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RPAリーディングカンパニー「RPAテクノロジーズ」が目指すネクストRPA__大角暢之社長に聞く

» 2018年02月28日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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2013年に創業し、国内RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)市場のパイオニアとしてこの分野を牽引しているRPAテクノロジーズ。”ホワイトカラーの生産性を革新する”ことを掲げる同社は、RPAサービス「BizRobo!」を軸に、RPAによる「デジタルレイバー」を実現する、ロボティクスソフトウェア、Document RPA、AI等の各種ソリューションを展開している。また、一般社団法人日本RPA協会を設立し、中立的な立場からもデジタルレイバーの普及に貢献している。そんなRPAテクノロジーズの創業者であり、日本RPA協会の代表理事も務める、同社の代表取締役社長、大角暢之氏と、最高執行責任者の笠井直人氏に話を聞いた。

「デジタルレイバー」への理解と普及を目指して

──ガートナー社の「Cool Vendors in Business and IT Services, 2017」に選定され、RPA業界のリーダーとして認められるなど、リーディングカンパニーとして市場を牽引しています。そんなRPAテクノロジーズを設立されたのは、どのような背景、想いからなのでしょうか

大角氏: もともと起業意識が強く、創業メンバーとして2000年にコンサルティング会社のオープンアソシエイツ(現・RPAホールディングス)を起ち上げましたが、当事からホワイトカラーの生産性についての問題意識を抱いていました。そうした課題をテクノロジーで解決できる下地が整ったことから、現在で言うRPAソリューションであるロボット派遣サービス「BizRobo!」を2007年にスタートしました。

そもそもRPAの本質とは、「デジタルレイバー(Digital Labor)」あるいは「仮想知的労働者」という言葉に象徴されます。ホワイトカラーが行う作業を、マクロ等のテクノロジーによって自動化し、代行することで、24時間365日休まずに働きながら、人間の100倍以上の生産性と圧倒的なサービスを実現し、さらに必要がなくなればいつでも”解雇”することもできる──それこそがデジタルレイバーの際立った特徴です。この想いは当事から今、そして将来に至るまで一貫しています。

──今でこそRPAへの注目度は非常に高いですが、企業の認知度は以前と変わりましたか?

大角氏: 2013年に当社を起ち上げるまでは、正直なかなか受け入れてもらえませんでした。RPAというのは、導入ハードルが低いにも関わらず、その効果は端的に現れます。我々としてもそこに着目して、デジタルレイバーの普及に尽力して来たわけですが、物理的な機械ロボットと違い、目に見えませんので、それが本質的に「労働者」であるという事実を理解してもらうのにかなりの時間を要しました。

しかし三菱東京UFJ銀行や日本生命保険といった今では多くのメディアでも取り上げられている企業が、RPAによって創出するデジタルレイバーを新しい形態の労働者として取り入れてくれたことで、RPA活用も大きく前進することができました。

例えば三菱東京UFJ銀行では、RPAを導入した結果、20種類の事務作業において、年間で8,000時間分の作業削減に成功するとともに、業務効率化によって従業員はより重要な作業に時間を割けるようになりました。また日本生命保険では、同様に1件あたり数分かかっていた処理が20秒ほどに短縮され、その分を、「人間にしかできない」業務に配分できるようになっています。

こうした企業では、社内にロボット事務センターを設けるなど、デジタルレイバーの労働力の活用に最適な環境を構築しています。つまりRPAロボットが労働者として認められるとともに、一般的な経営テクノロジーへと昇格したと言えます。

──そうしたRPA活用先進企業とは、現在ではどのような関係を気づいているのでしょうか。

大角氏: いち早くデジタルレイバーを取り入れた40社を超える企業様とは販売代理店としての関係ではなく、”ビズロボ・シンジケーション”と呼ばれるコミュニティをつくり、デジタルレイバーを使った社会貢献とビジネス化を目指しています。それぞれの専門性を持たれる企業様とデジタルレイバーが融合した時、新たなサービスや付加価値を付けたRPAサービスの提供が可能になると考えています。

単なるツールではないところに、「BizRobo!」の優位性はある

──日本のRPA市場は今年さらに拡大し、多くの企業がRPAを導入すると予測されています。そんな今後RPAを導入検討される読者の方に、RPAテクノロジーズ社の製品コンセプトにお話いただけますでしょうか。

笠井氏: まず当社が提供するのは、RPAのツールではなく、デジタルレイバーが人と協働するために必要なリソースや運用ナレッジを提供する「サービスプラットフォーム」であるという点です。デジタルレイバーをHRテクノロジーとして捉えたとき、RPAはツールの話だけにとどまりません。デジタルレイバーと協働していく、その入り口として、RPAツールがあると我々は認識しています。運用やマネジメントを通じたデジタルレイバーとの協働にRPAの本質があり、RPAという言葉がまだ存在しない10年前からBizRobo!サービスを提供し、国内で最も豊富なRPAの運用ナレッジを蓄積してきました。。その知見を元にしたサービスの提供が当社には可能です。重要なことは、導入がゴールではなく、導入した後、いかにデジタルレイバーを増やしていくか、新しく増えたこの新種の労働力をどうマネジメントしていくのかという点です。デジタルレイバーの効能と共に、この点を広く啓蒙していきたいです。例えば、パートナー企業様と共に、eラーニングを活用した中小企業向けの教育サービスも展開を始めていますし、今年はRPAに関する教育やアドバイザリーといったいかにデジタルレイバーと協働していくかという分野により一層の力を入れていく構えです。また、デジタルレイバーと協働する時代は我々だけでなく、パートナーやユーザーの皆様と作っていくものだと考えておりますので、オンライン・オフラインで繋がり、シェアできる場を間もなくオープンします。

そんな当社が提供するRPAサービスである「BizRobo!」は、インターネット上の情報、社内データ、エクセルなどの保存データから必要な情報を収集、加工、集計、保存、スキャニングなどの多種多様な定型作業を代行できるデジタルレイバーです。ロボットの特性上、既存の業務を代行した際、マンパワーよりも早く、正確でミスがないため、あらゆる企業のサービスレベル、品質、コストを改善することができるのです。現在、保険業界、流通・小売業界など幅広い業界で、100社を越える企業に4000体以上のロボットを提供しています。

──そんな「BizRobo!」の優位性はどこにあるのでしょうか。

大角氏: 最初に笠井が話したように、「BizRobo!」というのは単なる「ツール」ではなく、RPAのプラットフォームです。あくまで根底にあるのは、「デジタルレイバーを柔軟にスケールさせて、それぞれの企業における業務を高度化させる」という思想であって、そうした思想に基づいた活用ができれば、ただツールを導入したのとは次元の違う効果が期待できるでしょう。実際、思想に賛同してくれた企業中の40社ほどとは、我々と協業を進めるまでの関係になっています。

具体的に言えば、たった1つのロボットから始めて、100、1,000、5,000といったように、全社的にデジタルレイバーをスケールさせていける環境こそが我々の競争優位性であり、そこは世界一であると自負しています。その鍵の1つは、「BizRobo!」はサーバー上ですべてのデジタルレイバーを動かしている点にあるでしょう。もしもクライアント側で動かしていたとしたら、スケールするにはそのロボットの分だけ端末が必要になってしまいます。しかし「BizRobo!」であれば、サーバー上でいくらでもスケールすることが可能です。

これからあらゆる業務アプリケーションがクラウド上で提供されるような時代になっていくのは間違いありません。つまり、その同じ環境でデジタルレイバーも稼働していれば、ワンストップですべての業務領域でRPAを活用できるようになります。クラウド移行が進むことで、中小企業や自治体にとってのRPA導入のハードルも一気に低くなるでしょう。地方の企業や公共団体向けにエネルギア・コミュニケーションズと一緒に昨年起ち上げた、クラウド型のRPAサービス「エネロボクラウド」はまさにそうした考えを具現化したものです。

──少子高齢化による働き手不足の問題は地方ほど深刻ですので、RPAが実現するデジタルレイバーの活用は救いとなりそうですね。

大角氏: その通りです。そして地方に限らず、今後は日本全体で人口減少が進むのは避けられません。そうした本格的な人口減少社会へと突入する日本において、生産性を維持・向上するためにはデジタルレイバーの活用は必須になります。そして将来的にはホワイトカラーの仕事の47%がRPAに置き換わると予測されており、RPAの産業規模も全世界で700兆円、日本でも70兆円にもなると見られています。

デジタルレイバーが仕事を変え、社会を変える

──RPAの導入が爆発的に進む一方で、RPAエンジニアなどロボットを開発・運用する人材の不足が課題となっています。こうした課題を解決するにはどうすべきだと考えますか。

大角氏: まず、デジタルレイバーの活用が多くの企業・組織でまだ習慣化していないという、体制面の問題が8割を占めるでしょう。とりわけ、デジタルレイバーに任せる業務を追加・修正・削除をして実装していく人材、つまりデジタルレイバーをRPAツールで創り、その後の運用の中で修正していくスキルのあるエンジニアを育てることが重要になります。そのためには、デジタルレイバーを当たり前のように使いこなせる若い人材を積極的に採用していく必要があるでしょう。やがて企業には、「機械」によって自動化をする情報システム部門と、人間を管理する人事部門との間に、「デジタルレイバー部」が当たり前のように置かれるようになると見ています。

──今後もRPAの普及を目指していくなかで、将来的な目標についてお聞かせください。

大角氏: 仕事を通じて個人が自己実現できるような社会を、世界でもこの日本においていち早くつくっていくというのが次に私の目指すところです。RPAというと、業務が自動化・効率化されて経営者が喜ぶというイメージが強いです。それはもちろんなのですが、デジタルレイバーが普及して最も嬉しいのは現場なのです。何が嬉しいかと言えば、従来のように仕事、つまり労働というのがストレスではなくなることがまずあります。仕事というのが、労働者と時間という関係ではなく、仕事を通じた自主的な自己実現の結果が、企業の付加価値になるような社会を創出していく、それがデジタルレイバーによってこの日本で実現できると私は信じています。

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