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レガシー情報機器の利用状況(2022年)/前編

固定電話やFAXなど、オフィスでの利用を想定した情報機器はコロナ禍でどのように利用状況が変化しているのか。テレワークシフトなど労働環境の変化を機に、これらを廃止したいと考える企業がある一方で、さまざまな理由から廃止はしないとする企業もあるようだ。

» 2022年05月12日 09時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは2022年3月14日〜29 日にわたり「レガシー情報機器の利用状況」に関する調査を実施した。本調査では、コロナ禍で利用が減少していると想定される固定電話やFAXなどを“レガシー情報機器”と定義し、利用状況や課題、今後の継続利用意向などについて調査した。今後の継続利用意向などについて調査した。

 前編となる本稿では、固定電話やTV会議システムの利用状況や代替サービス、併用サービスなどを明らかにする。

長期化するコロナ禍でも廃止できないオフィス機器

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを背景に、多くの企業がテレワークや在宅勤務、時差出勤などで感染リスクを抑えた働き方にシフトした。長引くコロナ禍でその取り組みは波及しているようにも見える。

 キーマンズネットはコロナ禍における企業活動において利用場面が減少すると予測される機器を“レガシー情報機器”と定義し、ニーズの変化を追ってきた。

 はじめに利用状況を調査したところ「利用しており、今後も利用する予定」では「FAX」が79.7%と最も高く、次いで「固定電話」74.2%、「TV会議システム」65.6%が上位に続いた(図1)。これを2020年10月に行った同様の調査と比較したところ「固定電話」の利用割合が7.6ポイント減少した。

図1 レガシー情報機器の利用状況(2022年)

 一方で「利用しており、今後廃止する予定」では「固定電話」が9.4%、「FAX」と「TV会議システム」が6.9%、「タイムカード」が3.6%、「EDI」が1.7%だった。廃止予定の割合が最も高かった固定電話は、テレワークや在宅勤務など固定オフィスにとどまらない勤務形態への移行により利用機会も減少してきている様子だ。固定電話の代替としては「クラウドPBXとスマートフォン」62.2%や「Teams電話」44.4%が挙がり、Webサービスへの移行が進んでいると考察できる(図2)。

図2 固定電話の代替として利用予定のサービス

固定電話を持ち続ける理由とは

 固定電話は83.6%の回答者が利用しており、74.2%が今後も利用をする予定だとした。その理由は次の4つに大別できる。「廃止をしない」とする企業の声をフリーコメントで聞いた。

 1つは「顧客対応のためにオフィスでの電話対応を必須としている」というもだ。フリーコメントでは「顧客や取引先からの電話を受ける手段がないと業務ができない」「事務所で電話での対応が必要な業務が多いため」など社外からの問い合わせ窓口として固定電話が必要になるという声が多く挙がった。その他、「金融機関や省庁への問い合わせの際に必要になる」というコメントもあった。

 2つ目は、「テレワーク環境が整備されていない」という理由だ。「テレワークは一部での導入にとどまり、全ての従業員にスマホが提供されているわけではない」や「工場勤務なので出社が必須。一人一人に携帯を持たせたとしても、従業員が作業している間は電話に出られないので代表番号の方が対応しやすい」といったコメントが見られた。テレワークに適さない業種の場合は、固定電話を利用した方が効率的なケースもある。

 3つ目は「コストの制限からリプレースができない」というものだ。「機器構成の変更に費用がかかるから」など、固定電話を廃止して顧客対応のための環境を新たに構築するコストを捻出できないといった意見も見られた。

 最後は、「BCP対策として固定電話を利用する」という理由だ。固定電話は「停電時も利用できるので」といった意見の他、「停電といった災害時に備えてアナログ電話を利用中」とした回答者もあった。

減少傾向のTV会議システム……Web会議が主流となったコロナ禍で”使い分け”進む

 TV会議システムは、65.6%の回答者が利用しているとした一方、“廃止予定”の機器としても3位(6.9%)に挙がった。利用者にTV会議システムの課題を聞いたところ「機材が高価」(35.3%)、「他のWeb会議システムとの接続性が悪い」(26.3%)、「音声品質が悪い」(23.1%)といった課題が上位に挙がった(図3)。

図3 利用中のTV会議システムでの課題

 TV会議システムを利用している企業は「Zoom」や「Teams」などの、PCやスマートフォンアプリを使ったWeb会議システムの利用率も高かった(図4)。一般的にTV会議システムは、カメラやスピーカー、MCU(他拠点接続装置)などの専用機器を会議室に設置することで高品質な音声や映像を期待できるといわれているが、テレワークの普及によって遠隔会議の機会が増えて音声や映像の品質に対する”許容度”が増したことで、高額なTV会議システムから比較的リーズナブルで手軽に利用できるWeb会議システムへの移行が進んでいると考えられる。

図4 TV会議システムとは別の会議システムの利用有無

 本調査の回答者は477人で、企業規模別では1001人以上が39.6%、101〜1000人以下が35.0%、100人以下が25.4%。所属部門別では情報システム部門が31.4%と最も多く、次いで営業/営業企画・販売/販売促進部門が15.4%、製造・生産部門が13.6%、経営・経営企画部門が10.1%という内訳だった。なお、グラフ内で使用している合計値と合計欄の値が丸め誤差により一致しない場合があるのでご了承いただきたい。

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