パンデミックによるテレワークの急速な普及に伴い、ビジネスコミュニケーションの形も変化を見せる。ビジネスチャットやメッセージアプリはどこまで普及したのだろうか。読者が最も利用しているツールは何か。アンケート調査の結果からコミュニケーションツール活用の現状を見る。
キーマンズネットは2020年7月27日〜8月7日にわたり「コミュニケーションツールの利用状況」に関する調査を実施した。全回答者数70人のうち情報システム部門が25.7%、製造・生産部門が44.3%、営業・販売・営業企画部門と総務・人事部門が同率で4.3%、経営企画部門が2.9%などと続く内訳であった。
今回はコミュニケーションツールの「利用状況」や「利用ツール」「導入範囲」に「利用しない理由」など、企業における情報共有ツールの利用状況を把握するための質問を展開。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。
かつてのビジネスコミュニケーションの手段として、長らく電話やメールが主流だった。しかし、働き方改革による業務効率性の重視、そしてテレワークの普及によるコミュニケーションの変化などが相まって、ビジネスチャットやメッセージアプリなどがビジネスの現場でも定着し始めた。そこで、本調査では、アンケート結果を基に、業務におけるコミュニケーションツールの利用状況を探るとともに、情報伝達や情報共有に関する現場の不満、課題を明らかにする。
まず、電話やメール以外のコミュニケーション手段として、業務でビジネスチャットやメッセージアプリなどを導入しているかどうかを尋ねた。「導入している」と回答したのは54.3%で、「現在は導入しておらず、今後も導入する予定はない」は34.3%だった。「現在は導入していないが、今後導入予定」(11.4%)と回答したグループも加えると、65.7%が業務でのビジネスチャットツールの利用に前向きな姿勢であることが分かる(図1)。
また、ビジネスチャットやメッセージアプリを「導入している」とした回答者に対して、組織で統一したツールを利用しているか、それとも複数のツールを併用しているかどうかを尋ねたところ、68.4%と約7割が「全社統一のツールを利用」しており、31.6%が「複数のツールを併用」と回答した。併用しているツールの数を問う項目では、「2〜3つ」が83.3%と大多数で、次いで「4つ」が16.7%であった。
次に、ビジネスチャットやメッセージアプリなどを「導入している」とした回答者に対して、導入範囲を尋ねたところ、84.8%と大多数の企業が「全社で導入している」と回答した。支社や支店、部門、プロジェクトなどの小規模単位で導入しているケースは1割にも満たなかった(図2)。ツールのメリットを最大限に生かすためにも、なるべく多くの関係者がツールで“つながっている”環境を選択する企業が多いのだろう。
次に、業務で「利用している」または「導入を予定している」ビジネスチャットやメッセージアプリについて、具体的なツール、サービス名を聞いた。
その結果、最も多くの票を集めたのが「Microsoft Teams」で71.7%、次いで「LINE WORKS」13.0%、「Chatwork」10.9%、「Google ハングアウト」8.7%、「Slack」6.5%と続いた(図3)。
Microsoft Teamsが依然として利用率が高い一方で、LINE WORKSなどもコンシューマーの間で普及している「LINE」の使い勝手を強みに、年々と利用率が増している。コミュニケーションツールの選定ポイントとしては、使い勝手や他ツールとの連携のしやすさ、互換性の高さなど、いかに現在の環境で業務効率を高められるかが肝になってくるだろう。
最後に、ビジネスチャットツールやメッセージアプリなどのツールを「現在は利用しておらず、今後も導入する予定はない」と回答した3割のグループにその理由をフリーコメント形式で尋ねた。
最も多かった理由としては「コスト面とインフラ面が問題」「予算がないので、設備投資できない」といったコスト面での懸念であった。必要性は感じるものの導入や運用にかかるコスト面で導入を見送るケースも少なくないようだ。
次に多く挙がったのが「ビジネスチャットやメッセージアプリを導入すると、不必要あるいは不適切な情報のやりとりが増える恐れがある」「仕事以外に使いそう」といった、業務以外のやりとりが増え、生産性の低下や情報漏えいにつながりかねないのではないか、という懸念であった。
確かに業務時間中の私用のメッセージのやりとりなどによって生産性の低下が懸念されるが、あえてビジネス向けチャットツールでそうした会話を許可することによるメリットもある。例えば、従業員同士のオフサイトな会話から生まれる一体感や仲間意識、アイデアなどの副次的な効果が見込める場合もあるだろう。こうした面からも、ビジネスチャットが生産性の低下を招くとは一概にも言えず、自社の業務や風土に合った活用が重要になってくるだろう。
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