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NTTデータとSansanが語る、Notion AIは仕事にどう役立つのか

2023年2月のリリース後、話題を呼んだNotion AI。いち早くNotion AIの利用を開始したNotionユーザーである NTTデータとSansan が、Notion AIの導入の決め手やメリット、活用戦略について語った。

» 2023年09月19日 08時00分 公開
[平 行男合同会社スクライブ]

 Notionはドキュメント作成・共有、プロジェクト管理、社内ナレッジ共有などの機能を備えたクラウドサービスだ。社内の情報をNotionに集約することで、情報の透明性や情報共有スピードが上がるとして、既に複数のコミュニケーションツールを導入している大手企業からも人気を集めている。

 2023年2月には「Notion AI」が追加され、大きな話題になった。いち早くNotion AIを導入したNotionユーザーはどのようにAIを活用しているのか。NTTデータの合田剛史氏(ソリューション事業本部 デジタルビジネスソリューション事業部 デジタルワークスペース統括部 ソリューション開発担当)とSansanの岩下弘法氏(技術本部 Strategic Products Engineering Unit 部長)が、Notion AIを導入した決め手やメリット、活用状況などを語った。

アイデアの整理はChatGPTでもよい、それでもNotion AIを導入した理由

 Notion AI(AI機能)は、仕事を早く進め、より良い文章を書き、高い創造性を実現することを目指したものだ。Notionに蓄積されたドキュメントやナレッジを基に、AIが「誰が利用し、どのような仕事をしているのか」というコンテクストを学習していることが特徴だ。

 現時点で、アイデア創出や文章の品質向上、生産性向上などの機能がリリースされている。アイデア創出は、ブレーンストーミングやプレスリリースのひな形作成、メリット・デメリットのリストアップ、営業メール作成などに使える。

 文章の品質向上機能は、文章の翻訳や長さ調整、スペル・文法の修正などが含まれる。「もっと力強い文章に」といった抽象的な指示にも対応可能だ。

 生産性向上のための機能は、ドキュメントの要約や会議の議事録作成、アクションアイテム抽出などが含まれる。複数の会議の議事録の内容を横断して要約し、データベース化するといった主に経営層や管理職のニーズにもこたえられるという。

社内会議議事録のデータベースのイメージ(出典:Notion投影資料)

 NTTデータは、Notion AIを2023年6月から導入している。合田氏が所属するNTTデータのソリューション開発チームでは、多くの案件を扱うことから、ナレッジが属人化しやすいことが課題だった。情報の透明性を高めるために2022年4月にNotionを導入し、2023年6月からはNotion AIも活用している。

 「『毎月コーヒー2杯分の金額で作業を効率化できる』というNotionの提案に共感しました。Notion AIは、テキスト入力と編集の効率化が期待できること、同一ツールでナレッジ管理とAI機能を利用できること、そしてデータ管理の安全性を確保できることを理由に利用をはじめました」(合田氏)

 Notion AIのヘルプサイトにはデータ管理の方針として「データはページ内のコンテンツのみを参照し、標準的なデータ保護対策に従って暗号化し非公開の状態にする」かつ「モデルのトレーニングに顧客のデータは使用しない」と記されている。AIによる社内情報の学習に不安を抱く声は多いが、NTTデータはこの方針を基に安全性を評価して利用を決断したという。

 一方、SansanのEngineer Unitも、業務データをAIの対象にできることを高く評価している。同社では、2020年ごろからNotionの部分導入をはじめ、「Confluence」や「GitHub Wiki」などと並行しながら、草の根的に利用を広げてきた。現在は、乱立したコミュニケーションツールをNotionに集約する流れの中で、全従業員の約3分の1にあたる500人がNotionの有料アカウントを保有しているという。さらに、2023年7月にはNotion AIを導入した。

 SansanではNotion AIの導入前に1ヵ月のトライアル期間を設け、エンドユーザーに使用状況についてアンケートを採った。その結果、利便性を評価する声は多かったものの、トライアルを延長したいという声は半数弱で、「アイデアの整理に使うのならChatGPTで良い」という意見もあり、多数の支持を得ることはできなかった。それでもNotion AIの導入に至った理由を岩下氏は次のように述べる。

 「Notion AIを導入した理由の一つは、Notionに蓄積してきた業務データをAIの対象データとして活用できることをメリットに感じたためです。データベースに合わせてAIがデータのプロパティを追加、整理できる点も魅力でした。AIを使う前提でデータを管理すれば、AIの可能性をさらに広げられます。実は、Notion AIの機能が自社製品と一部重複していることへの危機感も導入を後押ししました。自社製品の進化を考える上で、従業員がすぐにAIを使える環境が大事だという経営判断があったのです。短期的なメリットよりも未来への投資を考慮しました」(岩下氏)

SansanのNotion AI導入の理由(出典:岩下氏の投影資料)

2社によるNotion AIの活用戦略

 NTTデータは、主にドキュメントの校正や要約、英訳和訳、要点の洗い出しなどにNotion AIを活用している。従来、メールの校正に多くの時間をかけていたが、Notion AIによって効率よく精度の高い文章を作成できるようになった。

Notion AIを使った文章校正(出典:合田氏の投影資料)

 議事録の作成にはネクストアクション抽出といった、アイデア創出機能を活用している。従来は出席者の誰かが議事録を作成してSlackなどに投稿する手間があったが、Notion AIを使うことで「議事録作成者の負担が大きい」「時間が経つと内容を探しづらくなる」などの課題を解決できたという。

 「文字起こしツールで作成したテキストを、文字数や形式などの指示を出してNotion AIが要約して議事録を作成します。作成した議事録をDBに格納し、後から手軽に見返すことができます」(合田氏)

Notion AIを使った議事録作成(出典:合田氏の投影資料)

 SansanのEngineer Unitでは、Notion AIの翻訳や要約の機能を中心に活用している。

 「現状でも文章作成などで成果が出ているが、もう一段階使いこなせば面白くなると感じます。ChatGPTもそうだが、現時点でAIは“あったらいい機能”であり、“なくては困る”レベルには達してないません。そこに到達できるかどうかは、私たちのAI活用意識にかかっています。まずは環境を整備して、全従業員のAI活用意識を高めることが重要です」(岩下氏)

 両社とも、まずはより多くの従業員にAIの活用を促すことが課題だという。

 「個人的な所感としては、まだAIを使ったことがない人は校正や要約の機能から入り、慣れてきたらプロンプトの書き方の検討やMermaid記法でのフローチャート作成などにチャレンジしてみるのが良いと思います。まずは全員が使い倒せる環境づくりが必要です。議事録などのテンプレートにAI起動ボタンをつけるなど、慣れていない人でも使いやすいUI/UXを目指しています。Notionのチャンピオンズコミュニティなどで情報を集めて取り組みを進める予定です」(合田氏)

 「当社ではNotionの便利な使い方を共有する方法として、アンケートを実施する他、社内でラーニングセッションを開催しています。利用者が相互に情報交換ができるような仕組みを整備し、利用促進につなげたいです」(岩下氏)

本記事は、Notionが2023年8月22日に開催したオンラインイベント『Notion AI活用企業:ライトニングトークウェビナー』の内容を編集部で再構成した。

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