IPAの高度試験の一つとされる「情報処理安全確保支援士試験」(通称:セキスペ)。IT記者が感じた難易度や受験に当たって取り組んだ試験対策、勉強時間、2023年10月の改訂内容などを紹介する。
「情報処理安全確保支援士」とはサイバーセキュリティに関する国家資格で、「情報処理安全確保支援士試験」に合格後、所定の登録手続きを行うことで保持できる。情報処理安全確保支援士試験は情報処理推進機構(IPA)が実施する試験の中で「高度試験」の一つとされ、同団体はセキュリティエンジニアやセキュリティコンサルタントを目指す人に最適だとする。
筆者の場合は特にそういった職種に就いているわけではないが、「今後もこの業界にいるなら取っておいて損はないかな」という軽い気持ちで受験してみた(2021年に値上げされたものの、他の民間資格に比べて受験料が安いのもありがたい)。
筆者は上述のように軽い気持ちで申し込んでしまったため、想定よりも苦労したが、2023年4月試験で何とか無事合格できた。以下では、読んだ参考書や過去問演習の方法、試験前の過ごし方などの筆者が行った試験対策や、筆者が感じた受験の難易度などを紹介する。
筆者の場合、2022年に応用情報技術者試験に合格しており午前1試験が免除されたため、午前2試験の対策から始めた。午前1試験を受験する場合は応用情報技術者試験の参考書などで対策しておく必要がある。今回は試験日の約2カ月前から参考書を読み込んで知識をおさらいした後、約1カ月前から過去問題集にひたすら取り組む、という流れで勉強した。
参考書は技術評論社の『情報処理安全確保支援士 合格教本』を選んだ。同試験向けの参考書にはかなりの種類があるが、同書を選んだのは午前・午後試験の対策が1冊にまとまっており、図が多く読みやすそうな印象を受けたためだ。同書は「知識のまとめ」と「長文問題演習」の2部構成になっており、「知識のまとめ」を読み込むことで午前・午後試験で必要な知識を学習できる。
「知識のまとめ」は応用情報技術者試験の範囲と重なる部分も多かったため、既に身に付いていると感じた部分はざっくり読み、暗号や認証、ネットワークに関してより深い知識が求められる部分は時間をかけて読んだ。「知識のまとめ」だけでも600ページ程度あるが、図表が多くて分かりやすく、読むのに苦労することはなかった。ただ、紙の本だとかなり分厚いので電子書籍版をお薦めする。ちなみに、筆者は週末にある程度まとめて読むスタイルだったので、全て目を通すのには3週間〜1カ月程度かかってしまった。勉強時間を確保しにくい人は、基礎知識の習得だけでも1カ月程度かかると思った方が良いかもしれない。
参考書を読んだ後、試験までの1カ月間はひたすら過去問演習に取り組んだ。IPAのWebサイトでも過去問を公開しているが、筆者はスマートフォンなどでも気軽に取り組みたかったため、スタディワークスが運営する「情報処理安全確保支援士過去問道場」を利用した。
同Webサイトでは、平成21年以降の午前2試験の過去問に1問1答で取り組める。試験回や分野を指定したり、全問題からランダムで出題される模擬試験形式で取り組んだりといった設定も可能だ。筆者は模擬試験形式で計8回分解いた。情報処理安全確保支援士試験の午前2試験の出題数は25問なので、電車移動などのスキマ時間で取り組めた。
過去問道場にユーザー登録をすることで自分の学習履歴を保存できるため、模擬試験を1周解くごとに、間違えた問題を復習した。復習を挟むことで回を重ねるごとに少しずつ点数が上がっていき、モチベーションも維持しやすかった。また試験当日は電車の中や会場で、それまでに間違えた問題の総復習をした。
過去問道場には午後問題が掲載されていないため、午後問題対策としては『情報処理安全確保支援士 合格教本』の後半「長文問題演習」に取り組んだ。午後問題の頻出分野がまとめられており、テーマ別の問題演習もできるためとても助かった。求められる知識は午前2試験と共通しているため、おさらいも兼ねて試験前の1〜2週間に集中的に取り組むのがよいだろう。
情報処理安全確保支援士試験の難易度について、インターネット上には「かなり難しい」「高度試験の中では簡単」などさまざまな意見があるようだ。筆者が実際に受験した印象は、「午前試験は過去問をある程度解いていけば問題ないが、午後試験は難しい」だ。
午前試験は過去問とほぼ同じ問題が出題されるケースも多く、上述の過去問道場などで対策していけば特に問題はないと思われる。しかし、午後試験は問題文も長く、午前問題よりもセキュリティやネットワークに関する本質的な理解や国語力が求められた印象だ。知識のおさらいさえしておけば午後問題の対策の必要性を感じない人もいるかもしれないが、どの受験者も一度は午後問題の形式に目を通したり、過去問演習をしたりといった対策をしておくことをお勧めする。
最後に、2023年10月からの同試験の形式改訂について触れておきたい。2023年10月の試験からは以下の形式で実施される。特に試験時間の変更に注目してほしい。
実施時期:筆記により春期(4月)、秋期(10月)の年2回
試験時間、形式:
午前1:9:30〜10:20(50分)、多肢選択式(四肢択一)、30問出題・30問解答
午前2:10:50〜11:30(40分)、多肢選択式(四肢択一)、25問出題・25問解答
午後:12:30〜15:00(150分)、記述式、4問出題・2問解答
※2023年4月の試験までは午後1(90分)と午後2(120分)に分かれていた。IPAによると、出題構成は変更されるが試験で問う知識・技能の範囲は変わらない。
筆者が受験した際は午後1試験と午後2試験があり、かなりの長丁場だったが、2023年10月からは午後試験が1つに統合され、より受験しやすくなった。IPAによると試験で問われる知識の範囲は変わらないようだが、これまで受験を渋っていた人もこれを機に検討してほしい。
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