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» 2018年12月13日 10時00分 公開

優れたRPA推進担当者への第一歩。知っておきたい3つのポイント――導入担当者にTISが伝えたいこと【後編】

[相馬大輔RPA BANK]

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本記事では前編に引き続き、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入推進担当者が全社展開に向けて知っておくべきポイントについて、50社以上の現場をサポートしてきたTIS株式会社(東京都新宿区)へのインタビューからダイジェストをお届けする。

前編ではまず、RPAの本格展開でつまずかないために押さえておきたいポイントを3点説明した(ポイント1:ツール選定への考え方、ポイント2:本格展開を軌道に乗せる起爆剤、ポイント3:本格展開を強固なものにする「経営」「現場」「IT」のスクラム体制の重要性)。

後編では発展として、つまずかないだけでなく「優れた」RPA推進担当者を目指す上で知っておきたい以下の3点について、実績に裏付けられたエキスパートの見解を共有したい。

■記事内目次

ポイント1:「ロボットでできた余剰時間をどう活用するか」

ポイント2:本格展開を根付かせるのは、RPAの「定性的効果」

ポイント3:本格展開を前に「完全内製」と「外部支援」を選ぶ判断軸とは


TIS株式会社 サービス事業統括本部 エンタープライズソリューション事業部 アプリケーションテクノロジーソリューション部 副部長 立石朱城氏

ポイント1:「ロボットでできた余剰時間をどう活用するか」

―前編では、現在企業によるRPA導入プロジェクトの多くが、経営企画部門などによるトップダウンで進んでいるとうかがいました。経営視点での期待と、導入先となる事業部門や、技術面を担うIT部門がロボットに求めるものが異なるとのお話もありましたが、プロジェクト推進を託された担当者が板挟みになるのを避け、しっかりスクラムを組んでいくには、どのようなポイントを意識すればよいでしょうか。

橘木直也氏(サービス事業統括本部 エンタープライズソリューション事業部 アプリケー:ションテクノロジーソリューション部主査): 私がRPAのユーザー企業で導入推進担当者にいつもお願いしているのは「導入後、どれだけの時間が創出できるか」だけでなく「創出される時間をどうするか」について考え、社内で共通認識を持ってほしいということです。

RPAは、それまで人間が行ってきた定型業務をソフトウエアで自動実行するツールですから、従来その業務を行っていた人の作業時間が解放されます。経営側が注力したい新たな分野や、現場が時間不足のためにあきらめていた取り組みなどを洗い出し、企業としてどこに人的リソースをどこに振り向けるかを明確にしておくべきです。

―「これだけ時間削減が見込める」というだけでは不完全な計画だということですね。

橘木: はい。そもそも経営視点からRPAに関心を持つ動機は、大きく2つあると思います。1つは経営合理化による競争力向上、つまりコストカットです。もう1つは労働人口減少を見据え、現場にいる1人ひとりのパフォーマンスを向上する一環という位置づけです。

経営視点でみたRPAのメリット

  • 業務時間削減を通じたコストカット
  • 従業員1人ひとりのパフォーマンス向上(生産性の向上)

RPAによる人件費削減というコストカット効果は、「対象業務の総時間」を測り「ロボット化できる割合」と「従事する人の給与の時給換算値」を掛け合わせればすぐ計算できます。そこから導入に伴う諸費用を差し引いてプラスになれば、経営的にはRPAを入れるメリットがある。ここまでは特に難しいことはありません。

問題なのは、RPAを導入する業務の性質しだいで、取り組みの意味合いが変わってくることです。かりに時間面での効果が同じだとしても、企画や対面営業のような自動化できない職種に付随するルーチンワークの効率化か、あるいは働く人をより創造的な業務へ振り向けるための完全自動化なのかでは、現場の反応がまったく異なるのは容易に想像できるでしょう。

したがって、ロボットを活用する業務の拡大を、単なる足し算・掛け算だけで考えないことです。

「繁忙期がラクになる」「本来の仕事に集中できる」「作業が短時間で完結するため時短勤務しやすくなる」「より有望なキャリアパスを目指せる」といった、働く人からみたメリットと意義づけに置き換えてロボット化をアピールし「納得感」を共有することが、全社的な推進力の獲得につながると思います。

TIS株式会社 サービス事業統括本部 エンタープライズソリューション事業部 アプリケーションテクノロジーソリューション部主査 橘木直也氏

立石朱城氏(同部副部長): RPAを人員削減や配置転換によるコストカットの一環として検討する企業はゼロではありませんが、その場合の実行のハードルは極めて高いです。結果として、現在の人員・現在の所属を大きく変えず、1人ひとりのパフォーマンスを上げていく方向で導入を進めるユーザーのほうが多いのが実情です。

経営がRPAに求める「コストカット」と「パフォーマンス向上」は相互に関連する部分もあり、明確な区別はできないかもしれません。ただ、導入企業がいずれに重点を置くかによって、ロボットの設計やRPAツールの使い方にも違いが出てきます。

―「コストカット」「パフォーマンス向上」のどちらを重視するかで、ロボットの活用がどのように変わってくるのでしょうか。

立石: もしコストカット最優先で人件費の抑制を徹底するなら、現場に業務も人も残さず、全部機械に置き換ればよいことになります。人が端末上で行う作業がゼロになれば、その作業を効率化させる目的のデスクトップ型RPAは、そもそも出番がなくなります。

ここまで極端でなくとも、十分整理された情報は、一元的にまとめて処理するほうが効率的です。従って、コストカット重視であるほどサーバー型RPAでの集中的な処理に寄せていき、最終版のデータを送った後は作業に人間をタッチさせないようになります。

一方、職場にいる各個人のパフォーマンス向上を目的にロボットを活用する場合、ロボットは人間のチェックを受けながら、人間の業務の一部を担うこととなります。

確定前の状態までロボットが処理した結果を人間の知恵で判断し、次の進め方を決めるということですね。こうした使い方の場合は、全社展開の段階でも大規模運用に適したサーバー型ツールに一元化せず、小回りがきくデスクトップ型ツールも残すことが考えられます。

ポイント2:本格展開を根付かせるのは、RPAの「定性的効果」

―ロボットと共に働く現場への訴求が重要、というお話がさきほどありましたが、「ロボットが使えると、こういうところで助かる」という定性的なメリットは、推進する側があらかじめ見定めておくのでしょうか。

立石: 自社に固有の、数字に表れないメリットをあらかじめ予想するのは難しいと思います。他社の先行事例は参考になりますが、それが自社の現場でリアルに響くとは限りません。

橘木: 多くの導入企業は、やはり定量的な時間削減目標の設定から始め、効果が大きそうな順で機械的に着手しています。やがて「ボトルネックになっているこの工程を何とかしたい」といった現場の悩みが届きだし、RPAで対応できないか検討するようになります。過去には、パフォーマンス向上を図る部署の「改革のシンボル」として投入が決まったケースもありました。こうしてロボット化が少しずつ、自社の事情に即して進んでいきます。

さらに取り組みを続けると、導入部署から「自動実行で業務品質が上がった(サービス品質の向上)」「ヒューマンエラーがなくなり従業員のストレスが解消された(従業員満足度の向上)」、あるいは「繁忙期にもサービス水準を維持できるようになった(業務の平準化)」といった感想が聞こえてくるようになります。これこそが、自社にとっての定性的なメリット。決して聞き逃さず、貴重な「生の声」として全社に拡散していってほしいと思います。

RPAが現場にもたらす定性的効果の例

  • サービス品質の向上
  • 従業員満足度の向上
  • 業務の平準化

立石: 現場から寄せられる反応が、「うちでもやってみようか」という他部署への広がりをもたらすと同時に、推進担当者にとって次の施策への気づきにもなります。らせんを描くようなロボット化への機運の高まりを社内に巻き起こせれば、全社展開はほぼ成功と言ってよいでしょう。

ポイント3:本格展開を前に「完全内製」と「外部支援」を選ぶ判断軸とは

―RPAブームの高まりで、ツールの使い方に関するオンライン・オフラインの講習もかなり充実してきました。今回うかがった内容も参考に、社内メンバーが勉強してRPA化を内製していくか、あるいは貴社のような外部の導入支援を活用するべきか、判断軸があれば教えてください。

立石: まず、ツールの使い方というのは、業務をロボット化するために必要なスキルのごく一部です。

さきに述べたとおり(前編参照)、「既存のロボットのお守りで手一杯」とならないためには、一定のルールに則った開発方法や、エラー修正時の手間が少ない実装方法についても考えておく必要があります。

そこで、もともと社内のシステム管理でこうしたルールに配慮してきたIT部門のスタッフが中心となってロボットの内製化を進め、成功を収めているケースもあります。

ただこの場合は、IT部門の担当者が「現状の業務内容を理解し、現場の要望を正確に聞き出す」というコミュニケーションに長けていることが条件となります。

内製するか否かの判断軸については、こうした取り組みをできる適任者が社内にいるかどうかが、ひとつの基準となるでしょう。

RPAを完全内製で全社展開するために、ツール操作以外に求められる条件

  • ロボットの開発と運用について、全社的な統制を取るためのルール設計ができる
  • ロボット作成者が現場の業務内容を十分理解しているか、理解するコミュニケーション能力がある

橘木: BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)とまではいきませんが、ロボット化にあたっては多少なりとも業務の流れを見直すこととなります。

これはロボットに処理させる効率を考えるためで、例えば人間が「A→B→C」と100件繰り返していた作業が、ロボットでは「A100件」から「B100件」、そして「C100件」と、まとめて次工程に送るほうが早いケースがあります。

もっとも、ここでBに時折エラーが混じるような場合、そこで処理が止まるとCの工程がまるごと手つかずになってしまいます。その際に「ABの処理をロボットで繰り返し、その結果を人間が確認した後、Cを処理するロボットに送るのはどうか」といった提案をするのが、われわれの腕の見せどころです。

立石: ロボットが得意なことを人間に伝えながら、人間がしてもらいたいことをロボットの設計に落とし込んでいくのは“双方向同時通訳”のようなもので、業務とITに関する複合的な知見とスキルが求められる、高度なスキルが求められる仕事だと思っています。

その意味で、ロボット化1件のヒアリングから実装まで、1人か多くて数人の担当者が2カ月以内に完了させている当社のエンジニアは精鋭ぞろいと自負しています。

今後も引き続き、PoCやテスト導入から全社展開へのステップアップを図る多くの企業をサポートできればと思っています。

―RPA全社展開についてさまざまなアングルから実践的なアドバイスをいただきました。前後編をそろって参考にする担当者も多いと思います。今回はありがとうございました。

RPA本格展開でつまずかないために。知っておきたい3つのポイント――導入担当者にTISが伝えたいこと【前編】

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