2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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RPA BANKが2018年6月に行った「RPA利用実態アンケート調査」によると、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に関心を持つ国内企業のうち、従業員1,000人以上の組織においては、既に4割が本格展開のフェーズに入っている。その一方、圧倒的多数を占める300人未満の組織においては、なお半数がテストまで至らない未導入の段階にとどまっている。
こうした状況の中「どこでも自動化」という端的なネーミングでRPAツールを展開する米オートメーション・エニウェアは9月3日、日本法人のオートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社(東京都港区)社長に、日本オラクル元会長の杉原博茂氏が就任することを発表した。36年にわたりIT業界のトップランナーとして圧倒的な実績を持つ杉原氏がRPA市場に身を置いた経緯、日本のビジネスシーンにRPAが今後与える影響、そしてオートメーション・エニウェアが日本企業にもたらすものを、国内外のIT事情を知悉する新社長に聞いた。
―36年のキャリアでストレージ、サーバー、仮想マシン、OS、データベース、ミドルウエア、アプリケーションとIT基盤のあらゆる領域を経験。特に2014年から3年間は日本オラクル社長を務め、日米のIT業界とユーザー企業に広い人脈をお持ちと聞きます。さまざまな選択肢の中から、現職の就任に至った経緯をまず聞かせてください。
「テクノロジーで人間のために何ができるか」。私にとって、それが積年のテーマでした。定型的な作業を効率化するというRPAのブームを知り、この問題意識に通じるものを感じていたところ、数ヶ月前に現職へのオファーを受けました。
日本オラクル会長を退いてからはコンサルタントの個人事務所を開いていたのですが、「Making work human again(仕事に人間らしさを取り戻す)」というオートメーション・エニウェアの理念に、まず共鳴しました。最終的には、この大義にひかれて集っている人材が本物のプロフェッショナルぞろいだったこと、そしてベースのしっかりした製品開発への信頼感が決め手となり、日本法人の代表就任を決断しました。
―「テクノロジー」と「人間らしさ」の調和に興味をひかれたのですね。
ええ。私は事件の現場で奮闘する刑事たちのドラマが好きでよく観るのですが、毎回あちこちを飛び回っている彼らは「経費申請している姿」を決して見せません。われわれのツールが代わりにやっているからかどうかはともかく(笑)、本当に「人間らしい仕事」というものが、機械に任せられる定型作業と別にあることは確かなようです。ビジネスにおいて、人と人とのコラボレーションがカギを握ることも、経験豊富な多くのリーダーが認めるところでしょう。
戦後復興から間もないかつての高度経済成長期、暮らしを豊かにする「三種の神器」といえば「テレビ」「洗濯機」「冷蔵庫」でした。中でも洗濯機は、手で洗う手間と時間を省いて家事に大きなゆとりをもたらしました。その有用性が広く認められたからこそ、現在の世帯普及率は99%に達しています。三種の神器をはじめ、人間にとって真に有益なツールは7割以上普及するのが常であり、定型作業の手間と時間を大きく減らせるRPAも、いずれそうなると考えるのが自然だと思います。
今後デジタライゼーションが進む社会において、新たな三種の神器となりうるのは「AI」と「IoT」、そして「RPA」だと私は確信しています。オートメーション・エニウェアの場合、しっかりした製品群と、普及に向けた一通りの仕掛けは既にそろっています。あとは販社や同業の方々とも力を合わせながら、RPAの利用率を早く99%に近づけたい。いま各家庭にある全自動洗濯機と同じくらい、RPAをごく当たり前の存在にしたいと考えています。
―日本におけるRPAは、システム構築の対象から外れていた少量・多品種の定型業務を効率化するツールとして急速に普及しました。ただ「こうした用途だけでは限界がある」との声も聞かれるようになってきました。
確かに、オートメーション・エニウェアも現在の国内市場においては、ユーザー企業の業務部門で定型業務を肩代わりさせる用途での導入が多くなっています。
もっとも、RPAを普及させる意義はそこにとどまらず、人とロボットが協働することによって、従来分断されてきた「ビジネス(業務部門)」と「IT(IT部門)」が融合する点にあるというのが私の考えです。今後は、IT部門が業務部門のロボット導入を支援するだけでなく、IT自身の新たな展開のためにRPAを活用するケースも増えていくでしょう。
そしてこれは、日本企業の人材と投資を「守り」から「攻め」へ振り向けることにも貢献するはずです。
―日本企業が守りから攻めに転じるため、RPAが具体的にどう貢献するのでしょうか。
これまで日本企業は独自にカスタマイズしたITシステムを自社サーバーで管理することが多く、その維持や改修では社外エンジニアの力を借りるのが常であったため、IT投資総額の実に7割が保守費用に消える状況が続いてきました。
このような守りのコストは、システムをクラウド上に置くことで大幅な削減が可能です。実際、創業当初からクラウドを選んだ新興企業は、付加価値を生みだすECサイトへの積極的投資といった攻めのIT活用に集中し「月を目指す経営者」が現れるほど目覚ましい成長を遂げています。
長い歴史を持つ企業が、こうした「クラウドの果実」を得ようとするなら、移行先のクラウド環境でシステムがきちんと稼働するかどうか、膨大なテストを行わなくてはなりません。
これまでであれば、止められない通常業務のかたわら新たな環境への移行も並行させる人手がなく、あきらめなくてはいけなかった。
そこで、限りある人的リソースを「人+ロボット」によって補うことができれば、このボトルネックは解消します。RPAを活用したテストの自動化が進めば、クラウドへの移行に大きく弾みがつくでしょう。
日本のインターネット通信量は現在、人口や経済規模以上にいびつな「東京一極集中」の状況で、地方間の通信が東京を経由することでの遅延や、大規模災害時のリスクも懸念されています。RPAが地域や企業規模を問わずクラウドへの移行を促すことで、どの地域でもむらなく通信が行われる状態に近づけたい。これが、IoTの前提となる安定したネットワーク基盤と、それらを生かせる人材をあまねく全国で維持することにつながると考えています。
―RPA導入がITにもたらすインパクトがよく分かりました。業務の現場に及ぼす影響についてはどうお考えですか。
RPAの導入を現場視点からとらえると、人手不足の救世主として職場に現れるロボットはダイバーシティーの文脈、つまり多様な個性を持つ同僚の一員として受け止められるだろうと思います。
これまでなじみがなかったロボットと一緒に、なんとかうまく仕事を進めなくてはいけませんから、ソフトウエアの思考パターン、つまりIT的なロジカルな発想を理解することが求められてきます。
ロボットと一緒に働く中で、スタッフの多くが一定のITリテラシーを獲得できれば、RPAにとどまらずAIやIoTなどのテクノロジーをビジネスに生かすための素地も培われていきます。業務を理解し、ロボット従業員に仕事を任せる事が出来るITリテラシーを持つ方が今後、ビジネスをデザインできる人材として活躍の場を広げていくでしょう。
―RPAツールの中でも、それぞれ個性があるようです。オートメーション・エニウェアの特徴はどのようなものでしょうか。
ひとことで言えば「ease of use」、つまり使い勝手のよさだと思います。
金融機関の要求水準を満たす堅牢さやセキュリティー性能、また多数台のロボットの稼働状況を一元管理できる機能などを備えていながら、オートメーション・エニウェアは単純なデスクトップアプリケーションとしても振る舞います。このため、端末1台からのスモールスタートで採用し、そのまま大規模な本格展開に移行させるプロジェクトを組むことができます。
代表的なERP(基幹システム)やCRM(顧客関係管理)ツールの操作でよくある定型作業に関しては、約400種類がそろうオンラインストア「Bot Store」で既製のロボットをダウンロードできるので、実装する必要がないのも特徴といえるでしょう。
競合他社にないオートメーション・エニウェアならではのオプションとしては、文書のスキャンデータから認識したテキストデータをAIが項目別に整理する「IQ Bot」があります。RPAが洗濯機だとすると、そこに入れる前の洗濯物を「色柄もの」「念入り洗い」などの基準で分別するのがIQ Bot。併用することで自動化の領域が広がります。
―大企業に限れば、RPA導入企業の絶対数は既に相当な水準ですが、本当に活用できている割合となると、実はまだごく一部かもしれません。
私も実態が知りたい(笑)。ただ、もしそれが事実とすれば、RPAの活用にあたってビジネスとITの双方を理解し、融合させられる人が必要であるのに、そうした人材がきわめて少ないからだと思います。
そこでわれわれとしては、オンラインと対面双方での教育プログラム「Automation Anywhere University」の充実を図っていくつもりです。知見を共有できるユーザー間の横のつながりも重要で、国内では既にユーザー会を数回開いています。今後はユーザー企業のセグメント別などで拡大を図っていく予定です。
―ここまでエンタープライズRPAとしての実績が多い貴社だけに、中小企業にもターゲットを広げるための具体的な方策が気になります。導入規模に応じたリーズナブルな価格設定などの予定がありますか。
日本オラクルの社長時代にもクラウドビジネスを手がけていましたから、契約期間に縛られない完全従量制のクラウドサービスが、スモールスタートからチャレンジする心理的なハードルを下げられるメリットはよく理解しています。中小規模の企業にとって検討しやすく、現実的に導入可能なプログラムを矢継ぎ早につくっていく必要があると考えており、近いうちに最初の発表ができると思います。ぜひご期待ください。
―日本企業の前向きな投資を後押しする貴社の今後の活動が大変楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
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