IoTやロボットといった自動化機器が急増中の製造現場では、さまざまな通信規格の機器やアプリケーションが併用される。無線区画の干渉による通信品質の劣化が大きな課題となり、トラブルが発生するケースも増加する。そんなファクトリー・オートメーション(Factory Automation:FA)環境でも安定した無線通信品質を保つための基盤技術として注目したいのが「SRF無線プラットフォーム」だ。
製造現場は、図1のように異なるベンダーの無線システムが導入されるケースが多い。しかし、各無線システム内部ではうまく無線リソース(周波数=チャネルや時間)を割り振って安定稼働させるよう設定していても、既存あるいは新規導入の無線システムによる干渉などの影響が増えると、全体の通信品質が悪化し、最悪の場合は製造ライン停止に追い込まれる。
これに対してSRF無線プラットフォームは、図2のような各無線システムの統合的な制御と可視化で、通信品質を安定させることで機器やアプリケーションの正常稼働を保つことを目的とする。いわば無線通信の交通整理の仕組みだ。
SRF無線プラットフォームに関連した技術は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が中心となり研究開発と実証実験を重ねて開発された。2015年にはNICTとオムロン、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、サンリツ、NEC、富士通、村田機械との共同プロジェクト「Flexible Factory Project」を発足し、稼働中の工場の無線環境評価と通信実験による具体的なトラブルへの対策を検討してきた。
その成果をベースに開発されたのがSRF無線プラットフォームだ。プロジェクト参加メンバーは2017年にFFPAを結成して技術開発と仕様検討を進展させ、2021年10月に「SRF無線プラットフォーム技術仕様(Ver1.1)」策定にこぎつけた。さらにFFPAは同年12月27日から技術仕様に準拠する機器の評価、認証の受付を開始した。今後はFFPA認証シールの付いた製品が機器ベンダーから順次提供される予定だ。
以降、製造現場での課題とトラブルを防ぐための仕組みについて、ポイントを解説する。
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