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企業におけるBCPの策定状況(2019年)

自然災害が多発する昨今、社会インフラの寸断など、業務の継続が難しくなる事態を想定した対策の必要性がますます高まっているが、対策「していない」とする企業の割合を見ると課題が山積していることがわかる。

» 2019年10月03日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2019年8月30日〜9月13日にわたり、「BCPとバックアップツールの導入状況に関する調査(2019年)」を実施した。全回答者数79人のうち、情報システム部門は45.6%、製造・生産部門が15.2%、経営・経営企画部門が7.6%、財務・会計・経理部門が5.1%などと続く内訳であった。

 今回は「災害によって発生したトラブル」や「BCPの策定状況」「策定しているBCPのうちITに関するもの」など、企業におけるBCPの策定状況を把握するための質問を展開。全体の55.7%がBCP策定済みの一方で、中小企業を中心に大きなリスクがあることが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

サーバダウンにクラウドサービス停止………約3割が“災害”によるトラブル経験あり

 はじめに台風や地震などの災害が原因で、これまで自社のデータや業務にトラブルが発生したことがあるかを聞いたところ、全体の73.4%が「ない」、26.6%が「ある」と回答した(図1)。発生したトラブルで最も多かったのは「自社内で管理しているサーバが一時ダウンした」71.4%で、次点で「通信環境が一時利用できなくなり、メールなどが送れなくなった」66.7%、「業務中のデータが保存できなかった」23.8%、「社外で管理しているサーバが一時ダウンした」と「利用中のクラウドサービスが一時停止した」が14.3%と続く結果となった。

 まとめると全体の約3割が災害によって社内外で自社サーバがダウンしたりネットワークに異常が発生するなどのトラブルに見舞われた経験を持っていた。

図1 図1 災害が原因で自社のデータや業務にトラブルが発生したことがあるか

廃業もシナリオに……中小企業のリスクはさらに高く

 約3割が災害によるトラブルを経験している中、自社が緊急事態に遭遇した時、損害を最小限にとどめながら事業継続や早期復旧を可能とするための計画(BCP)を策定する企業はどの程度存在するのだろうか。今回の調査でも中小企業のリスクは全体平均と比較して高い傾向が見られた。

 調査では「BCPを策定している」と回答したのは55.7%と過半数を占め「今後BCPを策定する予定」が16.5%、「BCPは策定していない」が27.8%と続いた(図2)。まとめると72.2%がBCPを策定または検討してることになる。

 一方、約3割の企業ではいまだにBCPを策定していない。特に100人以下の中小企業だけで見ると38.9%と約4割が未策定であった。

 BCP未策定の回答者からは「必要性は感じるが、BCPとして明文化するほどの規模ではない」や「上層部の理解がない」「何が必要かが分からない」などの声が挙がった。

 BCP策定に当たっては当然一定の工数がかかる上、経営など上層部を巻き込んだ設計が必要になる。資金力や人的資源の面で工面が難しい傾向が強い中小企業においてはなかなか着手しづらいテーマかもしれない。しかし災害など緊急事態は突然発生する。中小企業庁は「中小企業BCP策定運用指針」の中でも「有効な手を打つことがきでなければ、特に中小企業は、経営基盤の脆弱なため、廃業に追い込まれるおそれがあります。また、事業を縮小し従業員を解雇しなければならない状況も考えられます」(引用ママ)と危惧しており、中小企業へのBCP策定を普及・促進している。策定に必要な支援も行っているため、未着手の企業はぜひこの機会に検討をお勧めしたい。

図2 図2 BCPの策定状況

安否確認にバックアップ、クラウド利用……BCPで導入されているITツールとは

 一方、BCPを策定している企業では具体的にどのような計画を立てているのだろうか。BCPでITにまつわるものを具体的に選択してもらったところ「安否確認システムの導入」72.7%、「バックアップツールの導入」と「災害時対応マニュアルの作成」が同率で65.9%、続いて「遠隔地データセンターや拠点間相互バックアップの利用」63.6%、「Office 565などのクラウドサービス(SaaS)の利用」40.9%となった。意外にも「クラウドバックアップサービスの利用」や「パブリッククラウドインフラの利用」といったBCPにおけるクラウドバックアップの利用は3割以下にとどまっているのが実情のようだ。

図3 図3 策定しているBCPのうちITに関するもの

 フリーコメントでは「生存確認は一部の人だけが対象になっているだけだ。のど元を過ぎて熱さを忘れ、社内展開が滞っている状態」と自社音状況を憂う声や「データは堅牢なセンターに保持しているため、BCPをどこまで行うかの議論から進まない」といった声も聞かれた。BCP策定済みの企業においてもデータセンターなどの外部サービスを過信していたり危機管理意識が薄れてきていたりすることによって、有事の際にBCPが正常に機能しなくなる恐れも垣間見えた。実際に「やってはいるが、実際には役立たないと思う」「全社員への啓蒙と訓練がカギ」などの声もあり、BCP運用の継続的な見直しは今後ポイントになってきそうだ。

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