企業が人事採用の募集要項を掲示する時は、慎重に考えるべきだ。優秀な人材が「自分には無理だ」と思い込み、貴重な戦力を逃す可能性がある。
米国雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission)と連邦契約順守計画局(Office of Federal Contract Compliance Programs)が開催したオンラインイベントで、パネリストは「雇用主は学歴よりもスキルを優先する傾向があるが、従来と異なる職歴を持つ候補者は依然として見落とされている」と述べた。
非営利団体のOpportunity@Workの共同設立者バイロン・オーギュスト氏は、過去20年間の傾向として、企業は職務記述書に4年制大学の学位を必須としているが、学士号を取得せずにその仕事に就いている人が何十万人もいる。それにもかかわらず、候補者を狭めていると指摘する。
オーギュスト氏や他のパネリストは、雇用主が行動面接(STAR面接)を通じてスキルを持つ求職者を採用する必要性について語った。オーギュスト氏によると、これらの候補者は経歴が理由で昇進を阻まれたり、採用プロセスで他の障壁に直面したりすることが多く、能力の低い候補者が優遇される傾向にあるという。
オーギュスト氏は、「高度な学位を持つ人は、彼らには向いていないであろう深い役割が与えられている」と述べる。
Burning Glass Instituteの2022年のレポートによれば、2017年から2019年の間にミドルスキル職種の約46%、ハイスキル職種の約31%で学位要件がリセットされたことが分かった。最近では、メリーランド州の政府が数千の職務において4年制の学位要件を取り下げた。同州の学位よりもスキルを重視した雇用の推進は、2022年の一般教書演説で賛を浴びた。
これは、米国の黒人人材の機会格差是正に取り組む経営者連合OneTenと提携した、ある医療業界の雇用主がとったアプローチだ。
パネリストのモーリス・ジョーンズ氏によると、ある企業は当初、一部の職種のみに対して人材を募集していたが、わずか数カ月の間に「スキル優先の視点」と呼ぶ方法で全ての職種を再構築したという。その結果、同社は3000近い職種を再設計した。
「これこそ私たちが求めていたものだ。経営幹部や採用担当者、人事担当者は、最初からこうするべきだったと悔やんでいる」とジョーンズ氏は述べた。
給与体系などの他に障壁があるケースもある。例えば、雇用契約書に「大卒者以外の者は給与を低くする」と記載されるケースがあるとオーギュスト氏は指摘する。
同氏は「企業は無用な障壁を数多く設けている。雇用主はインターンシップや実習モデルを構築し、雇用機会を拡大するべきだ」と述べる。
ジョーンズ氏は、米国西部に拠点を置くある企業が、黒人の人材にもっとチャンスを与えたいと考えていることを例に挙げた。この企業は地元に求めている人材がいないことに気付き、多くの仕事をテレワークに移行した。そうすることで、就労場所にとらわれない採用を実現したという。
また、他の企業では「人材がいるかどうか」よりも「その人材をどのように選別しているか」が問題になっている。オーギュスト氏は「何が足りないのかが分からない。その障壁を取り除けば見えてくるはずだ」と語る。
採用担当者は、4年制大学卒業のような“伝統的な”資格を持つ候補者を探しているため、採用プロセスに固定観念が混ざり込んでいるかもしれない。ジョーンズ氏は「4年制大学の学位要件を撤廃することを決めた企業でさえ、4年制大学の学位を持つ候補者を優先するというワナに陥る可能性がある。それは偏見や考え方のせいだ。4年制の学位は『この人は勉強ができる』ということを示すだけにすぎない」と述べた。しかし、ほとんどの企業は学歴の撤廃を考えていないという。
オーギュスト氏は、介護業界やコールセンターなどの第一線の仕事から、情報技術やサイバーセキュリティなど需要の高い分野にキャリアチェンジする人材が続出していると指摘する。このような動きは、これらの労働者の回復力と好奇心の証だと同氏は語る。
「パンデミック時に、エッセンシャルワーカーがしてきたことを自分自身の目で見てみよう。それらは困難な状況に対処できる処理能力だ。そして、それは企業が必要としているものだ」とオーギュスト氏は語る。
しかし、パネリストたちは、人事担当役員と人材管理者、そして経営幹部の間で連携が必要であることを強調した。ディケンズ氏は「それはトップが決めることだ。CEOは人事部に、全ての職務記述書に学位要件を設けるなと指示しなければならない」と述べる。
これにはスキル優先の文化を構築する取り組みが必要であり、企業がそれを構築するにはある程度の時間がかかるとジョーンズ氏は述べる。
© Industry Dive. All rights reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。