2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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ホワイトカラー業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のツールが、国内で導入を加速させている。業務の自動化は多くの場合「人間の仕事を奪うのでは」と心配されがちなトピックだが、一方では技術革新が新たな環境をもたらしたとき、そこで初めて成り立つビジネスが現れ、それらを支える新種の職業が生まれることも歴史が証明するところだ。さる7月7日、早稲田大学早稲田キャンパス(東京都新宿区)で開かれたワークショップでは、起業や就職を前にした学生らが自身の思い描くキャリアとRPAの接点を探った。実際の活用シーンが拡大するなかで、彼らはこの技術のどこにポテンシャルを見いだしたのだろうか。当日の模様をお伝えする。
「まず、RPAという言葉を信用しないでほしい」。約40人が集まったこの日の冒頭、いきなりそう断言したのは、日本RPA協会代表理事である大角暢之・RPAテクノロジーズ株式会社社長。自身の肩書を否定するかのような発言に、会場はどっと沸いた。
意表をつく言葉の真意について大角氏は「現在約60種類あるといわれるRPAのツールで、RPAという概念を目標に作られたものは1つもない。ホワイトカラー業務を代行するソフトを、まとめてそう呼んでいるに過ぎないからだ」と説明。続けて「PC上で人間が行ってきた、いわば“つまらないルーチンワーク”をソフトウエアによって代行するのがRPAの役割。したがってRPAは、オリジナルのレシピを考案する人工知能のような付加価値を、それ自体としては持っていない」と、技術の実体についても明かした。
一方で同氏は「単体では付加価値を生まないRPAだが、事業に採り入れて活用すれば、本来困難であるはずのイノベーションを簡単に起こせるようになる」と強調。RPAツールを実演した動画上映も交えて「人間の最大200倍のスピードで、24時間・365日作業を処理できる。しかもプログラミングの必要がないため導入が早く、変化にも強い。そのためいろいろなアイデアを容易に、すぐ実現できるところにこそRPAの意義がある」と説いた。
今回のワークショップは、起業に関心を持つ早稲田大学の学生・若手研究者らを対象にした「WASEDA-EDGE人材育成プログラム」の一環として開催された。参加者の1人、伊藤大輔さん(商学部4年)は起業家志望。今秋からベンチャーの本場である米国西海岸への短期留学を予定している。「スタートアップを立ち上げた知人の話などから、創業期はとにかく人手が足りない印象。顧客情報管理などの自動化ツールとして、RPAがどのくらい役に立つのか知りたくて来た」(伊藤さん)
この日は女子学生の参加も多く、会場のおよそ4分の1を占めた。その1人、村田彩嘉さん(商学部3年)は、間もなく就職活動本番を迎える。所属ゼミの教授に紹介されて参加した今回は、高校時代に触れたプログラミングとRPAの違いに興味を持ったといい「記号の羅列で実際に役立つイメージがつかみづらいプログラミングに比べ、RPAはもう少し身近に感じられる気がした」(村田さん)とのことだ。
RPAテクノロジーズの笠井直人マネージャーによる指導のもと、参加者らは持参したPCに、同社のRPAソフト「Biz-Robo!」の試用版をインストール。ロボットづくりの初歩として、株価のポータルサイトから当日の終値に基づく情報を自動取得するツールの作成に取り組んだ。インストールにやや手間取るケースが出たものの、結局ほぼ全員が、いつも自身が使うPC上で操作に成功。作業プロセスを記録させたロボットに自動実行を指示するボタンを全員同時に押し、情報取得が続々完成すると、会場には「おおー」というどよめきが響いた。
続いて50件の連続実行を指示しても、ロボットたちは情報の取得と整理を淡々と処理。処理結果を特定条件で絞り込む作業もプルダウンメニューからの選択が瞬時に反映し、「すごいな」とつぶやく参加者もみられた。
体験を終えて、起業志望の伊藤さんは「もっと自発的に動くロボットを想像していたが、Excelの操作の延長といった感じ。人間との分業がスムーズにできそうで、スタートアップの現場でもすぐ使えそう」と、確かな感触をつかんだ様子。一方、コンサル業界を第一志望に就活へ臨むという村田さんは「プログラミング不要でここまでできることに驚き、多くの企業がRPAに注目している理由が分かった。実際にできることをもっと知りたい」と目を輝かせた。
国内におけるRPAの活用は最近5、6年のことにすぎないが、納入実績トップクラスのRPAテクノロジーズが関わったものに限っても導入企業は既に100社以上、稼働中のロボットは4,000台を超えている。これらのロボットは、早くから導入された金融機関のバックオフィスに代表される社内業務の効率化に加え、新たなビジネスの創出にも数多く貢献している。
こうした新ビジネスについて大角氏は「RPAとクラウドを組み合わせた従量制の事務処理代行サービスや、操作が分かるスタッフとロボットをセットにした『ハイブリッド派遣』などが既に事業化している。さらに従来海外に委託されていた人手頼みの業務を、国内で運用するロボットに移管させることによって『地方創生』を図るといった活用の広がりも出ている」と具体例を列挙。「オフィスよりも自動化が進んでいる製造現場では、生産設備と従業員の間にロボットを介在させて生産性を向上させる体制が既に確立している。オフィスでもあと2、3年で、ロボットが従業員とITシステムを取り持つ“3層構造”が常識になるはず。コンサル会社は現在こぞってRPAの社内研修を行っているほどで、皆さんにとっても今RPAに触れておくことが、これから大きなアドバンテージになる」と力を込めた。
「自動化の技術としては、RPAよりもプログラミングによるシステム構築のほうが高度と思われるかもしれないが、システム構築は時間と費用がかさむ上に保守料のウエートが大きく、ユーザーの投資を圧迫する面もある。プログラミングの専門知識を持たないほうが、むしろRPAの真価に気づけるかもしれない。技術的なハードルが低いからこそアイデアで勝負し、事業として形にしてほしい。それが未来を楽しくするはず」(大角氏)。――知識やテクニックをため込むのではなく、RPAの応用と実践を大切にしてほしいという第一人者からのメッセージは、これからコトを起こしたい若者たちの胸にしっかり刺さったようだ。
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