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満足度高い「Excel」を嫌う一部のユーザーは何が不満? 調査で分かった光と闇Excelの利用状況(2023年)/前編

ユーザーはExcelをどのように使い、どの程度満足しているのだろうか。キーマンズネットの読者調査結果で分かった、Excelの利用率や満足度、用途、ユーザーの不満点などを紹介する。

» 2023年09月07日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネットは「『Microsoft Excel』の利用状況に関する読者調査」(実施期間:2023年8月3日〜8月21日、回答件数:357件)を実施した。

 その結果、ほとんどの回答者(98%)が「Microsoft Excel」(以下、Excel)を利用していることが分かった。その利用満足度はどの程度で、どのような業務で使われているのだろうか。

満足度は驚異の9割

 Excelの利用満足度を聞いたところ、「とても満足」「まあ満足」と回答した人の割合は90%で、大半のユーザーが高い評価をしていることが分かった(図1)。業種別、従業員規模別のどのカテゴリーでも同様の傾向だ。

図1 Excelの利用満足度

 満足している理由としては「表作成や関数設定など操作に慣れていて使いやすいから」など、使いやすさや使い慣れている点を挙げる声が目立った。「高齢者の多い組織でも最低限のレベルなら利用できる人が多い」や「世界的に長期に渡ってデファクトスタンダードだから」のように、国籍や老若男女、経験有無を問わずとも利用できるよう、機能が洗練されている点も高く評価されているようだ。

残る1割のユーザーは何が不満なのか?

 一方、90%の満足度を誇るExcelにも課題はある。フリーコメントに寄せられた不満からは大きく2つの課題が浮き彫りになった。

 1つ目は「(サイズが)大きなファイルになるとすぐにフリーズしてしまう」や「データ量が多いと操作しにくい」に見られる”動作の重さ”だ。特に、マクロ利用時に動作が重くなることが多いようで「メモリ64GBのワークステーションなのに『応答がありません』と表示されたり、(動作が)もっさりする」との声もあった。加工と運用の繰り返しによりバックグラウンド処理にメモリを割かれ、データが増大化したりファイルが破損したりするなどのエラーが生じやすくなっている可能性がある。

 2つ目は“運用の複雑化”だ。「マクロ(VBA)がブラックボックス化しており修正できない」や「条件付き書式が増殖してメチャクチャになっている」に見られるように、さまざまな機能を組み合わせたファイルが長年、属人的に運用されていたことで複雑化しているケースも少なくない。

 その他にも、「他社のスプレッドシートとの互換性を高めて欲しい」や「関数をもう少し分かりやすくしてほしい」「アップデートすると下位互換がされない機能やマクロがあり困る」などさまざまな課題が寄せられた。

企業規模によって用途に違いあり

 利用しているExcelのバージョンを調査したところ、「Microsoft 365」(67.1%)が最多だった。2022年3月に実施した前回の調査と比較すると、Microsoft 365版が10ポイント増となり、SaaSのニーズが高まっている様子がうかがえた。特に1001人以上の大企業では8割がMicrosoft 365版を利用しており、企業規模が大きくなるにつれてSaaS利用割合が高まる傾向も見られた。

 次にExcelの用途を調査したところ「表計算、集計業務」(88.9%)や「資料作成」(75.4%)、「データ分析、レポーティング」(60.9%)、「帳票作成」(47.1%)といった用途が上位に挙がった(図2)。

 企業規模別では大企業でデータ分析やレポーティング、中小企業では見積りや名簿などの帳票作成に利用する傾向が高かった。自由度が高いExcelのレイアウトがあらゆる業務シーンに適合し、本来の用途(表計算)以外でも使われてきたことが利用率の高さにつながっているのだろう。

図2 Excelの用途(従業員規模別)

 Excelの利用に満足している理由として「大体の定型業務をVBAで作成できるから」や「データ処理のために関数やマクロ(VBA)でカスタマイズできる」といった声も寄せられており、カスタマイズ性にも優れていて、業務フローの自動化にも活用されている。実際、回答者の84%がマクロ(VBA)を利用したExcelファイルの使用経験があり、データ分析やレポーティング用途の多かった大企業では、9割近くで使用経験があった(図3)。

 マクロの用途としては「表計算、集計業務」(78.6%)と「データ分析、レポーティング」(57.5%)が中心で、具体例としては「測定データの自動収集」や「システム監視」「バッチファイルの生成、実行によるタスクの連結」が挙がった。他のOfficeツールとの連携によって、集計・分析以外の領域にも広範囲で業務を自動化できる可能性がある。活用には一定の知識を要するものの、Excelの業務活用範囲が一気に広がる機能であることは間違いない。

図3 マクロ(VBA)の用途(従業員規模別)

 複数の業務で広く利用されるツールだからこそ、業務によってはExcelの限界を感じてしまうユーザーもいるようだ。その結果、”脱Excel“に踏み切る企業も少なくない。後編ではExcelから他ツールへの移行状況について、調査結果を基に紹介していく。

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