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業界のトレンドリーダーであり続けるためにRPAによるデジタライゼーションを加速させる善都の挑戦

» 2020年03月04日 10時00分 公開
[相馬大輔RPA BANK]

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RPA BANK
都筑善雄氏(代表取締役社長)

1971年に豊田市駅前に1号店をオープンして以来、愛知・岐阜県下に27店舗のアミューズメントホールを展開する株式会社善都。1,000台規模の大型店舗を出店しつつ、業界でも初となる全館禁煙店、地元企業とのコラボレーション店舗を企画するなど、東海アミューズメント業界のトレンドリーダーとして新しい試みを意欲的に続けてきた。

意欲的なチャレンジは店舗展開にとどまらず、IT基盤の整備にも積極的だ。その一つがバックオフィス業務を効率化し、働き方改革にも寄与するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用だ。同社代表取締役社長・都筑善雄氏が着目したこともあり、2017年には導入プロジェクトチームを発足した。現在はロボットの開発・運用・メンテナンスを手掛ける専任チームが中心になり、バックオフィス部門の業務を次々にRPA化。月間530時間以上の作業から社員を解放するなど大きな成果を挙げている。

今回は、都筑社長をはじめ、経営企画部RPA専属チーム、現場で自動化のメリットを体感する担当者に、RPAによって進む社内改革の事例を聞いた。

■記事内目次

  • 1.社長自身のRPAとの出会いが導入のきっかけ
  • 2.プロジェクト制から専任チームにシフトしてRPAの浸透に拍車をかける
  • 3.ロボット化により業務に余裕が生まれ、業務品質もアップ
  • 4.「デジタライゼーション」と「人」を融合させた未来を展望
  • 5. 人でしかできない業務のための時間の創出こそがRPA導入の本質

社長自身のRPAとの出会いが導入のきっかけ

――社長の一声でRPAの導入に向けた検討が始まったそうですが、その発端と背景についてお聞かせください。

都筑 善雄氏(代表取締役社長): 世の中の様々なビジネスが、加速度的にデジタルへ傾斜していく中でも、旧態依然とした私たちの業界は良くも悪くも人に対する依存度が高く、危機感を抱いていたところにRPAの存在を知りました。

例えば、私たちのビジネスは特性上、営業の施策を行うにあたっては監督官庁への申請や報告が細かく義務付けられており、必然的に各営業拠点から所轄警察署へ提出する書類は膨大な量になります。そして、その内容は場合によって遊技台1台ずつの情報を記載する必要もあることから、その作業工程におけるヒューマンエラーの削減は、長年の課題でした。

働き方改革が進む中、経営者として全社的な生産性の向上も考えていかなければなりませんし、一方では少子高齢化や娯楽の多様化により、業界全体の経営環境は今後益々厳しくなっていくものと想定できます。そのような背景もあって経営のスピードアップを図り、競争優位性を築くために活用できるツールのひとつとしてRPAの導入を検討するに至りました。

プロジェクト制から専任チームにシフトしてRPAの浸透に拍車をかける

(写真左から)加藤良祐氏(経営企画部 経営企画課副主任)、茺中毅氏(経営企画部経営企画課長)、門 寛人氏(経営企画部 経営企画課主任)

茺中 毅氏(経営企画部 経営企画課長): 導入の検討はプロジェクトベースで進みました。RPAと親和性が高いと考えられた経理部を中心に、システム部門や本社各課のメンバーで編成されました。2017年秋から導入の検討が始まり、2018年の年初から研修、ロボット作成のトライアルに着手。4月から夏までは業務に対応したロボットも増えていきました。

ただ、ロボットの作成・開発はメンバーが本業の傍らで行うため、開発から導入に至るスピード感には課題がありました。また、RPAに習熟し始めたメンバーが人事異動で本社から離れたこともあり、稼働し始めたロボットのメンテナンスにも支障をきたしていたのです。RPAには業務の属人性を解消するという期待もありましたから、これでは本末転倒になってしまいます。この反省を踏まえ、RPAはプロジェクト体制から専任チームの遂行に方向転換。門、加藤を抜擢し、開発から運用、メンテナンスまでをワンストップで手掛けるチームとして動き始めたのです。

――プロジェクトが一度ストップしてからの再起動です。リスタートは容易ではなかったのではないでしょうか。

門 寛人氏(経営企画部 経営企画課 主任): BizRobo!の販売元であるRPAテクノロジーズ社に3カ月間出向し、導入や運用の方法論、考え方をみっちりと学びました。そこで痛感したのは業務フローの精査、見直しがいかに重要かということです。ロボット作成のスキルも欠かせませんが、何より現場の業務を入念にヒアリングし、その業務を理解すること。業務の全てをロボット化してはフローが複雑になりすぎてしまいます。ロボット化できる業務と人の手が必要な業務を確実に切り分ける。ここに重点を置いて初めて、運用やメンテナンスがしやすいRPA環境が実現できます。

加藤 良祐氏(経営企画部 経営企画課 副主任): RPAの活用に適しているExcelへのデータ転記、集計、定期メール送信などの定型業務をリストアップし、RPA化を進めていきました。入念なヒアリングをして業務フローが整理されれば、あとはその流れに沿ってロボットを作成し、現場とすり合わせていくだけです。

茺中氏: 業務によっては現場にマニュアルがないまま属人的に進めているものもありました。そのため、業務マニュアルの作成と並行しRPA化するケースも少なくありません。RPAに合わせたExcelの運用、業務フロー自体の見直しについて提案することも増え、自動化以外の面からもバックオフィス部門全体で業務の効率化につながっています。

ロボット化により業務に余裕が生まれ、業務品質もアップ

――善都の本社各部署への、RPAの導入は具体的にどのような効果をもたらしましたか。

山本和加氏(営業部営業推進課事務職)

加藤氏: 開発、購買、営業推進、総務、経理など全ての部署にロボットが導入されています。稼働中のロボットは約110体。代替した手作業は月間で約530時間に達しています。

導入効果が目覚ましかったのが競合店の新台導入数を自動集計するロボットです。導入前はホームページで検索し、手作業でExcelフォーマットに転記し報告書類を作成していました。スタッフの負荷が高い作業で月間最大40時間を費やしており、カバーできる店舗数にも限界がありました。

この作業をロボット化したことで、夜間に該当データを収集し、自動で集計が済みます。月間で最大40時間相当の余力を捻出できただけではなく、多くの労力をかけて進めていた時以上の店舗数をカバーできています。競合の動向をきめ細かく把握できるようになり、購買課の業務品質の向上につながりました。

山本 和加氏(営業部 営業推進課 事務職): 私が籍を置く営業推進課は各店舗の売上などの数字を扱っています。作業自体は単純な定型業務ですが、店舗運営に欠かせない重要なデータです。新店舗が増えるにつれて作業量も比例して増えますが、集計や確認はダブルチェックを行うなどで入念に進めてきました。

ですが、その業務もRPAによって自動化されました。今では人でなければ出来ない業務に注力できています。また、単純作業から解放されて余力ができ、他のメンバーの業務をアシストできる副次効果もありました。現場の業務効率化だけではありません。部署のメンバー一同、突発的な業務の発生にも余裕を持って対応できるようになりました。精神的なメリットも大きいですね。

茺中氏: 導入効果は2つの角度から捉えて、評価しています。一つは定型業務をロボット化して人が行なっていた業務を削減できること。これは定量的に可視化できるもので、各部署で労働時間を削減し、その分のリソースをコア業務などに充てることができます。

もう一つは人力では対応できなかった業務に踏み出せるという点です。24時間365日稼働できるロボットは膨大な仕事量をこなすことが可能です。そのため、時間や手間が掛かりすぎて本来やるべきだが出来ていなかった業務、例えば前述の競合店の新台導入数のリサーチなどで効果を発揮します。

太田 好祝氏(経営企画部 システム課 主任): 情報システム部門としてもRPAには大きな期待を寄せています。営業、経理などの基幹システムとRPAをよりシームレスに連携する体制の整備を進め、RPAを浸透させたデジタル基盤づくりに力を入れています。ただ、人事や経理などのデータに触れられることから、セキュリティ面での課題もあります。今後は運用に関するルール、ガイドラインを策定し、効率化と安全性を担保した運用を目指していければと思います。

太田好祝氏(経営企画部 システム課主任)

「デジタライゼーション」と「人」を融合させた未来を展望

――バックオフィス部門を中心に、RPAチームが推進してきたロボットの導入は順調に進んでいますが、次のフェーズをどのように見据えていますか。

茺中氏: 社長がRPA導入の指針として示したのは「業務の可視化・効率化」でした。ロボット化が順調に進む中、現場にはまだまだ属人化している業務が山積みです。RPAと並行してプロセスマイニングを推し進め、現場の業務量や業務フローを可視化。業務全般をフラットに見直し、基盤を作っていければと考えています。

門氏: 笑い話ですが、RPAの導入が進む現場からは「ロボットが入ってきたら、私たちの仕事は取られちゃうね」という声が上がったこともありました。ロボットができることは何か、RPAのメリットは何かという点が腹に落ちるまでは少々の拒否反応もあったのでしょう。しかし、今では各課にヒアリングを進める中で「これもロボットでできるのでは?」という提案が寄せられるようになっています。私たちのチームが得た知見、ノウハウを社内に浸透させ、現場と足並みを揃えて、さらなる普及を図っていきたいですね。

人でしかできない業務のための時間の創出こそがRPA導入の本質

――最後にRPAなどのテクノロジーの導入による将来への展望をお聞かせください。

都筑社長: 業界全体としての傾向でもありますが、社内にはロボットへの“アレルギー”があったのも事実です。経営者としては慎重に導入を進め、理解してもらった上での普及を目指していました。業務の効率化を進め、創出された時間で人でしかできない業務に注力する。

――これが“RPA導入の本質”です。

今後の取り組みとして、店舗からもたらされるビッグデータの解析にはAIの活躍が期待されますし、利用者の動線解析等にはIoTの活用も進めていかなければいけないでしょう。「お客様のかゆいところに手が届く店舗でありたい」という思いを具現化すべく、デジタライゼーションを加速させていきます。

一方で、お客様と対面で接し、サービスしていくことが“私たちの事業の本質”です。いくらデジタル化が進んでも、現場の肌感覚は最後まで残るでしょう。他業界では無人店舗などの動きも見られ、いずれ私たちの業界に波及してくるかもしれません。現場が培ってきた「人」にしかできない部分とRPAをはじめとするデジタルテクノロジーをうまく融合させ、時代に即した店舗のあり方を模索していきたいですね。

――デジタルテクノロジーをただ受け入れるのではなく、「人」との融合を考えながら時代のニーズに応えていくことが、アミューズメント業界をさらに発展させるのかもしれません。貴重なお話をありがとうございました。

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