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テレワークによる“無駄な時間”と従業員の孤独、対処法は?SlackとWorkatoのリーダーが語る

テレワークの生産性を向上させる鍵として導入した業務アプリが、ある"無駄な時間"を誘発しているという。テレワークの盲点とその解決策をSlackとWorkatoのリーダーが語った。

» 2022年03月25日 10時00分 公開
[元廣妙子キーマンズネット]

 Slackが2021年11月に発表した「はたらき場所改革に関する調査レポート」によると、テレワークシフトによって企業が業務アプリを急速に導入し、業務を効率的に進められるようになった一方で、さまざまな課題も噴出している。

 テレワークならではの課題を解決し、生産性や従業員のモチベーションを維持するために必要なことは何か。Slackの佐々木 聖治氏(日本韓国リージョン事業統括 カントリーマネージャー)と、Workatoの中川誠一氏(日本カントリーマネージャー)が2022年3月10日に開催された「Workato リーダーズトーク with Slack」で対談した。

新入社員との交流や同僚との関係構築が課題に

佐々木 聖治氏(以下、佐々木氏): Slackは北米や日本、韓国、オーストラリアにおいて、ナレッジワーカーを対象にした働く場所についての調査を実施しました。その結果をまとめたのが「はたらき場所改革に関する調査レポート」です。日本では雇用者数100人以上の組織に勤務する、2006人のナレッジワーカーを対象に調査を実施しました。

 今回の調査によると、日本におけるテレワークの実施は全体の3割程度です。回答者のうち、「今後完全に職場または対面での勤務に復帰する」とした回答者は全体の17%、「ずっと職場勤務していた、または週3日以上職場勤務を続けていた」とした回答者は全体の37%です。両者を合わせた54%の人々は、今後オフィス勤務中心の働き方になると予想されます。

 一方で職場勤務と在宅勤務を組み合わせたハイブリッド型の勤務を希望している人は全体の44%、完全な在宅勤務を希望している人は全体の13%でした。つまり、回答者の半数以上がテレワークの継続を希望していることになります。

 多くの人がテレワークを支持する反面、「互いの顔が見えない」働き方に課題も感じているようです。40%の人が「新入社員との交流や同僚との関係構築」を課題に挙げています。柔軟性の高い働き方を受け入れつつ、従業員同士のコミュニケーション促進や、企業文化の醸成を助ける仕組み作りが求められているようです。

テレワークの実施状況(出典:slackの発表資料)
中川誠一氏(以下、中川氏):リモート会議では目的を持って話すことが多く、オフィス勤務のときよりも雑談が減ったと感じています。経験上、雑談から新しいアイデアが生まれることは珍しくなく、テレワークにおけるオープンなコミュニケーションの重要性を改めて実感しています。Slackで、こうしたコミュニケーションのために工夫していることがあれば教えてください。

佐々木氏: 当社は2020年2月には完全にテレワークに移行しました。社内では従業員同士の交流を促す施策として雑談用チャンネルを開設しています。サービスとしても、コミュニケーションを促進するための機能追加に注力しています。

 「ハドルミーティング」は、オフィスでの気軽なやりとりを再現する機能です。「音声クリップ」や「動画クリップ」など、短い音声や動画を気軽に「Slack」のチャンネルに投稿できる機能もコミュニケーションの活性化に役立ちます。「メッセージの予約送信機能」は、相手の都合に合わせてメッセージを送信できるように追加したものです。

 Slackを全社規模で導入する企業の中には、テレワークで逆に組織の結束が強まった企業があります。人材サービス事業を展開するdipは、営業チームがエリアごとにSlackのチャンネルを開設し、仕事に対する熱意を共有したりお互いの実績を励まし合ったりしたそうです。その結果、導入後わずか3カ月で8割の従業員が業務のスピードアップを実感したという報告がありました。Slackで情報を共有することで、新入社員が他部署の先輩の言動にも気軽に触れられるようになるなど、教育に役立っているようです。

中川氏: 対面で会うことが難しい状況下で、オープンなコミュニケーションが進むのはありがたいですね。

アプリケーション間の連携で1日21分をロス

中川氏: 「はたらき場所改革に関する調査レポート」では、テレワークにおける情報共有も課題として挙がっているようです。

佐々木氏: はい。全体の46%が「必要な情報や書類が見つけにくい」と回答しています。さらに全体の42%が毎日6つ以上のアプリケーションを使って仕事をし、アプリケーション間の切り替えに1日平均21分を費やしていることが分かりました。これは1年に換算すると10日半に相当します。コロナ禍で企業が多種多様なアプリケーションを導入しましたが、アプリケーションの切り替えに多くの企業が課題を感じているようです。

 アプリケーションについて「非常によく統合されており、これらを介して効果的に仕事ができる」と回答したのは全体のわずか12%でした。アプリケーションをより使いやすくするためのソリューションが必要だと考えています。

業務アプリの活用における課題(出典:slackの発表資料)

中川氏: 「どちらかと言えばよく統合されているが、有効に使うには対処が必要である」が全体の53%で最も多くなっていますね。アプリケーションを導入したものの、業務の効率化に生かせていない現状が見て取れます。Slackはアプリケーション連携の課題にどのように対応していますか。

佐々木氏: 当社は、Slackを介したさまざまなワークフローの自動化を重要視しており、Slackと「Gmail」「Salesforce」「Workday」などのアプリケーションを連携させて承認ワークフローを自動化しています。承認依頼が届くとSlackに通知がくる仕組みで、スマートフォンから簡単に承認作業を実行できます。

 Slackは2500以上のアプリケーションと連携できますし、今後は2021年に合併したSalesforceとも一層連携を強化していく予定です。Slackを介してアプリケーション間の連携を強化し、業務を効率化させることで意思決定のスピードを向上させます。

 SlackはデジタルHQとして顧客に価値を提供できると考えています。デジタルHQとはデジタル空間にある仕事の拠点のことで、3つのメリットを創出します。1つ目は「組織の垣根を超える」というメリットです。2つ目は「柔軟性の確保」で、時間や場所に捉われず、従業員のワークスタイルやライフスタイルに合わせた新しい働き方を演出します。そして3つ目が「業務の自動化」です。業務を自動化し、あらゆるアプリケーションと連携することで仕事の生産性を高めます。

中川氏: 3つ目の業務の自動化の部分は、当社のソリューションである「Workato」もお手伝いができているのではないかと考えています。

佐々木氏: そうですね。今後は、SlackやWorkatoのようなソリューションを介してアプリケーションを橋渡しするようになると思います。1つのシステムによる部分最適の自動化ではなく、業務全体を見据えた全体最適の自動化が求められると考えています。

ツール選択のポイント

中川氏: Slackはこれからの働き方にどのように活用できますか。

佐々木氏: 先を見通せない時代になり、多くの企業が新しい働き方を模索しています。今後はこれまでに試行錯誤してきたことを恒久化するステージに入ります。企業が自社に必要なデジタルツールや業務プロセスを取捨選択する中で、選ばれるような存在でありたいですね。

 業務を自動化しても、人が判断しなければならない部分は残ります。企業にとって重要な判断をする「人」を支えるためにも、Slackのようなコミュニケーションのプラットフォームは必要だと考えています。現在だけでなく未来を見据え、提供できる価値やデジタル環境における過ごし方の成熟度を上げるつもりです。

中川氏: コロナ禍でなかなか外出できない状況が続いています。Slackが持つさまざまな機能をうまく活用しつつ、テレワークならではの課題を解決していきたいですね。本日はありがとうございました。

佐々木氏: ありがとうございました。

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