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人材採用の現状とツールの利用状況(2021年/前編)

優秀な人材の獲得競争が激化している。新卒採用、キャリア採用ともに応募のチャネルや選考方法が多様化する一方で、選考の手法はアナログのままになっていないだろうか。人材の獲得に苦心する企業に共通の課題とは。

» 2021年08月19日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2021年7月19日〜8月6日にわたり「人材採用」に関するアンケート調査を実施した。全回答者数211名のうち情報システム部門が29.4%、製造・生産部門が19.4%、営業・販売部門が11.4%、人事・総務部門が7.7%、経営者・経営企画部門が6.6%などと続く内訳であった。

 今回は人材の「採用手法」や「選考方法」「応募者情報の共有方法」など、企業における人材採用の実態を調査した。その結果、多くの企業でオンラインとオフラインを併用した採用活動が進み、選考フローが複雑化する一方で人材獲得には苦労している様子などが明らかになった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるので、事前にご了承いただきたい。

応募者と企業のマッチングが「上手くいく」方法とは

 人材の獲得競争が激化している。少子高齢化に伴う労働人口の減少や雇用の流動性の向上に伴って優秀な人材は国内外からオファーを受けるようになり、競合優位を図るために“人材の確保”を経営課題の1つに挙げる企業も少なくない。

 人材採用に関する課題をフリーコメントで募ったところ「人材のレベルが落ちている」と言うコメントが多く寄せられた。優秀な人材が他社に獲得され、自社が人材から「選ばれていない」状況が見える。優秀な人材を確実に獲得するため、他社はどのように動いているのか。

 まず、各企業が“新卒人材”をどのように採用しているのかを調査した。その結果、上位には「Webの求人媒体」56.4%、「自社のWebサイトからのエントリー」46.4%、「学校紹介」46.0%が続き、Webを中心とした就職活動が進められていることが分かった(図1)。特に2020年は新卒人材の就職活動シーズンにおけるコロナ禍の影響が大きく、会社説明会や面接などのオンラインシフトが進んだ可能性がある。また、従業員の人数が少ない企業はそもそも新卒採用を実施していない例もあり、100人以下の中小企業群では43.5%が「新卒の求人はしていない」と回答した。

(図1)新卒人材の採用手法

 次に“キャリア人材”の採用手法を聞いたところ、1位は「Webの求人媒体」で58.8%、2位は「エージェントサービスからの紹介」で50.2%、3位は「自社のWebサイトからのエントリー」で45.0%となり、こちらもWebを通じた採用活動が中心であった(図2)。新卒人材との違いは“リファラル採用”の割合で、新卒では17.1%だった「従業員の紹介」がキャリア人材では31.3%、新卒では8.5%だった「知人の紹介」が14.7%あった。キャリア人材は新卒のように時期を限定した応募をせず、経験や実績、スキルの高い人材を通年で探す傾向がある。その分競合も多く、専門性や条件のすり合わせが重要になる。リファラル採用は事前に人材や企業についての情報を非公式で共有でき、入社後のアンマッチを防止しやすくなるため、企業と応募者双方にとってメリットの多い手段であると言えよう。また、積極的な活動をする前の潜在的な転職人材にいち早くアプローチできるという点においても確度が高く、注目の手法と言える。なお「その他」では「ハローワークからの紹介」が多かったが、キャリア人材に限って「派遣からの切り替え」の回答があった。

(図2)キャリア人材の採用手法

選考プロセスはアナログとデジタルが入り乱れる

 人材の選考方法について聞いたところ、最も多かった回答は「書類選考とオンライン面談、対面での面談全て」で、46.9%がオンラインとオフラインのコミュニケーションを併用していた。次に多かったのは「書類選考と対面での面談」の32.2%で、約3割がオンラインでの選考を実施していないことが分かった。対面で面談をしない「書類選考とオンライン面談」は15.2%あり、まとめると以下のような傾向が分かった。

  • 95.7%の企業が筆記試験や適正検査を含めた「書類選考」を実施している
  • 82.9%の企業が対面での面談を実施している
  • 62.6%の企業がオンライン面談を選考に取り入れている

 また「書類選考のみ」や「面談のみ」で採用を決めるケースは合計で5.7%あり、1社は「オンライン面談のみ」で選考をしていた(図3)。

(図3)選考方法(筆記試験や適性検査は「書類選考」に含める)

履歴書も個人情報なのに……現場の実態

 先述の質問から、82.9%の企業が対面面談を実施していることが分かった。部門をまたいだ多くの関係者が選考に加わり、人事担当者はもちろん配属先の担当者や部門長、役員、経営層も人材の選考に関与する。面談の際、応募者や面接担当は応募者の情報を紙で管理するケースが一般的だが、応募者の情報はどのように扱われているか。

 そこで、選考過程でどのように応募者情報を共有および管理しているかを聞いたところ、最も多かったのは「分からない」で31.3%だった。次いで「紙の履歴書や職務経歴書をファイリングして保管している」30.8%、「PDFをファイルサーバなどで保管している」21.8%、「業務部門が個別に保管している」15.2%などが上位に挙がった(図4)。

 応募者情報の共有や管理方法のルールが未設定であったり厳正に運用されていなかったりするケースがあると見られ、自由回答欄には「紙の履歴書が放り出されているのを見つけた」というコメントもあった。

 履歴書や職務経歴書も個人情報であり、個人情報取扱事業者は応募者に対してあらかじめ利用目的を明示して取り扱う必要がある。紙媒体によるファイリングであっても表計算ソフトによる管理であっても、どの部門が「いつ」「どこで」「どのように」取り扱っているのか、運用管理の必要性を認識する必要があるが、実態が追いついていない様子が見えた。

(図4)応募者情報の共有方法

 応募のチャネルや選考の方法は以前から多様化、複雑化していたが、コロナ禍によってそれらに拍車がかかったと言える。WebエントリーやWeb面接などオンライン化が進む一方で旧来の課題が残っている状況も見える。後編では、人材採用に苦心する生のコメントから見える課題に対し、回答者の企業がどのようにアプローチしているかを紹介する。

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