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最低限の仕事しかしない「静かな退職」をした従業員に上司はどう向き合うべきか

「静かな退職」は、必要以上に頑張ることをやめ、最低限の仕事をこなすような働き方を指す言葉として、にわかにブームになった。「静かな退職」を選ぶ従業員に対して上司はどのような対応をすべきか。

» 2022年11月30日 15時00分 公開
[Caroline ColvinHR Dive]
HR Dive

 「静かな退職」(quiet quitting)という言葉が話題を集めた。実際に仕事を辞めるということではなく、必要以上に頑張ることをやめ、最低限の仕事をこなすような働き方を指す。

 「静かな退職」に関する議論は、ザイド・カーン氏がバイラルな「TikTok」で「静かに退職したい、もうそれ以上のことはしたくない」と述べたことからはじまった。人が「静かな退職」という言葉について議論する際、そこには野心や公正な報酬に関する主張の他、これらの全ての要素に影響する世代間の違いといった問題意識含まれている。最終的には、仕事が自分自身の感覚に影響を与えるかどうかという哲学的なテーマも関わってくる。

 「静かな退職」は、よく「サボり」と誤解されることがあるがそうではない。しかし、多くの時間や気持ちを仕事に傾けてきた人には理解しがたい部分があるようだ。「静かな退職」という選択に至る理由は何か、そうした従業員に対して上司はどのような対応をすべきか。

「静かな退職」をする従業員の気持ちと、上司の対応方法

 「静かな退職」に関する話を聞くと気分が悪くなるという人には、悪い知らせだ。私たちはZ世代が先導する労働革命の中にいるので、進化し続ける仕事の未来についての議論はすぐにはなくならない。

 この労働革命に対する人事リーダーの懸念と憤りを理解するために、私は、isolvedの最高人材責任者(CPO)、エイミー・モッシャー氏に話を聞いた。

 モッシャー氏は「必要最低限の仕事しかしない」という労働のアプローチについて、「以前なら『惰性労働』と呼ばれていただろう。場合によっては、全く働かずに済んでしまう従業員もいると思う」と切り出した。

 「30分から1時間で上司が望んでいると思われることを全て片付けてしまい、後は退勤時刻まで何もしない。副業をしている人さえいる」(モッシャー氏)

 私は多くの人事担当者の不満を理解している。多くの企業は従業員の定着に苦労している上に、従業員エンゲージメントも低下している。エンゲージメントの低下と、退職の2週間前に届けを出すという行為は密接に関連する傾向がある。

 多くの企業が従業員管理のために、リモート監視ソフトウェアを利用しているとモッシャー氏は指摘し、「従業員がネットワークやデータベース、顧客との通話に費やした時間を追跡するために、企業がより多くのテクノロジーを活用するようになっている」と述べる。

 実際にやる気のない人がテレワークを武器にしたり、利用したりする可能性がある」とモーシャー氏は続ける。

 こうした事例は前代未聞ではなく、人事担当者の中には胸焼けを起こす人もいるかもしれない。だが、テレワークでサボるという行為は「静かな退職」の範囲には入らないだろう。TikTokの中でカーン氏は、「静かな退職」を「仕事が自分の人生でなければならないという『ハッスル文化』的な考え方にもはや従わないこと」と表現している。静かな退職をする人はおそらく、リモート監視ソフトウェアが危険信号を発したり、複数の仕事を掛け持ちしてごまかすような人ではないだろう。

 「静かな退職」は、「ワークライフバランス」や「メンタルヘルスの偏見をなくすこと」と同じ切り口かもしれない。特に、採用時に決まった役割以外の仕事を求められた場合、誰もがその労働に見合った報酬を得る権利があると思う。仕事がどんなに「大変」であっても、誰もがシフト中に休憩を取る権利があるし、有給休暇を取る権利がある。上司やその上席が自分のメンタルヘルスに配慮して、必要な便宜を図ることは当然だ。

 仕事への取り組み方や時期にも世代間の違いがあって、それがデジタル論争の緊張を悪化させている。CPOとしてだけでなく、社会人になったばかりの大人の母親として、モッシャー氏はそれを目の当たりにしたと語った。

 「私は20代のときに、できる限り多くの時間を仕事に費やし、できる限り多くのことを学ぶという過ごし方をした。一方、子どもたちは生きるために働くというまったく違う考え方を持っている。私が週末に働いているのを見るのは珍しくないだろうに」(モッシャー氏)

 世代間格差の社会学と同時に、長く生きている人々は、悲惨な時代を生き抜いてきたという事実もある。財布に直接影響するような無視できない困難を経験してきた。

 「今30歳以下の人は、2008年や2001年のような世界的不況の中で仕事をしたことがないだろう。市場が暴落し、大量解雇やリストラが行われ、少ない労働力でより多くのことをこなさなければならなかった。周りの全ての人が仕事を持っていたわけではない。仕事の機会を得ることは、より多くの労働を求められることだった。

 また、人生経験が長くなると「尻拭い」的な考え方も出てくる。モッシャー氏は従業員への再教育の取り組み、つまり定着のためのL&D(Learning & Development)を強化することを解決策として提案した。多くの人事専門家は、そのような機会を設けることで従業員が企業に愛着を持つようになると調査結果をもとに主張する。人事的観点から、レイオフや雇い止めを余儀なくされたときも、残された従業員のスキルを高めることで、より少ない人数でより多くの仕事をこなせるようになる可能性がある。

 モッシャー氏に話を聞いた直後、筆者は別の人材業界の専門家に、自社のハイブリッドヘルスへの取り組みについて詳しく話を聞いた。メンタルヘルスに対する世代別のアプローチが話題になった。

 筆者はウェルネスの巨人の偉業を尊重している。ジャーナリストとしてWebサイトで、同僚や友人と私の持つ“脆さ”について共有しているが、これが両親や祖父母のそれとは全く違うことを知っている。Z世代の中でも上の年齢という立場ではあるが、私が対話したミレニアル世代よりも自分のメンタルヘルスについてオープンになれると感じている。

 世代間格差やエイジズムについて書き続ける中で、筆者はこのことを常に念頭に置いている。年配者の仕事に対する考え方は必ずしも間違っているわけではない。ただ違いがあって、長所と短所がある。だから、Z世代が「静かな退職」を選択したことについて話すとき、全ての年齢の人が同じことを心に留めておいてほしい。そして、そののんびりとした自由気ままなアプローチには、「何か意味があるのかもしれない、ワークライフバランスを見出だすかもしれない」と覚えていてほしい。

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