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オフィス回帰、採用削減、DEI…… 2023年の人事トレンドを総まとめ

働き方や人材採用、育成など、コロナ禍で人事関連のトレンドが大きく移り変わった。2023年はどうなるのか。5つのトレンドを紹介する。

» 2023年02月27日 07時00分 公開
[Ryan GoldenHR Dive]
HR Dive

 2022年に人事が注目した話題は、CEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)などの経営幹部が注目した話題とほぼ重なっていた(注1)。パンデミックは人事の問題がビジネスのプロセスや目標にとっていかに重要かを示したといえる。人事が経営陣に注目された今、2023年の課題に対応するための役割を強調することが、人事部の責務となる。

 人事部のリーダーは、パンデミックが従業員の働き方に与える長期的な影響を見定めている最中だ(注2)。企業はリモートワークとハイブリッドワークをどのように使い分けていくのだろうか(注3)。

 本稿は、このような「柔軟な働き方」といった問題を含めた、2023年の人事トレンドを5つ紹介する。

1:柔軟な働き方――テレワークかオフィスか

 フレキシブルワーク(柔軟な働き方)は人事部が2023年に経営幹部と関わるための一つの機会だ。コーネル大学・労使関係学部のレベッカ・ケーホー准教授は、オフィス回帰において、多くの企業がその決定を各部署の管理職に押し付け、チームにとって最適な配置を管理職に決めさせていることに驚いたと述べる。

 今でもこのアプローチを取る人がいるかもしれないが、「多くの場合、管理職は自身がチームの柔軟性を調整することに不快感を抱いていた。また、彼らはその決定の重責を自分たちで負いたくない」とケーホー氏は指摘する。

 人事部は柔軟性の活用法が分からない管理職に対して、方針を決めるのに必要な情報や指導、サポートを提供するべきだ。Ally Financial(以下、Ally)の最高ダイバーシティー責任者であるレジー・ウィリス氏によると、同社の人事部門は、目的志向のリーダーシップ戦略に基づいて管理職を教育し、これを実現したという。

 「適応力が重要だ。人によってはオフィスに来ることが"はけ口"になっており、共同作業や頭を使う仕事には必要な機会だ。しかし、企業のコアバリューは社員が働く場所にかかわらず同じであるべきだ」(ウィリス氏)

 Monday.comの米国担当人事バイスプレジデントであるマイク・ラム氏は、在宅勤務を永久に認めるか、一部認めるか、全く認めないかにかかわらず、企業は明確な立場をとる必要があると述べている。

 ラム氏によると、Monday.comの人事部ではここ数年、コラボレーションに大きな関心を寄せている。同社は完全なリモートワークにシフトしたが、つい最近、北米の事業強化のためにオフィスをオープンした。その過程で、同社は対面でのコラボレーションと柔軟な働き方のバランスを取る必要があったという。

 「オフィスでの期待に応えるには、全体的な流れとして態度を明確にし、透明性を重視することだ」(ラム氏)

 方針を決めるだけでは終わらない。人事部は柔軟性やその他のトレンドによってもたらされる変化を管理するために、経営に近いポジションにいる必要があるとウィリス氏は述べる。Allyの人事リーダーは目的を持って行動すること、自己を表現することの意味を考え、経営陣を支援することを目指しているという。

 人事部は従業員と信頼関係を築き、仕事がうまくいっていることを確認し、同時に従業員との間に安全策を講じることが重要だとウィリス氏は言う(注4)。

 「環境の中でチームがどのように関わっているのか、どのように会話の場を提供し、同じレベルで仕事ができているのかを意識する必要がある」(ウィリス氏)

2:人事を経営幹部のパートナーに

 「人事部は企業の方向性に根本的な影響を与えるため、経営陣のパートナーになるべきだ。同時に、人事部はビジネスのニーズを理解する必要がある」(ケーホー氏)

 ケーホー氏によれば、コーネル大学の修士課程で教える中ではこのような会話が中心だったという。

 それは経営者にとっても同じだ。ウィリス氏はHR Diveのインタビューで、過去数年間、経営者やリーダーとの対話が同氏の仕事の中核を成してきたと語っている。

 「多くの人事リーダーにとって、『(従業員に対して)どのような(人事制度に関する)ガイダンスを提供するか』が課題になる。それは100万ドルの質問(正解すれば100万ドルの賞金がもらえるほど難しい質問)だ」(ウィリス氏)

 その仕事は、会社の優先順位を従業員に伝えることでもある。この仕事は常に重要だが、複数の業界の労働者が声を上げたときに特に重要視される(注5)。2022年には賃上げや休暇手当、柔軟性、その他の問題についての世論が高まり、ケーホー氏はこれらの傾向の多くが今後も続くと予想している。

 「各企業はこれらのトレンドにどのように対処するかを決定するべきだ。人事部の観点から、さまざまな問題に対して企業内の人事部の役割をより積極的に確立する必要がある」(ウィリス氏)

3:人材採用方針の見直し

 米国では数カ月にわたって経済見通しが悪化し、2023年初頭には企業のレイオフのニュースがヘッドラインを大きく飾った(注6)。MercerがCEOとCFOを対象に行った調査では、熟練した人材へのニーズは依然として高いにもかかわらず、多くの企業が採用予算を削減していることが明らかになり、不透明感を増している(注7)。

 このような状況下では、人事部は人材採用の目的に再び焦点を当てる必要がある。ウィリス氏は、Allyが社外からの採用を縮小していく中でこの点を重要視してきたという。「従業員や人事リーダーに対して、思慮深さを浸透させるために何ができるか。人間的なリーダーであるとはどういうことか。共感するとはどういうことか(が重要だ)」と同氏は語る。

 これらの問いに答えるのは簡単ではないが、社会的、経済的問題が職場に影響を及ぼす中では心に留めておくことが重要だとウィリス氏は言う。雇用主は目的意識とコミュニティーの中で従業員をどのように団結させるかを考えるべきだと同氏は付け加える。

 ケーホー氏は、企業が外部の問題や企業全体の目標に対してどのようにアプローチするかという点で、「目的」が人材を引きつける重要な要素になると述べる。特に、従業員が仕事を通じてどのような価値を生み出しているかを明確に伝えることが重要だと同氏は言う。

 「従業員が日々の仕事をする上で何かをつかみ、価値を見いだす」(ケーホー氏)

 従業員の目的意識は他の側面からも高められる。ウィリス氏は、Allyの年次株式付与プログラムは従業員の成功と企業の成功を一致させるのに役立つ施策だと語った。

 「これは、自分たちも責任を負っているという考え方を浸透させるものだ。私たちは皆、従業員としての行動や配慮によって、株価に影響を与える能力を持っているのだ」(ウィリス氏)

4:社内の人材活用推進

 採用活動を拡大できない場合、多くの企業は社内の人材で何ができるかを見直す必要があるとケーホー氏は言う。その際、雇用主は従業員一人一人のキャリアを再確認することになるだろう。

 人事担当者は、社内のモビリティプランを自分たちだけで構築する必要はない。むしろ、現場のリーダーと協力して、短期的、長期的なニーズと、そのニーズが従業員自身のキャリア目標やスキルセットと合致しているかどうかを判断すればよい。

 また、従業員を今とは別の役割や領域で働けるように育成できるかどうかを検討することも、人事の助けになる可能性がある(注8)。これにより、キャリアを次のステップに進める準備ができていない従業員が、新しい方法で貢献できるスキルや資格を身に付けられる。また、ジョブシャドーイング(短期間の職業体験)のようなアプローチも活用できるだろう(注9)。

 現場の管理職はこういった成長を促進するためのリソースを持っていない可能性があり、人事チームがトレーニングやガイド、リアルタイムなサポートを提供する必要があるとケーホー氏は述べる。

 社内のパイプラインのほかに、雇用主はアルムナイ(退職者)ネットワーク(注10)やサプライヤーなどの顧客企業を活用して、潜在的な人材を見つけるのもよいだろう。「信頼できるパートナーから採用することで、何を得られるかが分かる。外部のパートナーとの信頼関係を強化する基礎にもなる」とケーホー氏は述べる。

5:DEIへの対応

 近年、DEI(多様性・公平性・包括性)が注目されるようになったとはいえ、進歩が鈍化することへの懸念は根強く残っている。Glassdoorが2022年に実施した調査では、企業のDEI目標の達成状況は2022年の第3四半期には41%だった(注11)。

 ウィリス氏はこうした懸念を肌で感じているという。しかし、トップリーダーのコミットメントは助けになるし、人事担当者自身がアプローチを見直すことも有効だろう。

 「なぜこの仕事(DEI)をするのか、よく考えてみるべきだ。現在の状態が成功への道を歩んでいるのか、そうでないなら、その方向を変えるために何ができるのか、企業に問いかけてみるべきだ」(ウィリス氏)

 経営陣はビジネス上の意思決定を行い、自らそれを掌握するが、人事にもその意思決定を形成する力があるとラム氏は述べる。

 「私たちはようやく議論に参加できるようになった。しかしその立場はある意味で進化している。パンデミックの初期に人事部のリーダーに課された価値は、この役割がいかに重要であるかを人々に認識させた」(ラム氏)

 人事部門は、特にDEIのような分野で、以前に述べた目標に対して自分自身と企業が責任を果たす必要があるとウィリス氏は述べる。雇用主が慈善事業に提供した資金の額や、外部のパートナーとのつながりの数といった定性的な成果は、そのための一つの方法だ。

 「最後まで諦めてはいけない。自分がやると言ったことをきちんと測って採点するべきだ」(ウィリス氏)

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