最終的に狙うのは法人市場だろう。デジタルネイティブの学生たちがペンデバイスをフル活用して板書を行い、PDF化された教科書をもとに学んだ後、新入社員として企業に入った際、そのスタイルで仕事ができなければ生産性が落ちてしまうといったケースもあるかもしれない。その意味で、企業側もSurfaceのようなスタイルのPCは注目すべきではないだろうか。マイクロソフトは早めに学生たちの支持を得たいのだろう。
特にモバイルデバイスとして持ち運びができ、どこでも仕事ができるということ、そしてSkype、Whiteboardのようなコラボレーションツールが用意されていて、クラウドとも親和性が高いことは、マイクロソフトが考えるこれからのワークスタイルに必須だということを、これらのSurfaceデバイスが指し示している。「働き方改革」を考える企業にとってのモデルケースとして参考になるのではないだろうか。
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