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「Zoom疲れは気のせい」はウソだった?:738th Lap

Web会議をしていると妙な疲れを感じる。いわゆる「Zoom疲れ」を科学的に分析した結果……。

» 2023年12月08日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 ここ3年ほどでWeb会議が浸透し、「Zoom疲れ」というワードを聞くようになった。この言葉を聞いて「あるある」とうなずく人もいるのではないだろうか。

 「気のせいじゃないの?」とも思いたくなるが、ある研究チームが「Zoom疲れ」を科学的に分析したところ、実はそうでもないようだ。

 1日にWeb会議を何件もこなしていると、対面会議とは異なる妙な「疲れ」を感じる人も少なくないだろう。打ち合わせ場所や会議室に足を運んだり、会議中に大声を上げたり大げさなリアクションを取ったりするわけでもないのにだ。運動量は在宅作業とそう大きく変わらないのに「なんだか疲れる」と感じるのはなぜだろうか。

 この妙な疲れを「Zoom疲れ」と呼ぶのだそうだ。「Microsoft Teams」を使っていた場合でもそう呼ばれる。パンデミックさなかの2020年4月に、ビジネス情報サイト「Axios」の記事でZoom疲れに関する記事が掲載された。その中では「Zoomの使い過ぎのため」「Web会議システム自体がストレスになるため」などがZoom疲れの理由として挙げられた。

 これは、あくまで記事を執筆したスコット・ローゼンバーグ氏によるZoomの使用状況を踏まえた推測であり、科学的な根拠があるわけではない。記事を読んでも「そうかもね」程度の感想を抱く人が多いだろう。

 ところが、このZoom疲れが科学的に分析され、実際に存在することが明らかになった。あのIEEEが運営するWebメディア「IEEE Spectrum」が2023年11月23日にこの件に関する記事を掲載した。記事では「Scientific Reports」に発表された論文が引用された。

 オーストリアのアッパーオーストリア応用科学大学とヨハネス・ケプラー大学の研究チームがZoom疲れに関する論文を発表し、その存在を証明した。研究チームはユーザーからの報告を受け、Zoom疲れの存在を知ったという。そこで科学的根拠をつかむために、研究チームはユーザーの脳波検査と心電図検査を敢行した。

 大学在学中の35人の学生を被験者とし、Web会議システムを使って講義を受講している最中に脳波検査と心電図検査を行なった。その結果、講義が始まって約50分が経過すると、対面での講義と比べて疲労や悲しみ、眠気、否定的な感情などの兆候が脳波および心電図に表れ、被験者たちの注意力や集中力が低下する様子が観察されたという。

 研究チームはこうした科学的なデータを取得した他、被験者たちに主観的な感想を尋ねるアンケートを実施した。すると、多くの被験者はオンライン授業を受けたことで疲労や眠気、ウンザリ感を感じ、活気や幸福感、活動性が低下したと自身の感想を述べた。つまり、科学的根拠とユーザーの報告に一致が見られたということになる。

 研究チームはこれらの結果とは別に対面授業を受けた被験者の脳波検査と心電図検査を計測し、同様のアンケートを実施した。これらの結果から総合的に判断して「Zoom疲れは存在する」「Web会議システムの仕様は特有の疲労を引き起こす」と結論付けた。

 一方で、研究チームは「Web会議システムの利用を控えることは非現実的だ」とも述べる。彼らは、Web会議システムは対面コミュニケーションの代替ではなく補完的ツールとして利用することを推奨する。そして、Web会議に参加するときは30分ごとに休憩することが望ましいとする。オンライン会議に限らず、電子的なコミュニケーションにはストレスなどの影響が多数あると主張し、さらに広範な調査が必要があるとしている。

 コロナ禍以降、デジタル生活の中でストレスを感じることは少なくない。何か良い解決方法が発見されることに期待したいものだ。


上司X

上司X: 「Zoom疲れ」と言われてきたけど、本当に心身が疲れることが研究で分かった、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 疲れます? Zoomで会議してて。


上司X

上司X: 疲れるだろう。Web会議の予定が入っている日は朝から憂鬱だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 僕はリアル会議の方が面倒くさいですけどね。


上司X

上司X: 面倒だとかそういう話じゃないんだよ。Web会議の後はその内容にかかわらず疲れるの。身体も精神も。キミは感じない?


ブラックピット

ブラックピット: そういう「疲れ」っていうのは、あんまり感じたことがないかもですね。


上司X

上司X: ふーん、そうか。意外に鈍感なんだな。


ブラックピット

ブラックピット: 鈍感て……。でも、実際のところ科学的な分析で実際にZoom疲れが存在することが明らかになったワケですからね。僕は鈍感なのかもしれません。でも、今回の被験者って学生ですよね。オンライン授業とビジネスではまた違うような気もしますけど。


上司X

上司X: 大学の講義だと一方的に教員が話すケースの方が多いだろうから、確かにそれは一理あるかもしれん。しかし、俺は実際に疲れるのだよ。キミみたいな部下とこうしょっちゅうオンライン会議してるとねえ……。誰か会議中の俺の脳波や心電図も計測してくれないかね。だいぶ顕著な結果がでると思うんだが。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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