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オフライン回帰に失敗した企業が離職率を上げずに出社を促す方法

Global Paymentsはオフライン回帰で多くの従業員から不満が噴出したが、出社を促しつつ離職率を下げることに成功した。その取り組みとは。

» 2024年02月08日 07時00分 公開
[Ryan GoldenHR Dive]
HR Dive

 金融テクノロジー企業であるGlobal Paymentsは、オフライン回帰で多くの従業員から不満が噴出した。実際に、従業員の離職理由トップ10のうち「柔軟性」が7位にランクインしていた。

 しかし、Global Paymentsは従業員の出社を促しつつ、「柔軟性」を離職理由のトップ10から外し、離職率の低下にも成功した。

離職率を上げずに出社を促す方法

 Global Paymentsのアンドレア・カーター氏(シニアエクゼクティブ・バイスプレジデント兼CHRO《最高人事責任者》)によると、同社は2020年に、ほぼ完全なテレワークの環境を整えた。その後、同社は従業員に準備する期間を提供しつつ、徐々にオフィスワークを再開した。

 Global Paymentsは、2022年までにオフィスワークの再開に関する正式なポリシーを導入し、従業員に対して、少なくとも週4日のオフィスワークを義務付けた。しかし、その後、自社の人材獲得データを見直したところ、その姿勢に懸念が生じた。

 カーター氏のチームは企業の経営陣に向けて、離職率に関する報告書を毎月作成していると説明した。これらの報告書には、現在の従業員がGlobal Paymentsを離職する理由や、候補者が採用プロセスから外れる理由がまとめられている。

 離職率に関するデータによると、従業員の離職理由トップ10のうち、柔軟性は7位にランクインしていた。この結果は、オフィスワークの再開に関するポリシーと離職率の問題との関連性を立証する他の調査結果と一致している(注1)。カーター氏によると、Global Paymentsは、調査結果と個別の従業員向け調査の結果を組み合わせて、オフィスワーク再開のアプローチを変更したという。

 オフィスでの週4日の勤務を義務付けるのではなく、ハイブリッド勤務が可能な従業員には、週に2〜4日のオフィスワークと週に1〜3日のテレワークを認めた。

 この変更から数カ月後、Global Paymentsの離職原因トップ10から柔軟性が外れた。カーター氏は「組織全体の離職率が低下した」と述べている。

経営陣による独自の決定を回避

 Global Paymentsのポリシー変更の結果は、一つの例に過ぎない。カーター氏は「同社の経営陣は最初の調査結果を従業員に示した上で、最新のハイブリッドワーク・ポリシーを導入した」と説明した。

 「最新のポリシーは、経営陣が独自に決定したものではなかった。私たちは、従業員と組織の双方にとって有益だと思われる提案をするために、チームメンバーを巻き込んでデータを見てもらった」(カーター氏)

 具体的には、カーター氏は同社で人事業務を担当するバイスプレジデントに対して、柔軟性の統計データを提示し、従業員リソースグループ(ERG)に連絡を取り、その中でも「ダイバーシティーアクションチーム」を含むERGの代表者と連携し、従業員がそのテーマについてどのように感じているかを把握させた。

 「この取り組みが重要だったのは、ステークホルダーの賛同が欲しかったからだ。そして、私たちのチームメンバーは、本プロセスにおける重要なステークホルダーだった」と彼女は付け加えた。

 従業員がこの変化に反応した理由をカーター氏に聞くと、同氏は「Global Paymentsの従業員が柔軟性を重視する理由は幾つかある」と答えた。従業員の中には、年下の親族と年上の親族の介護を同時に担っている「サンドイッチ世代」もいるかもしれない(注2)。また、パンデミック以降に顕在化したメンタルヘルスやウェルビーイングの懸念に対処するために、柔軟性を高く評価する者もいるかもしれない。

 「興味深いことに、この方針の変更が行われても、オフィスに出勤する従業員に大きな変化は見られなかった」とカーター氏は述べている。同社は正式に出勤状況を記録しているわけではないが、「測定することはできる」と彼女は指摘した。

 「同僚と顔を合わせたり、企業が主催するチームに感謝するための活動に参加したりすることで得られる仲間意識は別として、柔軟性の真の価値は、従業員が柔軟性を必要としたときに、いつでもそれを確保できる状態にあるのかもしれない」(カーター氏)

 カーター氏は、次のようにも述べている。

 「パンデミックが人々に与えた影響について考えると、『私生活で起こった出来事に柔軟に対処できる体制が確保されている』と知っているだけで、従業員はオフィスで働きやすくなる」

強固なデータ機能の維持

 データはこの話題の中心であり、カーター氏のCHROとしてのアプローチの中心でもある。彼女は「人事に関連する事項の分析を行う専門チームの設立が、現在の職務に就いてからの最初の目標の一つだった」と語った。

 カーター氏は、次のようにも述べた。

 「従業員やチームメンバーのための役職であることから、CHROの仕事は感情的なものだと思われがちだ。しかし私たちがすべきは、データを活用して情報を提供し、意思決定に影響を与えることである。CEOに対して『正しいことだからこうしなければならない』と言っても無駄だ。それが正しいとしても、CHROは正しい理由を述べなければならず、その裏付けにデータを活用しなければならない」(カーター氏)

 同社では、離職と人材採用に関するデータ報告をWorkdayで行っている。カーター氏は「調査疲れを避けるため、従業員の意識調査には、さらに調整が必要だ」と説明する。2024年のもう1つの優先事項は、同社が最近実施したグローバル・エンゲージメント調査の結果に関するもので現在分析中である。

 「調査への参加率は非常に高かった。より働きやすくするために、企業文化を発展させるために、人的資本の観点から私たちが何を重視すべきかについて、従業員からさらに話を聞きたいと考えている」(カーター氏)

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