メディア

ロッテ、大手百貨店も採用「Chromebook」という選択肢はありか?

「Chrome OS」を搭載したノートPC「Chromebook」は、テレワーク環境向けの端末としてシェアを伸ばしている。Chromebookという選択肢は“あり”なのか。

» 2022年03月02日 10時00分 公開
[インサイト合同会社]

 誕生から約10周年を迎えた「Chromebook」。テレワーク環境向けの端末などの用途で採用が広がり、ロッテ、敷島製パン、Jフロントリテイリングなどがユーザー企業として名を連ねる。GoogleのChrome Enterprise Japan統括部長 鈴木健一氏がChromebookを導入するメリットや事例を紹介した。Chromebookという選択肢は“あり”なのか。

法人向けのChromebook「Chrome Enterprise」とは

 Chromebookは「Chrome OS」を搭載したノートPCを指す。コンシューマー向けのChromebookとは別に、法人向けに展開されているChromebookのブランドが「Chrome Enterprise」だ。Chrome Enterpriseは、複数の端末を一元管理する機能や端末に対する統制機能、遠隔から端末をロックする機能を備える他、販売パートナー企業による導入支援やGoogleによるサポート窓口を利用できる。

 Chrome Enterpriseは組織のPC運用負担を軽減するというコンセプトで設計された。PC運用管理における「ウイルス定義ファイルの更新」「ソフトウェアの更新」「OSパッチの適用」「ハードウェアの更新」「データのバックアップ」などを効率化する。

 強固なセキュリティを確保できることも特徴だ。鈴木氏は「クラウド時代のセキュアなアーキテクチャ」と表現し、データをローカルに残さないこと、ユーザープロファイルをクラウドと同期させて保護すること、OSを常に最新の状態に保ちつつ、アプリケーション側からOSレイヤに一切干渉できないことなどを挙げた。

 「アプリケーションがOS領域のファイルやレジストリを書き換えられる場合、セキュリティを維持できなくなるだけでなく、システムが遅くなったり不安定になったりします。一方、Chrome OSは、アプリケーションがシステム(OS)領域から隔離されたサンドボックス内で動作します。OSは常にクリーンな状態なので、6〜8秒で素早くブートする状態を維持できます」(鈴木氏)

 その他、Chrome EnterpriseにはChrome OSが2つ搭載されていて、片方のOSを利用中にもう片方のOSを更新できる。利用中のOSはプロファイルごとに異なる鍵で暗号化され、利用していないOSがバックグラウンドで自動更新されるという仕組みだ。

  これらの特徴によって、Chrome OSではランサムウェア攻撃の被害が一度も確認されていないという。

TCO削減、トラブル対応の軽減にも寄与

 鈴木氏は、初期費用が安いことからTCO削減につながる点も強調する。OEM各社によりChrome Enterprise向けの多様な端末が提供されていて、クラウドからの管理機能やサポート込みで1台あたり約5万円から利用可能だ。

  導入の際は初期設定、更新、企業登録だけで利用を開始できる。Windows 10端末のようなローカルアプリのインストールや暗号化の有効化などの手順は不要だ。「Windows 10端末と比較して、デバイス導入の時間は約4分の1に短縮できる」と鈴木氏は話す。マスターイメージの作成といった端末のメンテナンスも必要ない。クラウドで複数端末を一元管理でき、操作がシンプルなため、情報システム部門に寄せられるサポート依頼数の削減にも寄与する。Google社内では、Chrome Enterpriseを導入したことで端末に起因したサポートの依頼数が25〜50%ほどに短縮された。

 「端末にトラブルが発生した際、多くの場合は端末を初期化するだけで復旧できます。初期化の手順としては、キーボードのESCキーと更新キー、電源ボタンを同時に長押しし、再起動後にスペースキーとエンターキーを押すだけです。復旧のプロセスは1分程度で完了します。ユーザーが再度ログインした時点でアプリケーションやデータ、設定が自動的に同期され、すぐに仕事を再開できます」(鈴木氏)

 こうしたメリットによって、近年はVDI環境向けのシンクライアント端末や在宅勤務用のリモート端末、コールセンター用端末などの用途で採用が進んでいるという。

ロッテ、敷島製パン、Jフロントリテイリングなど国内でも採用が広がる

 Chromebook Enterpriseは既に国内外で多数の採用実績を持つ。

 米国本拠のグローバルの銀行はセキュリティの高さ、素早い展開が可能なこと、管理の容易性などからChrome Enterprise を採用。「VMware Horizon」仮想環境と1万台のChrome OS搭載端末で在宅勤務を実施している。Windows端末1万台にChrome OSを搭載して在宅勤務端末に転用することで、コストを削減しながら強固なセキュリティを実現したという。

 米国の商業銀行では、コロナ禍でChrome Enterpriseを導入し、従業員4万4000人を対象にVDI環境を整備した。米国のリテール金融事業者Synchronyはコールセンターのテレワーク化を目的として、オペレーター6000人を対象にChrome Enterpriseを導入した。

 テレワーク用途だけでなく、営業担当者による接客端末や保守点検作業用の端末、店舗のバックヤード接客用の端末、SE用端末としても活用されている。国内では、ロッテ、敷島製パン、Jフロントリテイリングをはじめ大手企業の導入実績がある。

 その他、文教でも存在感を高めている。MM総研のシェア調査によれば、GIGAスクール構想における調達・導入端末のOSはChrome OSが43.8%を占め、Windowsの28.1%、iOSの28.2%を大きく上回った。

 「1700の自治体の4割以上でChromebookを選定いただいています。日々、学校での導入が進んでいます」(鈴木氏)

 鈴木氏は「テレワーク環境の脆弱性の排除、TCOの削減といった視点でChromebookを活用いただけます。皆さまのPC管理の工数を少しでも削減する支援ができると思っています」と強調した。

本稿は、Googleが8月31〜9月1日にオンラインで開催したセミナー「Collaboration Cloud Summit」における「誕生10周年!企業・組織でも採用が加速するChrome OS」の内容を再編集した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。