日本企業のクラウド利用は「虫食いだらけ。あと数年で立ちゆかなくなる時期が来る」――ではどうすればよいか? 世界中の企業の変革を支援した実績から導き出された「いま日本企業がやるべきこと」を聞いた。
2017年5月30日〜6月2日、アマゾンウェブサービスジャパンが年次イベント「AWS Summit Tokyo」を開催した。会期中はAmazon Web Services(AWS)の国内のユーザー企業が10万社を超えたことや、大阪リージョンの開設が発表されて話題となった。特に、大阪リージョンは今のところ一部ユーザー向けの限定サービスだが、東京/大阪リージョンを使えば日本国内でDR構成が完結できるようになるため、日本企業にとっては喜ばしい話題だろう。
会期中はこうした発表だけでなく、導入企業による事例講演、技術解説、ハンズオンなども多数開催された。本稿ではその中でも、アクセンチュア クラウドマネジング・ディレクター 戸賀慶氏の講演「基幹系も含む全システムのクラウド化に向けた戦略と効果【実践編】」をレポートする。
戸賀氏は、総務省『平成24年版 情報通信白書』における、日米のクラウドの利用状況を比較した際の「情報系のクラウド化については、日米とも変わりはあまりないが、基幹(業務)系(システムのクラウド化)では2〜3倍の開きがある」という指摘に着目する。
日米での基幹業務系システムのクラウド化で、このように日米で差が大きくなっている背景として、戸賀氏は、全体の戦略としてではなく、機能ごとに別々の判断でクラウドの利用が進んでいることを指摘する。
「日本企業でのクラウド利用はできそうなところだけを着手している状態。しかし、今後のことを考えると別のアプローチが必要だ」(戸賀氏)
一般に、日本固有の社会問題として少子高齢化や労働人口の減少はよく取り上げられる通りだ。この、労働人口の減少をカバーするものとしては、AI技術の活用などによる自動化推進が各方面から提言されている。しかし、自動化を推進するには、まずは現状の業務プロセスを標準化し、自動化できるプロセスは機械が処理できる仕組みに変えていかなければならない。
こうしたことから「今後は、どの企業でもシステムのアーキテクチャやプロセス全体の見直しが必須になるだろう」というのが、戸賀氏の予測だ。
これに加えて、業務システムを支えている主要なOSが今後数年のうちに続々とサポート切れになるという問題もある。例えば2020年には「Windows Server2008」や「Red Hat Enterprise Linux5」、2023年には「Windows Server2012」「Red Hat Enterprise Linux6」などのサーバOSがサポートを終了する。もちろん、これらのOSを前提とするオンプレミスのアプリケーション類も見直す必要が出てくるため、2020〜2023年ごろには、確実に既存システムの在り方を見直す時期に差し掛かることになる。
その際に、自動化ができないままのオンプレミスのシステムをクラウドと並行して使い続けることは、コスト負担の面でもIT戦略の面でもメリットがない。
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