メディア

アバターの肌の色はなぜ重要なのか? メタバースの「多様性」確保が急務なワケ

「メタバースでは開発の初期段階から多様性を優先することが重要だ」と専門家は語る。多様な肌の色や体形のアバターを用意するのには、幾つかの理由があるようだ。

» 2023年04月11日 07時00分 公開
[Anu PuvvadaHR Dive]
HR Dive

 メタバースの出現は、1990年代のインターネットの黎明(れいめい)期を思い起こさせる。新しく、想像を超える可能性に満ちた時代だった。多様性、公平性、包括性(DEI)はインターネットが登場したばかりの頃は注目されていなかったが、メタバースでは無視できないことを企業は認識する必要がある。

 社会の変化のペースが速いため、今すぐ行動を起こすべきだ。消費者から潜在的な従業員、投資家まで、誰もが注目している。実際、米国の消費者の59%は、今後5年間でメタバースから大きな影響を受けると予想している(注1)。

 なぜメタバースで多様性を確保することが急務なのか。3つのポイントで整理する。

メタバースは将来の収益源になる

 さまざまな企業がメタバースで新しい製品やビジネスモデル、エンターテインメントなどを作成している。企業は店舗やオンラインでの物理的な製品の販売に加え、それらを仮想化してメタバースで販売する。

 メタバースの多様性を考慮して設計している企業は現在、その収益創出の可能性を最大限活用できる立場にある。消費者は価値観を共有できる企業と取引をしたいと考えており、Z世代やミレニアル世代などの若い世代にとって、多様性は最優先事項に近い(注2)。若い世代が成熟するにつれて、これらの信念は購買にさらに大きな影響を与える可能性がある。

 「Fortnite」や「Roblox」「Decentraland」で育ったZ世代はメタバースに慣れ親しんでおり、多様性が確保された空間を好む。米国の消費者調査によると、Z世代にとってメタバースの多様性をサポートするための最も重要な要素は、「アバターをカスタマイズすること」「障害がある人々がアクセスできる環境を作ること」「メタバースのエクスペリエンスとキャラクターをデザインするために多様な才能を採用すること」だそうだ(注1)。

メタバースは未来のオフィスになる

 メタバースは、コロナ禍で浸透したテレワークの進化系になるかもしれない。オンボーディングやジョブトレーニング、バーチャルワークプレースでのコラボレーションの機会を提供する。私たちが調査した米国の消費者の89%は「メタバースがジョブトレーニングを含む学習機会を強化できる」と回答した(注1)。

 しかし、従業員体験は誰しも同じというわけではない。さまざまなバックグラウンドを持つ人々のニーズや好み、仕事の方法、そしてアイデンティティーを表現するためのアプローチを実装して、多様な労働力に対応する必要がある(注3)。多様性が確保できなければ、将来の優秀な人材が逃げてしまうかもしれない。メタバースの初期の開発段階から多様性を優先することが重要だ。

メタバースは投資家の注目の的

 投資家の動きは、メタバースが将来ビジネスに与える影響を示すバロメーターだ。KPMGのメタバース投資家調査で、投資家の熱意が明らかになった(注4)。調査回答者の90%は、メタバースはインターネットの次の段階であり、仕事の会議やトレーニング、学習にますます利用される未来を予測している。現在メタバースに関連する投資は、ベンチャーキャピタルと機関投資家の資産の45%を占めており、その割合は今後5年間で増加すると予想されている。

 強い関心にもかかわらず、投資家はメタバースについて懸念も抱いている。調査対象の投資家の73%が「DEIの問題がどのように対処されるか」について懸念を示した。投資家は「メタバースの多様性をサポートするための最も重要な要素は何か」という質問に対して、「手頃な価格のテクノロジーへのアクセス」「幅広いアイデンティティーを反映するようにアバターをカスタマイズする機能」「明文化されたルールと社会規範による適切なガバナンス」を挙げた。

 投資家はメタバースの多様性をサポートするための資金を投じている。Ready Player Meは2022年、5600万ドルの資金調達ラウンドを完了した(注5)。同社は相互運用可能なアバターを提供して、メタバースで一貫したアイデンティティーをユーザーに提供している。カスタマイズ可能なアバターへの注力の一環として、同社は現在開発中のアバターのパーソナライズ機能(性別が分からない体形や多様な体形、年齢のプリセットなど)についてユーザーからのフィードバックを募集している(注6)。

 金銭的コストも高く、失敗すれば評判が地に落ちかねないが、DEIの価値観は現代生活の構造に浸透しており、企業は何年にもわたってデジタル資産全体の過ちを正し、DEI戦略を改良してきた。

 メタバースは次世代のインターネットであり、まだ発展の最中だ。これからメタバースを開発する企業はアクセシビリティーと多様性の原則を後から追加するのではなく、最初から取り込むことが重要だ。

著者プロフィール

アヌ・プヴァダ

KPMG U.S. スタジオリーダー 兼 Metaverse COEリーダー

© Industry Dive. All rights reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。