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今さら「Windows 3.1」に“新たな”16ビットアプリが登場だって?:717th Lap

懐かしのOS「Windows 3.1」。さかのぼること約30年前にリリースされ、2001年にサポート終了を迎えた。だが、今になってWindows 3.1の“新たな”アプリがリリースされたという。

» 2023年07月07日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 「Windows 3.1」がリリースされたのは1992年4月のこと。日本語版は翌1993年5月12日にNEC版が、同月18日にMicrosoft版がリリースされた。Windows 3.1は大成功を収め、日本国内で400万本、世界では1億本も売り上げたという。現在に至るまでのWindows OSの礎を築いた、Microsoftのレジェンド級のOSだ。

 30年の時を超え、今になってWindows 3.1に新たな16ビットアプリが登場したという。それって、一体どういうこと?

 そのアプリとは、Windows 3.1で動く「ChatGPT」だ。2023年6月23日前後、Tech系ニュースサイトはWindows 3.1対応のChatGPTアプリ「WinGPT」のリリースを報じたことで、PC愛好家たちはザワついた。この件を報じたTech系サイトの一つ『Ars Technica』の記事によると、WinGPTの開発者は『Dialup.net』の運営者だという。

 WinGPTはC言語でコーディングされたもので、APIは「Windows API」が使われている。ChatGPTのAIサーバとの通信に必要な暗号化プロトコル「TLS」は、Windows 3.1向けの16ビット版TLS 1.3を開発者が自作したことでアクティブな接続を可能にした。

 簡単に言うと、ChatGPTはサーバで処理した結果を返す仕組みだ。ローカル側ではただ質問を送信して受け取った返答を表示すればいいだけなので、Windows 3.1でも工夫すれば生成AIを利用することは十分に可能というわけだ。ちなみに、自作のTLS 1.3プロトコルは作者自身が「安全性と信頼性が不十分であり、保証はしない」とセキュリティ面が十分でないことを認識している。

 面白いことに、開発者はUIをコーディングする時にChatGPTに相談しながら仕様を固めたという。最初はWindows 3.1以上の環境で動作するライブラリーを勧めてきたが、「それは使えない」と指摘すると、今度は存在しない架空のライブラリーを紹介してきたそうだ。結局、作者が既存のコードに手を加えることで解決したのだが、他にもWindows 3.1で動作させるために必要なメモリ容量を抑えるなど、苦労を重ねたようだ。開発エピソードはDialup.netで公開されているので、興味がある人は読んでみてほしい。

 Dialup.netにはWinGPTが動作している様子が掲載されている。公開されているスクリーンショットを見ると「現在の米国の大統領は誰?」との質問に対して、ChatGPTは「ジョージ・H・W・ブッシュ」と返した。Windows 3.1がリリースされた当時の大統領だ。WinGPTを利用すると、AIはWindows 3.1が現役バリバリだった1990年初頭に合わせた回答を返すようだ。ローカル環境のOSをChatGPTが読み取っているのか、もしくは単にそのような仕様なのかは不明だが、いずれにしても面白い趣向だ。

 WinGPTは16ビットまたは32ビットバージョンのWindows 3.1以降のWindows OSで動作し、インターネット通信には「Winsock」が必要だ。なお、64ビットのWindows OSでは動作しない。また、OpenAIのサーバと通信するに当たって、OpenAI APIキーも必要となる。環境さえ整えば試してみたいところだ。あえてWindows 3.1でChatGPTと対話してみるのもなかなか楽しそうだ。


上司X

上司X: MicrosoftのWindows 3.1で利用できるChatGPTアプリが登場、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 今ごろ、あえてWindows 3.1対応のアプリを開発って、どんな意味があるのでしょう。そもそもWindows 3.1を触った経験のある人の方が少ないのでは……?


上司X

上司X: まあ、そんなに深く考えるなよ。Windows 3.1で動かしてみたかったんだろうきっと。


ブラックピット

ブラックピット: まあ、そうですね。作ろうと思えば作れることを示せただけでも立派でしょうね


上司X

上司X: そうそう。ChatGPTは意外にローカル側の処理は重くないんだよ。AIサーバにお任せって感じでね。でも、回答まで古い時代に合わせるのは面白いな。意図的なのか、そうじゃないのかがわ分からんが。


ブラックピット

ブラックピット: しかし、なんですねえ、「生成AIが人間の仕事を奪う」なんて悲観的なことを言う人もいますけど、こうして新しいアプリを生み出す人もいるわけですよ。


上司X

上司X: それを考えれば、単純に「仕事がなくなる」なんてことは言い切れないわな。


ブラックピット

ブラックピット: だいたいですね、ChatGPTって割と独自創作っぽい回答をすることもありますからね。事実確認をする必要がある限りは、全幅の信頼を置くことはできませんよね。


上司X

上司X: ということで、まだまだ話題が尽きないChatGPTだが、こうした技術開発にチャレンジしようとする人もいるわけだ。まあ、Windows 3.1版ChatGPTが新しい技術かどうかは、議論の余地があるかもしれないけどね。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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