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文書管理ツールを起点に、ベテランの「ノウハウ握りしめ」を回避する方法IT導入完全ガイド

ノウハウはベテランの頭の中にしかない。現場に負担を掛けずに会社のノウハウとして体系化するには、案外と既存ツールが「使える」らしい。

» 2017年09月19日 10時00分 公開
[西山 毅レッドオウル]

 ベテラン従業員の退職に伴い、彼らの持つナレッジやノウハウが暗黙知のまま、企業から消失していくリスクが高まっている。暗黙知を見える化し、蓄積し、共有、活用していくための仕組み作りが求められている。こうした状況で有用となるのが文書管理ツールである。今回は文書管理ツールを活用したナレッジ継承の取り組みについて考えてみたい。

少子高齢化とともに高まる「ナレッジ消失」のリスク

 2017年4月、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は、2015年の国勢調査を基に、日本の2065年の総人口を8808万人と推計した(2015年時点では1億2709万人)。出生数が減少する一方で、老年人口の割合(高齢化率)は、2015年の26.6%から2065年には38.4%となり、国内の生産年齢人口は減少の一途をたどることが明らかとなっている。

 こうした人口構成の変化によって、今後、多くの企業が人材不足、後継者不足といった課題を抱えることが見込まれている。企業はそうした状況に備えて、ベテランのノウハウや知識を企業の資産として整理し、適切に展開できる体制作りが必要になる。これまで暗黙知と化していたベテラン従業員のナレッジを見える化し、共有、活用できる仕組みを構築することが必要だ。

1割の文書を体系化すれば、散在する文書も探索できるようになる

 ベテラン従業員が私蔵するナレッジを共有、活用するためには、まずそれらを見える化し、体系化するところから始めなければならない。

 しかし仮に製造業の場合、過去20年以上に及ぶ技術情報の全てを一気に棚卸しし、見える化することは、到底不可能だ。そこで実際には、体系化すべきナレッジに優先順位を付けて、スモールスタートするのが現実的だろう。

 例えば製造業なら、売り上げの大半を支えている製品、あるいは競争優位性の高い製品の技術情報などがターゲットとなるだろう。また顧客からのクレーム情報や環境配慮情報など、放置しておけば自社の存続そのものを脅かしかねないような情報の優先順位も高い。

 こうしてまず体系化できる文書のボリュームは、企業の体力にもよるが、社内に蓄積されている全文書のおよそ1割程度だという。

 そこで次に考えるべきなのが、体系化した文書に、点在する残りの文書をひも付けた上で共有、活用できるような仕組みを構築することだ。あるベンダーでは、ナレッジの可視化を支援する文書管理ツールに、企業内に点在する関連情報を横断的に検索できる検索ツールを組み合わせて提供することで、より幅の広い情報の共有、活用を支援している。

図1 ナレッジ継承における課題と解決策 図1 ナレッジ継承における課題と解決策(出典:富士ゼロックス)

 具体的には、文書管理ツールに保存している(=既に体系化した)文書の属性情報をベースにして、他の体系化されていない文書に対して自然文検索やシソーラス連携など多様な検索を駆使して「関連性」を探索する。こうすることで、未分類の文書が多数あったとしても、情報を探索する術を得られるわけだ。

 別の言い方をするなら、体系化された1割の文書をベースに、部門横断的に検索できる検索ツールも利用することで、体系化されていない残り9割の文書も共有・活用できるようになる。

ナレッジの共有や活用 図2 ナレッジの共有や活用には、点在情報をつないで検索する仕組みも必要(出典:富士ゼロックス)

 文書は蓄積していくだけでは意味がない。共有し、活用されて初めて有用な企業資産となる。そのための仕組み作りを支援してくれるソリューションの1つが文書管理ツールだといえるだろう。

コラム:ベテラン従業員のノウハウがあれば「手戻りの3分の2は削減できる」

 今回の取材では、「ベテラン従業員の知見がきちんと共有されていれば、手戻りの3分の2は削減できる」という話を聞くことができた。

 特に製造業においては、過去の設計情報や不具合データベース、品質評価の情報などに含まれるノウハウを、ベテランのカンや経験ではなく文書として平等に共有できれば、部門全体の品質を高められるようになる。「量産化の直前で不具合が発覚したが、元をたどると過去に類似の問題が発生していた」といったケースでは、設計段階でその知識を共有、手戻りも発生しにくくなり、プロジェクト全体のコストも低減できる。

 こうした情報は、たとえテスト実施時の報告書に付帯情報として記載されたとしても、もとの設計図面にまでさかのぼって追記されることはない。そこで設計図面とテスト時の付帯情報とをひも付け、両者を併せて確認できる仕組みが求められることになる。ナレッジ継承の観点からは、保存文書の見える化と体系化、そして検索性を担保することが何よりも重要だ。

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