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オフィス回帰時代にクラウド電話を導入する理由【実態調査】クラウド電話の利用状況(2023年)前編

テレワーク対応が一巡し、オフィス回帰の流れがある中で企業の電話環境はどのような状況なのだろうか。

» 2023年10月19日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 テレワーク対応やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進といったことを背景に、クラウドサービスの活用が進んでいる。近年注目度が増したツールの一つとして挙げられるのが「クラウド電話」だ。グローバルインフォメーションが2023年10月に発表した市場調査レポート(注)によると、クラウドPBXの世界市場は2023年に171億4000万米ドル、CAGR15.18%と大きく成長し、2030年には461億9000万米ドルにまで達する見込みだ。

 実際に企業ではどこまで活用が進んでいるのか。本稿は、クラウド電話の利用状況について、キーマンズネット読者を対象にしたアンケート「クラウド電話の利用に関するアンケート(2023年)」(実施期間:2023年9月21日〜10月13日、回答件数:252件)を基に、クラウド電話の企業利用率や利用範囲、満足度、トラブル事例などを紹介する。

クラウド電話の「全社利用」が急増中のワケ

 クラウド電話は、PBXをクラウドに設置することでスマートフォンなどからでも会社宛て(固定電話)の外線や内線を受電できる。その認知度を調査したところ「まあ理解している」(47.2%)が約半数で、「名前は聞いたことがある」(27.0%)、「詳しく理解している」(15.1%)が続いた(図1)。程度によらず「理解している」とした回答者は全体の62.3%を占め、2022年10月に実施した前回調査と比較して3.2ポイント増加した。

図1 クラウド電話についてどの程度知っているか

 次に、勤務先でのクラウド電話の導入状況を聞いた。

 利用率は「全社で利用している」(15.1%)と「一部の部門や拠点で利用している」(14.7%)を合わせて29.8%で、1年前の前回調査から2.6ポイント増加した(図2)。

図2 勤務先でクラウド電話を導入しているか

 従業員規模別に内訳を見ると、1001人以上の大企業帯においては約半数が利用していると回答し、直近1年では1001〜5000人の企業で利用率が14.8ポイントと増加した。特に「全社での利用」が17.7ポイント増加しており、電話環境の刷新を進めている様子が伺える。一方、101〜1000人の中堅企業帯では利用率が減少傾向にあり、2割弱の利用率だった。

 「クラウド電話を利用している」とした人に導入時期を聞いたところ、「2021年〜2022年頃」が4割と最も高く、その割合は1001人以上の大企業でさらに高い数字を示した(図3)。前回調査では「2019〜2020年頃」との回答が最多で、コロナ禍による出社制限への対応が主な目的だと予想できたが、今回はオフィス回帰の機運が高まる中で、ハイブリッドワークやPBX老朽化への対応など、複数の目的が絡んでいるのではないかと予想できる。

図3 クラウド電話の導入時期はいつごろか

クラウド電話の導入目的は?

 クラウド電話の導入目的を調査したところ、上位に「テレワーク対応のため」(53.3%)や「電話の取り次ぎコストを軽減するため」(38.7%)、「PBXの老朽化・サポート終了による切り替え対応のため」(28.0%)が続いた(図4)。コロナ禍の一時的なテレワーク対応だけでなく、PBXの刷新や他のコミュニケーションツールとの親和性を考慮して電話環境の刷新を進めている様子が見て取れる。

図4 勤務先ではなぜクラウド電話を導入したのか

 「クラウド電話で重宝されている機能」に関しては、前回調査と同様に「代表番号での発着信」(30.7%)や「保留転送機能」(28.0%)、「ダイヤルイン(ダイヤルインサービス)機能」(18.7%)が上位に上がったが、「メールやチャットとの連携」(32.0%)や「管理ポータル機能」(16.0%)といった”使い勝手”に直結する機能にも票が集まった(図5)。チャットツールと連携させることで受電を確認できるようになるため、電話業務がより便利になる。さらに管理ポータルを利用すれば、通話ログやチャットログ、ユーザーアカウントの管理ができる他、通話データやチャットデータの分析も可能になる。こうした機能が重視されていることからも、コロナ渦におけるリモートワークでの基本的な利用を超えたニーズがあると想像できる。

図5 クラウド電話で重宝している機能はどれか

クラウド電話の使い勝手には”不満”が残る結果に

 最後に、利用中のクラウド電話の満足度を調査したところ「とても満足」(12.0%)と「満足」(68.0%)を合わせた企業が80.0%で、前回調査からも15.0ポイント増加した(図6)。

図6 利用しているクラウド電話の満足度

 「満足」とした回答者からは「PCさえあれば通話可能なところ」や「仕事をする場所に限らず着信できること」など「固定電話機の需要低下に伴うコスト削減や運用負荷の削減などに満足している」との声が挙がった。他にも「社内と社外でTeamsと電話を使い分けていたが、Teamsに統一できることにメリットを感じた」や「チャットで共有した情報を見ながら会話できるため業務効率が向上した」「インターネット接続さえすれば海外でもそのまま使える」といったポジティブな意見が寄せられた。

 一方「不満」とした方の理由は、主に”音声品質”と”使い勝手”の2点に集中していた。まず前者については「回線が込み合って通信速度が低下している時は満足に会話が聞こえず4G回線を使用した」や「機能や利便性はとても高いが、固定電話に比べると通話品質が低く障害発生頻度が多い」「従来回線とは違い、安定しない事があったり同時発着信でエラーになったりすることがある」が挙がり、通話品質がインターネット環境に左右される点に頭を抱える企業も少なくないようだ。

 後者の”使い勝手”の悪さについては「電話機は携帯電話を使用しているが内線番号を使いまわしにくい」や「操作ミスでかかってきた電話を切ってしまうことがある」といった利用ユーザーの使用感に対する不満に加え、「スマートフォンアプリの更新後に受電できなくなることがあり、それに気が付かず誰も電話に出なかった事があった」や「頻度は少ないがサービス提供会社の障害発生でサービスを利用ができなくなった」「0ABJ番号を移設する際の手続きが多く、また申請から移設までに時間がかかる」など、サービス提供側のエラーを指摘する声もあった。

 他にも「オフィスのネットワークがトラブルで使用できなくなった時に連絡手段がなくなった」や「1外線の着電内線に誰もログインしていないため受電できなかった」「システムの障害で受電できず、通常業務に大きな影響が発生し顧客からのクレームにつながった」など、自社由来のシステムやネットワーク障害、運用不備によるトラブル事例も見られ、まだまだ改善の余地のあるサービスであることも見て取れた。

 以上、前編ではクラウド電話の利用企業の声を中心に利用実態を紹介した。後編では利用予定や未利用企業を対象に、企業における電話環境の課題を考察する。

注:グローバルインフォメーション「クラウドPBX市場:サービス別、組織規模別、エンドユーザー別 2023〜2030年の世界予測」(2023年10月)

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