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面倒な月末の請求書データ入力作業…「月100枚」から利用可能にするリコーの“AI+OCR”クラウドサービス

» 2019年09月25日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入推進を通じた業務自動化に取り組む企業が、自動化対象領域を拡張させる上で、紙の書類や帳票類のデジタルデータ化に悩まれている担当者の方も多いのではないだろうか。

RPABANKが2018年11月、会員企業772社を対象に実施したアンケート調査によると、OCRやOCR+AIの活用を通じて紙の問題に対する対策をとっている企業は、RPAをトライアル展開している企業で15%、RPAを本格展開している企業で26%と自動化対象領域が拡張するにつれ、紙の問題に積極的に取り組んでいることがわかった。

この“紙の問題への需要”に応えるべく、2018年10月より新たな AI-OCRソリューションの提供を開始したのが、株式会社リコーだ。

同社およびリコーグループは、複合機を中心に世の中にイノベーションをもたらす製品やサービスを提供し続けており、近年は従来の一般オフィスに加え、様々な業種や現場を含めたワークプレイスへと価値提供の領域を拡大している。

そのデジタルソリューションのひとつとして、新たに開発されたクラウド型AI-OCRソリューション「RICOH Cloud OCR for 請求書」は、簡易な操作で請求書情報をデータ化することができ、RPAとの連携も可能であることが特徴だ。

本サービスは今後、クラウド型AI帳票認識OCRソリューションとして、請求書以外への展開も予定しているという。このサービスがどのようにして誕生したのか、企画者でもある、デジタルビジネス事業本部 ビジネスインキュベーションセンター 企業間トレード事業室 シニアスペシャリストの津田道彦氏に話を聞いた。

■記事内目次

1. 「二段階で学習する」独自開発のAI-OCRエンジンで、多種多様な請求書フォームの読み込みを実現

2. RPA×クラウドAI-OCRで新しいデジタルビジネスを体感してほしい

3. 最も需要の多い「月100枚」からの利用を可能に


「二段階で学習する」独自開発のAI-OCRエンジンで、多種多様な請求書フォームの読み込みを実現

──Cloud OCR for 請求書とはどのようなサービスでどういった特徴があるのでしょうか。

端的に言えば、紙やPDFで取引先から送られてくる請求書を、文字データ化する「クラウド型AI帳票認識OCRソリューション」です。

多くの企業では、紙で送られた請求書のデータ入力処理を、締め日間近に手作業で行っています。期限が決まっていることもあり、毎月のピーク時には残業や休日出勤も増えがちです。

OCRを使って入力作業を省こうとしても、一般的なOCRツールではあらかじめ帳票定義が必要なため、取引先ごとに異なる請求書の多種多様なフォームには対応しきれません。

しかしCloud OCR for 請求書であれば、リコー独自の帳票解析技術と画像処理技術を搭載したAIが、事前の帳票定義を必要とせずに、請求書に記載された請求日、請求元名称、請求金額などの情報を自動認識し、一括でデータ化することができるのです。

そしてデータ化した情報は、CSV形式で出力して各種RPAツールや会計システム、銀行支払いシステムと連携することも可能です。

さらに、深刻化する一方にある人手不足を解消するために、OCRで読み込んだ結果を当社側で事前に確認し、結果を提供するといったBPOサービスを加えたラインアップも用意しています。

──要となるAIにはどのような強みがあるのでしょうか。

使われているAIは当社が開発した、機械学習技術を用いたAI-OCRエンジンです。その最大の特徴は二段階の学習プロセスにあります。まず当社が有する汎用のデータを用いて学習し、それでも読み取れない場合には、利用者側の請求書の特徴も学習するという二段階の学習を経ることで、使えば使うほど賢くなり、多様な請求書に正確に対応できるようになっていきます。

──そのときに使用する複合機やスキャナは、リコー製のものでなければいけないのですか。

まったくそんなことはありません。他社の複合機やスキャナでも、フルカラー及び300dpiの精度で読み込みさえすればブラウザからアップロードしてデータ化が可能です。ただし、当社の複合機からであれば、ワンタッチでデータ化までの一連の作業を行うことができます。

株式会社リコー デジタルビジネス事業本部 ビジネスインキュベーションセンター 企業間トレード事業室 シニアスペシャリスト 津田道彦氏

RPA×クラウドAI-OCRで新しいデジタルビジネスを体感してほしい

──新規商品として、津田さんが「Cloud OCR for 請求書」を企画されたのはどのような背景があったのでしょうか。

もともと結構以前から内外のRPAの動向を追いかけていまして、RPAと連携する複合機周りのソリューションを何か生み出せないか考えていました。そうしたなかで2年ほど前から日本でもRPAが注目を集めるようになり、さらにはAI-OCRとRPAの連携の可能性についてもあちこちで話題にのぼるようになってきました。

当社でもOCRを長年手がけてきましたので、社内からも「OCRはRPAと親和性が高いのだから何か新しいことができないか」という声が寄せられていました。

これを受けて、サブスクリプション・モデルで、OCRに関連したマルチテナントのクラウドサービスを提供できないか、検討を重ねました。これまでB2B事業を長く手がける中で、紙の帳票類を効率的にデータ化したいというニーズは強く感じていましたので、まずは取引先から受け取る請求書に着目しました。

帳票類の中でも特に自動データ化する効果が大きいと考えたからです。請求書というのは、自社で発行するものはデータ化されていても、受け取るものに関しては紙のものが圧倒的に多く、システムにデータを入力する際には手作業が発生してしまいます。

とはいえ、当時やっとOCRメーカー等が手がけ始めていた入力支援ツールは、どれも定形帳票類を用意する必要があったのです。

そこで差別化を図るべく目指したのが、取引先ごとに形式の異なる請求書であっても、入力を自動化してくれる、AIとOCRのクラウドサービスだったのです。

最も需要の多い「月100枚」からの利用を可能に

──他社製品にも対応されているなら、導入する際のハードルも下がりますね。初期費用がクラウド登録料5,000円だけで済むなど、提供価格についても他社のサービスと比べてかなり抑えていますね。

はい。登録料だけでなく、利用料金体系も月100枚/15,000円からとしており、最低でも月300枚からとなっている他社サービスと比べてかなり低くなっています。

なぜそうしたかというと、当社の複合機のユーザーの皆様に事前にヒアリングを実施していると、月100枚ぐらいから使ってみたいという声が最も多かったからです。

最先端のAI-OCRを活用したサービスを、中規模さらには小規模の企業の方にも使っていただけるように、そして大企業でも部署や拠点ごとのスモールスタートが可能なように、利用するハードルを下げることにこだわっています

──今後、AI-OCRを活用したクラウドサービスをどのように展開していく予定ですか。

クラウドAI-OCRサービスとして、対象とする帳票類を請求書以外にも広げていくことを検討しており、“Cloud OCR for ◯◯”シリーズとして展開していく予定です。まずは、企業間取引で交わされる量の多い帳票である納品書や注文書等に対応したいと考えています。

現在、デジタルビジネス事業本部ではAI-OCR+クラウドサービスにも様々な新規デジタルビジネスのプロジェクトが稼働しています。そこに共通するのが、メーカーといえど従来のようにハードウェアに固執するのではなく、たとえハードが無くともサービスだけで提供できるようなビジネスのかたちです。その際に、当社のハードがあればさらに便利にご利用いただける──そんなサービス展開を目指していきます。

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