メディア

経験豊富な人材が欲しいのにシニアを採用しない企業の根本的な勘違い

多くの企業が経験豊富な人材を求めているにもかかわらず、なぜシニア層を採用しないのか。そこには、企業がシニア層に対して抱く根本的な“勘違い”があるようだ。

» 2023年08月14日 07時00分 公開
[Nancy HammervikHR Dive]
HR Dive

 今日の競争の激しいビジネス環境において、企業は優秀な人材を引き寄せようと努めている。特に、高度な専門知識が必要で、かつ難しい人員配置が求められるポジションにおいては、適正のある人材を獲得し維持する必要がある。しかし、企業はしばしば、高いポテンシャルを秘めた一部の労働力を見落としている。それは経験豊富なシニア層だ。

 「高齢」という言葉は「経験豊富」と同義だ。豊富な知識と経験を有するシニア層は、若い従業員と協力し、古いものと新しいものをシームレスに結び付ける重要な役割を果たす。

「シニア層は○○」という勘違い

 経験豊富な従業員が求められているにもかかわらず、企業はなぜシニア層を採用しないのだろうか。そこには、企業がシニア層に対して抱く根本的な“勘違い”があった。

本稿は、非営利のIT業界団体「CompTIA」の最高ソリューション責任者ナンシー・ハマーヴィック氏が執筆した(注1)(注2)。

 年齢の多様性がビジネス環境にもたらす大きな価値を認識することは非常に重要だ。高齢の従業員は、既存のシステムや慣行が、新しい技術や方法論とどのように関連しているかを深く理解している。伝統的なアプローチと革新的なアプローチのギャップを埋めることで、彼らは異なる要素がどのように相互作用するかについて、貴重な洞察を提供する。そして、それは問題解決と意思決定における包括的な視点の確保につながる。

 ある研究によると、高齢の従業員は自らのキャリアを積極的に維持する意欲を持っている。福利厚生に関するサービスを提供するVoya Financialの調査によって、一度は退職した50歳以上の人々の多くが再び職場に復帰し、「雇用延長者」と呼ばれていることが明らかになった(注3)。この現象はしばしば「偉大なる再就職」と呼ばれ、パンデミックによって一時的に退職した従業員が再び仕事に復帰するものも含む。「貢献したい」「成長したい」「意義のある影響を与えたい」という欲求が、こうした人々にプロフェッショナルとしての旅を続けさせるのである。

 しかし、年齢差別は依然として職場に影を落とし、高齢の従業員の潜在能力を引き出す妨げとなっている。世界有数の高齢者団体であるAARPが実施した調査では、50歳以上の従業員の78%が「年齢差別を経験したり目撃したりした」と回答したという切実な実態が明らかになった(注4)。この差別は、「高齢の従業員はテクノロジーに疎い」というステレオタイプのものから、「新しいスキルの習得に関心がない」と決め付けるような無意識の偏見まで、さまざまな形で現れている。年齢による偏見は、労働力が若年層に偏っているテクノロジー業界において顕著だ。

 逆に、「デジタルネイティブ」と呼ばれる若年層が、「職場のテクノロジーに関する専門知識を持っている」とする偏見もしばしば存在する。職場で行われる議論には、世代間の違いが常に含まれることを認識すべきだ。賢明な組織はレッテルや偏見を乗り越えて、最も優れたチームを構築するために人材を採用、維持し、育成することに重点を置く。

 世界経済フォーラムは次のように指摘する。

 「他の世代の従業員と同様に、高齢の従業員も職の安定性や仕事と生活のバランス、帰属意識、そして、仕事を続けたいという欲求、再就職の機会を求めている」

 それぞれの世代が提供する独自のメリットを活用する企業は、優れた才能を見つけ、より強力で多様な職場を構築できる。職場において年齢の多様性を受け入れることは、組織の知識や経験、洞察力を高める。高齢の従業員と若い従業員のコラボレーションを促進させることで、企業は伝統的な知恵と革新的な思考を調和させられる。このような包括的なアプローチは、職場を豊かにし、全ての年齢層の個人が活躍できる活気に満ちたダイナミックな環境を育む。

© Industry Dive. All rights reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。