企業における国税関係帳簿や取引書類の取り扱い状況、ペーパーレス化の状況について深堀する。
キーマンズネットは、2023年4月21日〜5月12日にわたり「改正電子帳簿保存法への対応」に関するアンケートを実施した。「結局、紙で保存するのか? 猶予措置も盛り込まれた改正電帳法への温度感」では、企業の改正電帳法への対応状況や課題について紹介した。
今回は、本編で紹介しきれなかった企業における国税関係帳簿や取引書類の取り扱い状況や、ペーパーレス化の状況について深堀する。
電帳法は「紙をスキャンしてデータで保存すること」や「電子取引情報を電子データのまま保存すること」に関する要件を明記したものだ。電帳法の対象となる書類は、国税関係帳簿、取引関係書類、電子取引情報などに分かれていて、それぞれ電子での保存要件が定められていて、保存先やペーパーレス化の状況によって改正対応の難易度も変わってくるだろう。
企業では、各帳票類をどのようなツールで扱っているのか。その状況を探ったところ、決算や国税に係る書類がセキュアとはいえない環境にあること、ペーパーレス化が進みにくい書類があることなどが見えてきた。
まず、最もペーパーレス化が進んでいたのは「自社が発行する取引関連書類(見積書や契約書など)」だ。29.0%が専用システム、27.3%がオンプレミスのファイルサーバ、22.2%がクラウドストレージで扱っていた。いずれの項目も22年調査より割合が上がっている。
自社発行の帳票は、電子化において社外との調整が電子化の障壁になるが、結果として最もペーパーレス化が進んでいた。「電子化していない」(18.2%)と回答した割合も22年(18.2%)よりわずかだが少ない。
次にペーパーレス化が進むのが 「取引先から受領した取引関連書類」だ。71.6%が専用システムやオンプレ、クラウドストレージで保存しているとしていて、これは22年の59%から12.6ポイント増えたことになる。
さらに、「EDIや電子契約SaaS、メールなどで取引したデータ」も、やはり専用システム(23.3%)やオンプレミスのファイルサーバ(22.7%)、クラウドストレージ(23.3%)を使っている割合が高い。一方で、電子化の状況は22年(64%)と比較してほとんど変化がなく、電子化が進んでいるとはいいがたい状況だ。改正電簿法では、「電子取引データを電子データのまま保存すること」の義務化が話題になったが、その対応の難しさから23年12月という期限付きで宥恕期間が設けられた。さらに、2023年4月施行の令和5年度税制改正大綱では電帳法が求めるやり方で保存できなくても「相当の理由」があれば「猶予」するという内容が記されるなど、猶予措置が盛り込まれている。そうした情勢の中で、対応を進めていない企業もあると想像できる。
一方、「決算関連書類(賃借対照表や損益計算書など)」や「国税関係帳簿(仕訳帳や総勘定元帳など)」はどのようなツールで扱っているか「分からない」という回答が多かった。これらは対応する部門が限定されるためだと考えられる。気になる点は、メールボックスやダウンロードフォルダといったローカル環境にデータが残っている点だ。特に、決算書類は7.4%、国税関係帳簿は8%がデータをPCのローカルストレージに保存している。これらの重要データが従業員のPCから外部に漏えいするリスクもあるため、セキュアな環境での管理が求められる。
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