変化に対応しようと模索する企業や従業員がいる一方で、社会の変化に追いつけない企業や、勤め先の変化に追いつけない従業員もいることが分かった。さらに「システムが足を引っ張っている」といった不満がシステム名「名指し」で寄せられた。
キーマンズネットは2021年10月25日〜11月5日にわたり「人事制度」に関するアンケートを実施した。
前編の結果からは、コロナ禍によって人事の課題感が変わっていることや、変化に対応しようと模索を続ける企業や変化についていけない企業がいること、企業の変化に納得できない従業員がいることなどが分かった。後編では、人事関連のシステムやサービスの活用状況について聞いた。その結果、人事業務をシステム化できない理由や現在のシステムへの不満が寄せられた。
まず自社で人事関連システムやサービスの導入状況を聞いたところ「導入していない」と回答した割合は36.9%だった(図1)。2019年6月に実施したコロナ前の調査でも人事管理分野でのIT活用率が59.0%だったことから、この2年でほぼ横ばいであることが見て取れる。導入しているシステムもおおむね同じ傾向が続き、最も多いのが「人事管理システム」で、次いで「人事評価システム」「人材管理(タレントマネジメントシステム)」「採用管理システム」の順に導入率が高かった。
一方で、利用形態には変化が見られる。2019年調査では45.2%あった「ERPパッケージの機能」が今回の調査では大きく減少し「人事管理や人材管理の専用SaaS」は急進している。「クラウドERPの機能(SaaS)」の減少や「自社開発」の微増からも、人事業務に特化したSaaSの利用が進んでいる様子が見えた(図2)。
利用形態のSaaSシフトが進む一方で人事業務をシステム化している割合は変わらない。そこで「システム化していない人事業務がある理由」を聞いたところ「明確な効果を示しにくい」や「現状に不満がない」「費用対効果が不明」といった声が寄せられた(図3)。前編で挙げた人事に関する課題感が解消できるか、そのための費用と効果をどう評価するかで悩んでいる様子が見える。
次に人事関連システムやサービス導入者に対して満足度を聞いたところ「とても満足(1.8%)」と「まあ満足(18.0%)」を合わせて19.8%が「満足している」と答えた。不満があると答えた割合は「やや不満(18.0%)」と「とても不満(15.3%)」を合わせた33.3%だった。
2019年6月に実施した調査では「満足」が25.8%、「不満」が27.4%でほぼ拮抗(きっこう)していたため、コロナ禍の前後で人事関連システムやサービスについての不満が増大したことが分かる。フリーコメントで具体的な不満を聞いたところ、以下のような声が寄せられた。
システムに企業の制度が追いついていないケースや、企業の変化に従業員が追いついていないケースがあるようだ。さらに具体的には、以下のような不満の声が製品名「名指し」で寄せられた。
外資系システムには「合わない」という声が多く、国産のクラウドシステムには「活用しきれていない、制度が追いついていない」という声が多かった。老舗のオンプレミスシステムへの不満からは、最新のビジネス動向にシステムが追いつけていない様子が見えた。
人事分野に限らず、売り上げへの直接貢献が見えにくい業務系ツールの導入や刷新は優先順位を下げられやすい。一方で人事関連システムに期待する機能を聞く質問では「個人のスキル管理や能力把握に役立つツールや機能」や「タレントマネジメントの最新メソッド」といった人材活用に関する機能や、「給与体系の管理・シミュレーション機能」や「国内外の法令へのスピーディーな対応」といった人材管理面に関する機能へのニーズが高い。いずれも働き方の多様化やグローバルな変化の中で「人力作業」では対応しきれないものだ。
多様な人材をアンマッチなく採用して適切に配置し、パフォーマンスを発揮してもらうための施策として「システムは後回し」という状況を見直す必要があるだろう。
本調査では、全回答者数176人のうち情報システム部門が26.1%、製造・生産部門が18.2%、営業・販売部門が11.4%、総務・人事部門が7.4%などだった。グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があることをご了承いただきたい。
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