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視力でも時間でもない、「スマホ読書」で犠牲にしているもの:650th Lap

スマホやタブレットの普及によって、いつでもどこでも書籍を読むことが可能になった。しかし、その裏にはあるデメリットが隠れていることが明らかになった。利便性と引き換えにしているあるものとは。

» 2022年02月25日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 日本国内に電子書籍が登場してはや四半世紀が過ぎた。ガラケー時代を経て電子書籍専門端末が登場し、今やスマホやタブレットで“本を読む”光景は珍しくはない。

 スマホ向けの書籍が多数配信されているなか、「スマホ読書」に看過できないデメリットが発見された。場合によっては、今後スマホ読書を控えなければならないかもしれない。視力以外のあるものが低下するというのだが、一体それは何か?

 スマホ読書のデメリットについて報告したのは、昭和大学の研究チームだ。2022年1月31日にscientific reportsに掲載された研究報告によると、スマホ読書によって読解力が落ちるという。

 研究で使われた作品は、村上春樹氏の『ノルウェイの森』と『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の2作品だ。研究チームは、34人の被験者に『ノルウェイの森』もしくは『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』から一部分を抽出し、紙とスマホのいずれかの形式で被験者に読ませた。

 被験者は読書をした後に休息し、また読書をした後に休息するという一連のセッションをこなした後、与えられた作品の内容について研究チームから質問され、それに回答していった。

 その結果、スマホで読書した被験者と比べ、紙の書籍を読んだ被験者の正答数が明らかに多かったのだ。誤差の範囲ではなく、「有意に多い」という結果となった。

 研究チームは被験者の呼吸と脳活動にも注目し、被験者の呼気リズムと脳反応も測定していた。結果を見ると、紙で読書をしている時よりもスマホで読書をしている時の方が深い呼吸をする回数が減ったという。

 さらに、読書中の被験者の前頭前野の活動を分析したところ、スマホで読書している時の方が、紙の書籍を読んでいる時と比べて前頭前野が活発に活動することも判明した。つまりスマホで読書すると「深い呼吸が減り、前頭前野が活発に活動する」というわけだ。

 過去の研究から、前頭前野が活発になるのは人間の「認知負荷」を増大させる場合であり、その際、呼吸が深くなることが分かっていた。しかしスマホで読書した場合には、認知負荷は高まっているものの、深い呼吸にはなっていないこととなる。研究チームは、スマホを使って本を読む行為が深い呼吸を抑制する要因になっていると推測した。この両者の相互作用によって、スマホでの読書が理解力の低下を招くという。

 そして研究チームは、スマホで呼吸が浅くなりがちになる原因の一つとして「ブルーライト」を挙げた。この点についてはあくまで推測であり今後さらなる研究が必要となるが、ブルーライトが何らかの覚醒作用をもたらして深い呼吸の妨げとなっている可能性があるという。スマホ以外の電子機器での調査については、今後の研究課題だ。

 ただ、スマホ読書が理解力を弱めるということは、かなり確証の高いことのようだ。スマホでの読書は便利なだけに、つらい弱点が見つかってしまったわけだが、今後の解決策が見つかることに期待したいものだ。


上司X

上司X: スマホで読書すると、理解度が下がるという研究結果が発表されたそうだよ。


ブラックピット

ブラックピット: そうなんですね。


上司X

上司X: キミは電子書籍は読むのかな?


ブラックピット

ブラックピット: 読まないことはないですけど、全部が全部スマホで読むってことはないですね。


上司X

上司X: 俺もまあそうかな。でもどうだい? スマホで本を読むと理解しきれていないかもしれんというのは?


ブラックピット

ブラックピット: 意外にショックですよね。そういえばスマホで読んだはずのあの某小説の内容がちっとも心に残っていないのは、これが理由だったんですね……ってあまりの駄作ぶりに脳の記憶領域がスルーしただけだと思いますけど。


上司X

上司X: おいおい、さらっと某小説をディスるんじゃないよ。まあ、そういうこともあるかもしれないけどさ。


ブラックピット

ブラックピット: 必ずしも理解度が高くなかったとしても、読書の楽しみ全てが失われるわけでもないでしょうし。小説でもエッセイでも読んでる時は楽しいんですから、スマホで読書するのを避けることもないでしょう。


上司X

上司X: 珍しく前向きなことを言うじゃないか。資格試験とか受験とかで本を読むことで知識を積み重ねたい人にとってはちょっとやっぱりデメリットかもな。でも本離れが進んでいるとも言われている昨今、別に紙でもスマホでもどんどん本を読むといい、と俺は思うな。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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