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ビジネス向け日程調整ツールとは 無料ツールとの違い、効果的な使い方

日々の業務を大幅に効率化できる「日程調整ツール」。コロナ禍を通じてビジネス用途でも需要が高まり、さまざまなシーンに合わせた機能を用意している。導入の効果が高いのはどのような企業で、選定のポイントは何だろうか。

» 2023年02月20日 07時00分 公開
[吉村哲樹オフィスティーワイ]

 日程調整ツールはその名の通り、会議やイベントを実施する日程の調整作業を効率化してくれるツールだ。プライベートの集まりや飲み会のスケジュール調整のために、無料の日程調整ツールを使った経験がある方も多いだろう。この手のコンシューマー向けのツールは機能がシンプルで誰もがすぐ使いこなせる半面、ビジネス用途では機能が不足していることが多い。

小俣友香理氏

 そのため今日ではビジネス向けの日程調整ツールがさまざまなベンダーから提供されており、既にこれらを導入して大きな成果を上げている企業も少なくない。日程調整ツール「eeasy(イージー)」を開発、提供している株式会社E4(以下、E4)の小俣友香理氏に、導入の効果が高い企業の特徴やよくある利用シーン、製品選定のポイントを聞いた。

3者間、同席、他者同士…… 実は多様な日程調整パターン

 単に二者間の空き時間をすり合わせるだけなら無償のツールでも十分に役立ちそうだが、ビジネスの場面で利用するとなると機能が不足することが多い。「誰の日程を調整するのか?」という点に着目しただけでも、業務現場においては以下のような複数のケースが想定できる。

自分と相手だけ

営業担当者が自身の予定と顧客の予定をすり合わせるようなケース。

他者同士の調整

人事部門が求人応募者と面接官との間の面接日程をセッティングするようなケース。

同席調整

上司や技術担当者など別の人を商談に同席させたいようなケース。

3社以上での調整

自社を含めて3社以上の参加者の日程を調整しなければいけないケース。

 コンシューマー向けの無償ツールでも上記のようなケースにまったく対応できないわけではないが、有償のビジネス向けツールでは上記のそれぞれのケースに特化して調整作業を大幅に効率化・自動化できる機能を備えている。

 また「空き日程を相手にどのように提示するのか?」という点においても、以下のように2通りの選択肢が考えられる。

  • 自分の全ての空き日程を候補日程として相手に提示
  • 自分の空き日程の中から、相手に示す候補日程を絞り込んで提示

 さらに、調整した会議を「どこでどのように行うか?」という点においても、幾つかの選択肢が考えられる。Web会議で実施するなら、ツールが自動的にWeb会議のURLを発行して相手に提示してくれれば便利だし、オフラインの会議の場合はグループウェアと連携して会議室を自動的に予約してくれればありがたい。

 無償ツールやグループウェア製品がこうしたきめ細かな機能を備えていることは少なく、「自分の日程だけ調整可能」「自身の空き日程すべてを提示するのみ」といったように、シンプルな機能しか実装されていない。業務のニーズに応じて、上記に挙げたようなさまざまな条件に対応しなければいけない場合は、ビジネス用途向けに開発されたツールの中から選ぶことになる。

どのような部門が導入するのか?

 日程調整は多くの人が日々行っている作業だが、特にどのような企業、部門が導入の効果を得やすいのだろうか。小俣氏によれば、日程調整作業の頻度が1カ月に5回以下しかないような人は、業務負荷が高くなく、ダブルブッキングがほぼ発生しないため、ツールを使うメリットはあまり多くないという。一方、日程調整の頻度が1カ月に40〜50回以上に及ぶ人は、明らかに業務効率化のメリットがあるし、1カ月に200〜300回も日程調整を行わなくてはならない場合はツールの有無が生産性を大きく左右することもあるそうだ。

 日程調整の頻度が多い業種としてまず真っ先に思い浮かぶのが、顧客と頻繁に商談や会議を行う営業担当者だ。多い人だと、自身の空き時間と顧客の空き時間をすり合わせて商談の日程を調整する作業が1カ月に50回近く発生することもあり、ツールによってこの作業を効率化できるメリットは大きい。

 それ以上に導入効果が大きいのが、「自分以外の人の日程調整を行う」必要がある業種だ。企業の採用担当者は、採用面接の日程調整作業が日々の業務の中で大きなウェイトを占めており、特に新卒採用のシーズンには学生の空き日程と面接官の空き日程のすり合わせだけでかなりの工数を割かれることになる。

 また電話やメール、DM、Web広告、イベントなどを通じて自社の潜在顧客(リード)にアプローチして、営業担当者との商談の場をセッティングするインサイドセールス部門の担当者にとっても、リードと営業担当者の面談の日程調整を効率化することがそのまま業務効率化に直結する。

 業界別では、人材紹介業界において特に日程調整作業の負荷が高いといえる。人材紹介業は求職者と求人企業の間の仲介を行うため、「求職者との面談」「求人企業との商談」「求職者と企業の間で行われる面接」など、日程調整の作業が極めて多く発生する。これらの業務をツールによって効率化することは、生産性向上とともに、他社に先駆けて候補者をいち早く企業に紹介することで売上向上につながる可能性もある。

取材の日程調整に使ってみた

 日程調整ツールの歴史は比較的浅く、国産のツールが一般的になったのはここ数年のことだ。小俣氏によれば、E4が自社製品を初めてリリースした2019年時点では、一部のユーザーが海外製のツールを利用する程度の浸透度合いだったという。その後、数年の間で一気に国産製品の数が増えた理由の一つとして、同氏は「コロナ禍の影響」を挙げる。

 「コロナ禍によってWeb会議の調整作業の負荷が増え、これをツールによって自動化したいというニーズが一気に高まりました。また企業のインサイドセールス部門では出社自粛によりテレアポ業務が行えなくなり、その代わりにWebやメールによる商談に活動の比重が傾く中で、やはりデジタルツールを使った日程調整のニーズが高まってきました」(小俣氏)

 本稿を制作するにあたり、実際にeeasyを使って取材日の日程調整を行ったが、面倒なやりとりが発生することなく最小限の手間と時間で早々と取材日程を確定できた。典型的な日程調整ツールの利用イメージは、次の通りだ。

 まず会議を主催する人、あるいは日程を調整する人は、調整相手が参照するWebページを作成する。このページ上で自身の予定が空いている日程を公開し、そのURLを相手にメールなどで送信する。この際、ツールが「Microsoft Outlook」(以下、Outlook)や「Googleカレンダー」などと連携できていれば、自動的に自身の空き日程がツール上で表示される。

 URLを受け取った側がこのページを開き、提示された日程の中から自身の都合とマッチするものを選べば自動的に候補日程が確定し、その結果はOutlookやGoogleカレンダーなどにも反映される。もし調整中に別の予定が入り、候補日の幾つかの日程が埋まってしまったとしても、Webページ上に提示される候補日の中からその日程が自動的に削除されるため、相手と再調整する必要もなければ、ダブルブッキングが発生する恐れもなくなる

図1 URL受信側の操作画面イメージ。送信者の空き時間(黄色い部分)から都合の良い時間を選択する。

工数が10分の1以下になることも

 このような一連の仕組みが大きな効果を発揮するのは、やはり大量の日程調整作業を日々行わなければいけない場面だ。

 インサイドセールス部門においてリードと営業担当者との間で行われる商談の日程調整を行う場合、複数人いる営業担当者の空き日程を提示するWebページをあらかじめ作成し、そのURLをメールに記載して顧客リストのメールアドレス宛に一斉に配信すれば、それに反応した相手との商談の日程調整はほぼ自動的に行われる。その際、日程の調整がつく担当者に案件を自動的に割り振る機能を備えたツールを使えば、営業担当者に対する商談のアサインまで自動化できる。

 こうした作業を手作業で行うとなると、相手と日程をすり合わせるメールを何度かやりとりしなければならず、それぞれの相手ごとに少なく見積もっても10分から20分ほどの時間を費やしてしまう。しかし、日程調整ツールを使えば初めに20分ほどかけてWebページを作成してそのURLをメールで通知すれば、何人と日程調整しても、それ以上のメールのやりとりは発生しないため大幅な業務効率化が見込める。

 特定の相手に対して、絞り込んだ候補日を提示しながら日程を調整する場合も、調整途中に他の予定が割り込んで再調整を余儀なくされることがなく、一度WebページのURLを通知すればそれ以上のやりとりがほぼ不要になるため、やはり大幅な工数削減が期待できる。

 このように、日程を確定するまでの期間を短縮できれば、単に業務を効率化できるだけでなく、商談のスピードアップによって失注を防いだり、採用活動において優れた人材を他社に先駆けて採用できるようになる。特に人材紹介会社のような業態では日程調整のスピードアップがそのまま自社の売上向上に直結するだろう。

 「企業は一つの求人に対して複数の人材紹介会社に求職者の紹介を依頼しますから、人材紹介会社の立場から見れば、企業に紹介するタイミングが数日早まるだけでその案件を獲得できる可能性が大きく高まります。事実、弊社の顧客の大手人材紹介会社では、eeasyの導入担当者がその成果を高く評価されて社内表彰を受けています」(小俣氏)

セキュリティ対策や導入・運用コストも重要な選定ポイント

 自社に適した日程調整ツールを選ぶためには、まずは先に挙げたように「誰の日程を」「どの範囲で」「どのように」調整する必要があるのか、実際にツールの導入を検討している営業部門や人事部門などの担当者にヒアリングした上で、ニーズにマッチした機能を過不足なく備えた製品を選ぶ必要がある。

 小俣氏によれば、たとえ「企業向け」をうたっている製品でも、実際に現場の要望にきめ細かく応えられるものはかなり限られてくるという。

 「市場にはかなりの数の日程調整ツールが存在しますが、そのうち本格的なビジネス用途に耐えられるものは4つ程度しかありません。自社の用途に本当に応えられる製品なのかどうか、機能や実績を慎重に見極めながら比較検討することをおすすめします」

 また、セキュリティ対策についても重点的にチェックしたい。日程調整ツールはそのほとんどがクラウドサービスとして提供されており、利用に当たって自社の社員情報や予定情報、場合によっては取引先に関する情報などを取り扱うことになるため、万が一にも情報漏えいがあってはならない。そこで小俣氏は「導入するIT製品に対して厳しいセキュリティ要件を設けている、東証プライム上場企業における採用実績が1つの目安になる」と語る。

 「数多くの上場企業が採用しているということは、厳しいセキュリティ審査を何度もくぐり抜けてきたということですから、ある程度は信用できると判断してもいいでしょう。シングルサインオンツールとの連携やIP制限、OAuth認証といった機能の有無も選定の目安になるかもしれません」(小俣氏)

 さらには、製品の「導入・利用コスト」も、導入検討においては重要な選定ポイントとなる。実際のところ、製品ごとに料金体系がかなり異なるため、自社の利用形態を想定してあらかじめコストシミュレーションを行っておくことが大事だ。

 「日程調整を実施するユーザーのみ課金される製品もあれば、ツールに登録する社員数をベースに料金が決まるものもあります。ある製品では標準装備されている機能が、別の製品ではオプション扱いになっていることもあります。自社の利用形態をあらかじめ正確に把握し、それに最も適した料金体系を持つ製品を選べばコストをかなり抑えることができるでしょう」(小俣氏)

 単純作業の効率化、自動化には多くの企業が取り組み始めている。日程調整が多数発生する部門を抱えている企業は導入を検討してみてはいかがだろうか。

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