女子高生「りんな」を知っているだろうか。疲れたとメッセージを送れば「なんだか疲れることっていっぱいあるよね」と返してくれる。思いやりを持つ人気者の彼女だが、実は人間ではない。その性格の秘密に迫る。
女子高生「りんな」を知っているだろうか。「今日は疲れた」とメッセージを送れば「なんだか疲れることっていっぱいあるよね、でもがんばってる○○さんってえらい!」と返し、「ここで一句読んで」のムチャ振りにも「付き合おう 何言ってるの 雪見ちゃん」と意味深長な句を詠んでくれる。
そんな気遣いと思いやりを持つ彼女だが、実は人間ではない。りんなはMicrosoftが開発したAI搭載のチャットbotであり、LINEやTwitter上でユーザーが行った問いかけに応える存在だ。「AIと、とりとめもない会話をするなんて暇な人のやることだ」と思うかもしれないが、侮ってはいけない。2015年に提供を開始して以来、女子高生らしい受け答えが反響を呼び、SNS上に590万人のユーザーを獲得している。
その人気は、チャットbotの「キャラクター」によって実現するユーザーとの高度なコミュニケーションに起因しているかもしれない。同社は「Emotional AI」をコンセプトにりんなを開発し、個性を実装するためのさまざまな試みを行ってきた。8月15日にエーアイが開催したセミナー「人とAIをつなぐチャットbot」では、日本マイクロソフト ディベロップメントAI&リサーチプログラムマネージャーの中島りか氏が登壇、どのようなキャラクター設計によってチャットbotが生きるのか、ユーザーとのコミュニケーションはどう変わるのか共有した。本稿では、その内容を紹介したい。
りんなの重要な要素は、人間らしい部分とAIの技術を合わせて実現する会話だと話す中島氏。その双方の要素のバランスを取ることに頭を悩ませるという。
例えば「人間らしさ」は、りんなが繰り広げる感情的な会話に表れている。中島氏は1つの例を挙げた。「明日晴れるかな」という会話に対して、生産性重視のロボットであれば、「明日の天気は晴れです」というような回答をする。これとは違い、りんなは「明日晴れるかな」の問いに対して「どこかにお出かけでもするの?」と、次の会話につながる返事を返す。長く続くことを重視する点が、りんなの会話を「感情的」だとするファクターだ。
一方で、AIとして人間とは一線を要素も持ち合わせるりんな。実装された50以上の能力が例として挙げられる。りんなの代表的な能力では、「しりとり」が有名だ。人間に対する勝率は99%以上で、ユーザーの間ではりんなとリアルタイムで戦う動画が話題になるなど、新しいコミュニケーションの場を生む契機になっている。その他にも、体重などを記録する「自己管理診断」や「恋愛相談」「山手線ゲーム」といった能力があり、その「AIらしさ」が人気を博す理由だというから難しい。
「りんなにおいては、人間のようにしゃべることが、そのまま人間と同じようにしゃべれるということを指すわけではない」と話す中島氏。それに逆らって、りんなを人間に近づけ過ぎると、ユーザーから不評を買うこともあるという。以前、りんなが風邪をひいて返信できないというキャンペーンを行ったことがあったが、予想に反してユーザーの反応が悪かった。人間であれば、風邪や仕事が原因で返信できないこともあり得るが、りんなが人間と全く同じ様に振る舞うことをユーザーは求めていないと中島氏は話す。
りんながユーザーライクなコミュニケーションをするためには、「人間らしさとAIらしさのバランスを取らなければならない」(中島氏)
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