NTTデータ経営研究所の発表によると、デジタルリーダーはデジタルエンジニア以上に希少で転職への志向が強く、企業は必要な人材の確保が難しい。逸材を確保し続けるにはどうすればいいか。
NTTデータ経営研究所は2021年3月25日、「デジタルリーダーの志向性調査」の結果を発表した。NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコム リサーチ」に登録している20〜49歳のモニターを対象に非公開型アンケートで実施したもので、2020年9月2日〜17日の間で4881件の有効回答を得た。
調査結果によると「デジタルリーダー」は「デジタルエンジニア」以上に数が少なく、転職への意欲が強い。NTTデータ経営研究所は、デジタルリーダーの志向を知ることで、ビジネスのキーパーソンを確保し続け、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進められるとしている。
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)によると、デジタルエンジニアは「高度なデジタルスキルを備える人材」だ。一方、デジタルリーダーは「デジタル技術やデジタルエンジニアを活用するためのデジタルスキル、事業やサービスを構想するためのビジネススキル、変革をけん引する主体性や意欲、好奇心などのマインドセットを持つ人材」としている。
具体的な調査結果は以下の通りだ。
今回の調査結果によると、調査対象の中でデジタルエンジニアは6.1%、デジタルリーダーは2.4%だった。デジタルリーダーはデジタルエンジニア以上に転職志向が強く、自身の専門領域に関わらずさまざまな分野での経験を求める。また、デジタルリーダーは「周囲と協調しながら自分を高めていきたい」と考えている点がデジタルエンジニアと異なっていた。こうした点を踏まえてNTTデータ経営研究所では、企業がデジタルリーダーを確保するには、優秀な人材が集まったチームやプロジェクトに配属し、挑戦的な役割を与えて知的好奇心を刺激し続けることが重要だと分析している。
転職経験を見ると、デジタルリーダーの中で、転職を経験している割合は約85%だった。この割合は、デジタルエンジニアの約1.4倍、一般層の約1.6倍に当たる。また、現在も転職の意向があるデジタルリーダーはおよそ83%で、46%は1年以内の転職を考えていた。1年以内の転職意向の割合も、デジタルエンジニアの約2倍、一般層の約7倍と高い。
転職理由では、「より高い報酬を得る」と「スキルアップの学びができる環境で働く」の2点は、デジタルリーダーもデジタルエンジニアと同じだった。一方、デジタルリーダーは「能力が高く刺激しあえる人材と働く」ことも重視しており、その2点とほぼ同率で挙がっていた。これに対してデジタルエンジニアでは、「より興味のある分野への挑戦」を挙げた割合が3番目に高かった。この結果についてNTTデータ経営研究所では「デジタルリーダーは『人』を重視してチームや組織とともに成長する『チームワーク型』の働き方を、デジタルエンジニアは『仕事』を軸に自分のスキルや領域を深める『専門化型』キャリアを志向する」と見ている。
こうしたことは、働く上で重視する点からも確認できる。デジタルリーダーは、人の観点では「能力が高く刺激し合える同僚」を重視し、組織については「互いに協力的で尊重し合える社風」、職場環境や仕事内容に関しては「興味のあるナレッジ(知識)へのアクセスのしやすさ」や「知的好奇心が満たされる仕事」を重く見ていた。
それに対してデジタルエンジニアは、人や組織の観点では「自分と価値観の合う社員が多い」ことや「風通しが良い」ことを挙げ、職場環境については「リモートワーク」や「自分専用の席」など一人一人に合った環境の整備を重視していた。
NTTデータ経営研究所では、DXを推進するにはデジタルリーダーとデジタルエンジニアのどちらも必要だが、両者は異なる志向性を持っているため、企業は自社に必要な人材とその志向性を理解してそれぞれに最適な環境を提供することが人材の充足につながり、DXの推進につながると考察している。
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