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» 2022年04月14日 10時00分 公開

小さなHDDなのに30TB? 容量破壊の衝撃技術「MAS-MAMR」とは

HDDの大容量化がさらなる進化を遂げようとしている。新記録技術となる共鳴型マイクロ波アシスト記録(以下、MAS-MAMR)によって、3.5型HDDに30TB超のデータ量を保存できる時代がもう目の前に見えてきた。

[土肥正弘,キーマンズネット]

MAS-MAMRって何?

 共鳴型マイクロ波アシスト記録「MAS-MAMR(マス・ママー/Microwave Assisted Magnetic Recording)」とは、従来と同じサイズの磁気ディスク(プラッタ)上に、より高密度にデータを記録するデータ記録方式のことだ。限界を迎えつつあったHDDの記録容量拡大のために開発された技術で、2021年末に東芝、東芝デバイス&ストレージ、昭和電工、TDKの共同で、記録能力の大幅向上を世界に先駆け初めて実証したことを公表した。

HDD大容量化が求められる理由は?

 クラウド化やDX(デジタルトランスフォーメーション)、テレワークの拡大など近年のIT活用領域とデータ量の増大傾向は、データセンターにおける保存データ量の急増につながっている。データセンターの新規構築や拡張は続いているものの、消費電力の右肩上がりを抑えながら、ストレージ増強ができるかどうかが懸念ポイントになっている。なかでも施設内で生成されるデータ保管に利用されるニアラインストレージ(オンライン用途とオフライン用途の中間的なストレージ)の容量拡大は、データセンター運営の大きな課題だ。

 HDDは垂直磁気記録方式(PMR:Perpendicular Magnetic Recording)による飛躍的な容量拡大以来、ディスク上の記録スポットを微細化する技術や、ディスクやヘッド、アームを薄くして筐体内に多数のディスクを収める技術が磨かれてきた。現在のところディスク枚数は最大で10枚の実装を実現したが、これ以上の枚数増加は限界に近いと見られている。そのため、1枚あたりに記録できる容量を増やす方向での技術開発に期待が集まっている。

 オンライン用途ではSSDや高速・高信頼なHDDの採用が進み、オフライン用途では高速テープドライブなどが採用される一方で、ニアライン用途を担っているのはもっぱらHDDだ。ニアライン用途のHDDの大容量化はコスト最適に、急増するデータ容量に対応するための最大の課題とも見られている。

HDDの記録方式はどう改善できるのか?

 現在の一般的なHDDの記録方式は、図1のように主磁極と補助磁極を備えた記録ヘッドにより磁界を発生させ、ディスク上の磁性体粒子のS極とN極を反転させてデータ記録する方式だ。

図1 一般的なHDDの構成と記録方式(資料:東芝)

 この方式(CMR:Conventional Magnetic Recording)で、ナノスケールに微細化した磁性体粒子数個分にデータ記録できるヘッドのコンパクト化が競われてきたが、さらなるコンパクト化は記録磁界の弱さにつながり、熱揺らぎと呼ばれる磁界強度の減少が生じて、データを長期間保存できなくなってしまう。より保磁力の高い、熱揺らぎに強い耐性をもつ磁性体を利用する方法は存在するが、そのような材料の磁化方向を反転するには従来よりも大きなエネルギーが必要になる。コンパクト化・微細化と、データ記録状態の安定性、書き換えの容易さは、それぞれがトレードオフになって三すくみのトリレンマになってしまう。

 従来方式では現在のところディスクを10枚実装した20TB容量の製品が登場しているが、ディスク枚数の拡張は間もなく限界になると予想される。なお、同様の記録方式を用いながら、トラックを一部重ねて記録するSMR(瓦記録/Shingled Magnetic Recording)方式による高密度化技術も実用化している。しかしこの方式では書き換えの際に、重なり合ったトラックのデータを一度退避して適切に書き込み直す複雑な処理が必要なため、処理速度の低下に課題がある。アーカイブ用途などのユースケースでは処理速度はさほど問題にならないが、現在以上の高密度化がやはり難しく、技術上の三すくみの問題を根本的に解消することにはつながりにくい。

 この三すくみ状態から脱するために考案されたのが、保磁力の高い磁性体を利用しながら、微小な記録ヘッドによる磁界でも容易に磁化方向の反転が実現できるように、別のエネルギーを加えて記録をアシストする仕組みだ。

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