2021年9月13日、RPA BANK はキーマンズネットに移管いたしました。
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純国産RPAソリューション「WinActor/WinDirector」を中心に展開し、800社という圧倒的なRPA導入実績を誇る株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下、NTTデータ)。2010年にNTTの研究所で産まれた「WinActor」は、Windows端末で操作可能なアプリケーションへの繰り返し入力作業を、RPAによって自動化できるのが特徴となっている。Excelやブラウザからワークフローなどの業務システムまで幅広く対応しているのに加え、プログラミング知識がなくても使いこなすことができることから、多種多様な企業での様々な現場で活躍している。その製品コンセプトやRPA市場における今後の展開などについて、NTTデータ 第二公共事業本部 第四公共事業部 第二統括部 RPAソリューション担当 課長 中川拓也氏と同担当の藤枝彩華氏に話を聞いた。
──「WinActor」はどのような経緯で誕生した製品なのでしょうか。
中川氏: もともと“面倒で煩雑なPCの操作をもっと楽にしたい”という発想からNTT研究所がソフトウェア型ロボットを開発したのがきっかけになります。オペレーターにとって難しい画面を簡単に見えるように変換したり、複雑な操作を単純化したり、といったことを、対象のシステムをカスタマイズすることなく、外側から簡単に実現するというのが研究コンセプトで、その思想は今も変わっていません。
「WinActor」がこだわり続けるのは、特別なスキルを身に着けることなく現場で簡単に使えるRPAツールであるという点です。RPAを使って業務を自動化したいとなった時に、その度に情報システム部に相談をして……とやっていたのでは変化の速い今日のビジネス環境についていけなくなります。それに、業務に熟知し知恵を持つ現場のユーザーが、自分たちの手で自動化するほうが、すみずみまで目が行き届いて高い効果が出ることは、これまでのプロジェクトからも分かっています。
──UI(ユーザーインターフェース)もかなり視覚的な表現にこだわっているようですね。
中川氏: そのとおりです。例えばボタンひとつとっても、エクセル操作であればエクセルのロゴ、繰り返し操作はループする矢印マーク、条件分岐操作は枝分かれのマークなど、ひと目見れば内容がわかるようなデザインを心がけています。これには、直感的に作れるようにするためという目的も当然あるのですが、実はそれ以上に、「WinActor」で作成した業務フロー(以下、シナリオ)が直感的に理解されるものであるためなのです。「WinActor」を触ったことがなくても、「WinActor」のシナリオは理解できるとご評価をいただいており、業務を可視化した成果だと言って、印刷したシナリオをマニュアル替わりにしているユーザーもいるほどです。「RPAは現場のユーザー自ら作る方が良いことは分かるのだが、野良ロボの増殖も心配だ」と仰るお客様は少なくありませんが、「WinActor」はロボットを野良化させにくいツールだと言えます。
──ユーザーからの評判はいかがですか。
中川氏: プログラミングの知識がなくてもすぐに現場で使うことができる、業務を視覚化できるのでこれまで気づかなかった無駄なプロセスを新たに見つけることができたなど、おかげさまで現場のお客様を中心に様々な反響をいただいています。また、完全日本語対応であるのはもちろんのこと、すべてを国内で開発していますので、トラブル対応に限らず、あのソフトウェアを自動化してみたいとか、特殊な環境下で利用してみたいといった、現場の事情によって異なる応用のご相談に柔軟に応じられる点も、100%国産であるWinActorの強みだと考えております。
──2017年9月には「WinDirector」をリリースしましたが、こちらはどのような製品でしょうか。
中川氏: 「WinActor」で作成したロボット達を効率よく一元的に管理・統制するロボット管理ソフトが「WinDirector」です。現場で自由に使えるという「WinActor」の良さはそのままに、組織として各ロボットの統制や安全利用、継続性も高めていくことをコンセプトにリリースしました。
「WinDirector」上でシナリオを管理すれば、どこの誰がどのようなロボットを作り、どの程度の稼働率だとか、エラーが発生している等、一目で管理できる状態になります。またロボットに代行させたい業務を「WinDirector」に設定すれば、ボリュームの多い業務を多数のロボットで分散処理したり、複数の業務を多数のロボットで並列処理したり、繰り返し業務をスケジュール設定して指定日時に実行させたり、といったコントロールも簡単にできるようになります。
他には、多階層の組織管理・権限管理も実現できています。例えば、A本部B事業部C担当の課長はロボットDを編集できるが、社員は実行指示しかできないとか、E担当はロボットD自体を見られない、といった、繊細な権限管理のことです。実は、日本の企業である我々からすると当たり前に作っただけなのですが、日本的な組織構造にマッチしていたようで、予期していた以上の高いご評価をいただいています。
9月のWinDirectorバージョン1リリース後、11月、1月、3月と怒涛の機能追加リリースラッシュとなっていますが、この一連のリリースは、NTTデータが掲げる「WinActor suite」ロードマップを実現していく上での取り組みの一環となります。
WinActorは今後、秘書型ロボと専門ロボの概念を軸に拡張を続けWinActor suiteを構築する。
秘書型ロボはユーザに直接的に支援し、専門ロボは外部のサービスと連携しつつ、要求に応える専門性を発揮していく。
WinActor suite は大きく3つ軸 (2つのロボの方向性と基礎となる自動化の拡大) で成長する。
──なるほど。では「WinDirector」はどのようなタイミングで導入されるのでしょうか。
お客様の環境や目的によって導入されるタイミングは異なりますが、「WinActor」を活用している企業の多くが、最初は部署単位でロボットを導入し、その後複数部門あるいは全社に展開するというステップを踏まれます。そのため、最初はPC単体で「WinActor」を動かして、その後の拡大時に「WinActor」も、「WinActor」で作ったロボット達もまとめてサーバー上に載せ替えて、そこに「WinDirector」を加えて、一元的に管理・統制するというケースが多いですね。
PCにはPC用、サーバーにはサーバー用とソフトウェア資材の分かれているRPAツールが一般的かと思いますが、どちらの環境上でも同じ資材が動作するというのは「WinActor」の強みです。この強みがあることで、スモールスタートからのスムーズな全社展開を実現できております。もちろん、始めからWinDirectorとWinActorフル機能版、WinActor実行機能版の3ツールを取り揃えて導入されるお客様もいるので、3ツールをまとめて提供するお得なパックプランなども用意しております。
──ここに来てRPAはブームを超えて、もはやRPAを活用することが当たり前といった感じで普及が進んでいますが、そうした動向がユーザーにもたらす変化などは感じますでしょうか。
中川氏: 一番大きく変わったのは、お客様の“意識の変化”ではないでしょうか。今までは、一般的にITは“使わされるもの”という現場の受け止め方が主流で、自分たちから積極的にITを使っていこうとはなかなかならなかったのが実態かと思います。それが今では、RPAやAI-OCRなどの最先端技術活用に一番熱心なのは現場の方々です。これまでIT部門やベンダーに相談することも半ばあきらめてしまっていた業務課題について、知恵と工夫があれば自ら解決できるほどにIT技術が身近なものとなってきた、それは自分たちで使っていけるソフトウェア型のロボットという新しい労働力である、と実感いただけたことが大きいと言えるでしょう。
また、「WinActor」の導入が、業務を持つ現場部門と情報システム部門との橋渡し役ともなっている感があります。これまでは、情報システムの改善要望を受けてくれない情報システム部門と、情報システム部門のリソースや予算では対応しきれない厳しい改善要望を挙げてくる現場部門、というイメージで、お互いにコミュニケーションが取りづらかったかと思います。それがRPAの導入をきっかけに、課題共有と課題解決のためのコミュニケーションが生まれ、ITによる改善を進める現場部門と安全なIT導入を支援する情報システム部門の関係性が密接になっていくといったケースが数多く見受けられます。ここにこそ単なるITツールを超えた、RPAの本質的な価値があると考えています。
ちなみに、偉そうなことを言っていますが、弊社内も2年前は同じ状態でした。現場部門がシステムの改善要望を挙げても、M&Aで増えるグループ会社とのシステム連携が最優先課題の情報システム部門は、要望を受けきれない。そこで脚光を浴びたのが、情報システム本体には影響を与えずに、要望を解決できる「WinActor」でした。情報システム部門の部長の「WinActorによって、(改善要望を断る)嫌われ者の情報システム部門から、(現場の課題解決を手伝う)愛される情報システム部門に生まれ変わるぞ!」との掛け声のもと、WinActor全社利用の仕組みや、現場のユーザーを支援する仕組みが一気に整えられました。今やNTTデータは、日本一RPAを活用するユーザー企業でもあるのではないでしょうか。
──RPAの導入が急速に進む一方で、RPAエンジニアをはじめとしたロボットの開発・運用ができる人材不足も懸念されていますが、その点についてはどう考えてますでしょうか。
藤枝氏: 「WinActor」の場合、他のRPAツールと比較して技術的なハードルが低く、技術者も確保し易いと言われていますが、それでもこの先、倍々の成長が続けば、どこかで人材不足も起こり得るでしょう。実際、当社内にも300人ほどの「WinActor」技術者はいますが、まだまだ足りていません。そうしたことから、エンジニア養成の動きも活発化しています。例えばパートナー企業でもある人材サービス大手のパソナさんでは、「WinActorエキスパート派遣サービス」の提供を始めています。まずはRPAニーズの最も多い財務・経理分野で、財務・経理知識のある人材に「WinActor」の技術教育を行い、“ロボットによる業務改善のできる財務・経理スタッフ”として派遣しているのです。2017年は200人の「WinActor」エンジニアを輩出したと聞いています。驚くことに、意欲のあるスタッフを集めるために技術教育は有料制にされているのですが、それでも即満員となるそうです。社会的にITエンジニアが不足している環境ではありますが、RPAは最注目のスキルテーマであり、RPAスキルを身に着けたい技術者やRPA有スキル者を育成した企業は多いため、他の技術に比べれば、エンジニアを確保し易い環境にあると言えるかと思います。
──最後に、今後の目標や目指す姿などを教えてください。
“RPA市場のシェア・ナンバーワン”を不動のものにするというのが、我々が掲げている目標であり一大テーマです。お客様数については、2017年度に新規600社獲得という目標を掲げ、大幅に上回る800社を達成できました。また事業規模については、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年にRPA分野で100億円という目標を掲げました。思い切った数字であり、当時はかなりの反響もありましたが、現在の市場動向と2017年度のWinActor事業規模からすると、現実的な数値として着実に近づいているとの手応えを感じています。
また定性的な目標としては、企業・組織の至る所で「WinActor」があたりまえのように働いている環境をつくっていきたいですね。愛されるロボットパートナーとして現場に浸透し、現場のユーザーのITに対する抵抗感を減らすだけでなく、次はこんなロボットを作ってみたいとか、ITでこういうことにチャレンジしてみたいといった積極的な声が次々と挙がる姿を思い描いています。こうした現場のITへの積極的な関りと前向きな意志こそが、自社の強みを生かす現場発の新しいビジネス創出につながると信じています。RPAが単なる業務改善ツールに留まらず、事業拡大・創造のエンジンにまでなるよう、我々としても様々なかたちでお客様のお手伝いをしていきたいと考えています。
──ありがとうございました。
WinActor は「秘書型ロボ」と「専門ロボ」の2種類の概念でロボを構築する。
ロボの発展が人間を高付加価値業務に集中させ、従来より幅広い業務・異なる働き方で活躍できるようになる。
→人間を定型作業から解放する。また専門ロボの支援が、より高度な業務の遂行を可能にする。
→自然言語を理解し、人間と会話するようにロボに指示を送ることができる。
専門ロボを統制し、人間は専門ロボを意識することなく、高度な専門性を活用することができる。
他の人間・ロボと連携を強化し、人間とロボとで作るチームのパフォーマンスを最大化する。
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