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従業員の健康をRPAでサポート、DeNA流働き方改革はこれだ

「攻めのIT経営銘柄2019」や「健康経営銘柄2019」に選ばれたDeNA。最近は、働き方改革に関連したIT活用が話題だ。RPAで社員の健康をどうサポートするのか。

» 2019年06月11日 16時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]
2019年5月9日開催の「Japan IT Week 春」(ビッグサイト)に登壇したディー・エヌ・エー 執行役員 チェ・テウ(崔 大宇)氏

 創業20周年を迎え、全社的にさまざまなプロジェクトを立ち上げているディー・エヌ・エー(以下、DeNA)。最近では、社内の働き方改革にも注目が集まっている。

 全拠点で約2500人の従業員数を抱える同社の働き方改革の主軸は、(1)人事制度、(2)社員の健康管理、(3)ITを利用した施策の3本柱だ。中でもRPA(Robotic Process Automation)が従業員に対し、残業時間のアラートを出すといった取り組みは大きな成果を出している。また、「社内で就業時間にマッサージを受けられる」といったユニークな施策も数多い。同社の崔 大宇氏(執行役員 ヒューマンリソース本部長 兼 コンプライアンス・リスク管理本部長)が、同社で実践する働き方改革の手法を紹介した。

異動も副業も、社内での兼業も柔軟に

 まず人事制度は、「シェイクハンズ制度」「副業制度」「360度フィードバック」の3つが特長的な取り組みだという。2017年8月に導入したシェイクハンズ制度は、従業員が成長のために他の部署への異動を希望した際、希望先の事業本部長の意志と合致して「握手ができれば」、上長や人事部門の承認なしに異動できる制度。制度の大前提として、従業員は共感できる事業や業務を見つけて働きかける行動力が必要だ。一方、事業本部長は、自ら事業や業務へのパッションを常に発信し、求心力を持たなければならない。そのためのきっかけ作りとして、各事業本部が、自分たちの魅力をアピールする社内イベントを開催したり、積極的に募集ポジションを公開したりしている。こうした取り組みもあり、今まで約60件、月に1〜2件のペースで「握手」が成立しているという。

 また、2017年10月から副業制度もスタートした。社内事業や業務を超えて、社外での体験やキャリア形成機会を通じた自己研鑚や自己実現を図る機会を提供するのが目的だ。既に、2019年の1月で全従業員の約1割が副業制度を活用しているという。ちなみに、副業が認められる条件は、(1)本業に支障をきたさない、(2)会社に迷惑を掛けない、(3)健康管理時間を順守する、という3原則をクリアすることだ。これと関連して、社内の中で「副業」を許可するクロスジョブ制度もある。他部署の役割や業務に興味がある人はリソースの最大30パーセント程度までは、本業務と兼務できるとした。

 その他、従業員からマネジャーにフィードバックを行う「360度フィードバック」制度も設けられている。従業員から自分のマネジャーをみたときに「部門のミッションを上長が明確に定めて伝えているか」「メンバー自身がミッションを理解しているか」ということを考えてコメントし、マネジャーはその内容をフィードバックシートの形式で受け取る。「マネジャーが自分自身のアセスメントに生かす機会になる」と崔氏は話す。

従業員の健康をRPAでサポート

 従業員の健康管理についての施策も多い。例えば、運動できる環境を整えるために、オフィスの一角に運動ができるウェルネスエリアを設けている。マッサージルームには常に5人のマッサージ師が常駐し、就業時間中の施術も可能だ。

 従業員の食事にも気を配り、独自のガイドラインに沿ったランチや弁当も提供。さらに、従業員向けに各種セミナーを開催し、マインドフルネス講座や業務に集中しやすくする睡眠の改善相談会などを実施する。

 「社員の健康管理については、RPAを活用した「勤怠入力リマインドロボ」と「労働時間モニタリングロボ」も開発しました」と崔氏。RPAが、勤怠情報を入力していない従業員に対して入力を促すメッセージを自動で発信したり、従業員の労働時間が健康時間管理の規定や36協定で定められている残業時間上限を超えそうな場合に、本人や上長にアラートを出したりする仕組みだ。従来は、4人の担当者が数百人の従業員に対して行なっていたリマインド業務が、実質ゼロになったという。

 ちなみに、同社はこうした取り組みによって、従業員の健康に配慮する企業として評価を受け「健康経営銘柄2019」に名を連ねている。

ITを利用した働き方改革

 同社はITを活用した働き方改革にも力を入れる。近年も、AI(人工知能)をはじめとするITを積極的に活用し、経済産業省が東京証券取引所と共同で選定する「攻めのIT経営銘柄2019」に選ばれた。

 取り組みの中でも、特に業務効率化に貢献しているのが、ビジネスチャットツール「Slack」だ。崔氏は、その活用例として、Slackの問い合わせbotが従業員の疑問に答える「AI社内問い合わせbot」や、Slackで会計システムの承認処理を完結する仕組み、入退室に伴うエラーに対処する「セキュリティカードエラー解除bot」などを紹介した。会計システムとSlackをAPIで連携させ、承認をSlack上でできるようにした取り組みは効果も大きく、申請から承認までにかかる平均時間を5時間から1時間に短縮できたという。

 もちろん業務の効率化という目的以外でもITツールの活用は盛んだ。例えば、従業員の強みを見いだし、最大化することを目的に、社員データベース「TALENT BASE」を導入した。これは、各従業員が個人ページを通して、自分の強みを発信できるツール。属性にはハッシュタグを付けられるため、それを契機に求める能力を持った従業員を全社から探せる。Slackで各従業員のページを簡単に呼び出せるのも特長だ。

 その他、月次で従業員を対象に実施しているサーベイの結果を可視化する「Flow」も活用している。部門や部署といったグループごとのやりがいをグラフ表示したり、個人のコンディションのスコアを可視化できたりするツールだ。

 崔氏は「人事制度と健康管理、ITという三位一体で臨むのが、DeNA流働き方改革だ」と力説し、講演を締めくくった。なお、同社のSlack活用に関するノウハウは「“野良Slack”を組織に取り込み決裁時間を大幅削減 DeNAの現場はどう変わったか」で詳述しているので、ぜひ見てほしい。

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