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オフィス回帰の強制は離職を生む? 従業員の声を聞かない企業の実態

テレワーカーはある条件が満たされればある程度のオフィス復帰に賛成するという。企業はその条件を満たそうとしているだろうか。

» 2024年01月15日 07時00分 公開
[Emilie ShumwayHR Dive]
HR Dive

 コロナ禍で進んだテレワーク移行の流れが変わってきた。従業員はオフィス復帰(RTO)についてどのように考えているのだろうか。

従業員にとってオフィス復帰にメリットはあるのか

 ある調査によれば、テレワークを希望する従業員をオフィスに強制的に戻すことで、離職率が上昇するという。回答者のうち、54%はオフィス復帰を「小さな問題」とし、19%は「大きな問題」と答えた。「問題ない」と回答した人は26%に過ぎなかった。つまり回答者の7割以上が問題視した。これに対して企業側はどのような取り組みを進めているのだろうか。

 先ほどの調査を実施したのはシカゴ大学のNational Opinion Research Center(NORC)だ。2022年末に人事担当者を対象に調査を進め、2023年11月27日に結果を発表した(注1、注2)。

 NORCが同時に発表した従業員を対象とした調査の結果によると、ハイブリッドワーカーやテレワーカーは、企業が示す社交イベントや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の安全プロトコルのようなインセンティブにはあまり興味がない。

 テレワークよりもオフィスワークで多くの報酬が支払われるなら、満足度が高まり、より頻繁に対面で仕事をするだろうということが明らかになった。通勤手当も人気のあるインセンティブだった。

テレワーカーの要望に応えない企業

 人事担当者は「ほとんどの従業員が職場復帰の方針について不満、不快、または単に中立だ」と答えたが、「移行を容易にするための新しい方針やインセンティブを導入した」と答えたのはわずか13%だった。

 テレワーカーの希望にも応えていない。オフィス復帰の際、企業はさまざまな施策を打ち出したが、「オフィス内での仕事により多くの報酬を支払うようになった」と答えたのは4%であり、これは「テレワーカーの報酬を減らす」と答えた3%に次いで少なかった。

 NORCの調査によると、人事部門は従業員の感情に触れる機会が多い一方で、企業の意思決定への参画という点では行き詰まっている。これは人事担当者にとってよくあることだ。人事担当者はオフィスへの強制的な復帰によって引き起こされる課題を認識していたが、「人事部門が自らポリシーを作成した」と回答した割合は半数以下だった。

 オフィス復帰の方針が従業員を不幸にしていることを見いだしたのはNORCだけではない。ビデオ会議システムを提供するOwl Labsが2023年6月に実施した調査によると(注3)、フルタイムでオフィスで働くことを希望する従業員は全体の5分の1程度に過ぎない一方で、回答者の3分の2は「現在は、希望に関係なくオフィスで働くことを要求されている」と答えた。

 一方、オフィス復帰の計画を持たない従業員は、ホームオフィスにこだわっている。2023年8月に発表されたIntegrated Benefits Instituteの調査では、回答者の半数近くが「フルタイムでオフィスに戻ることを強いられたら辞める」と答えた(注4)。オフィス復帰の取り組みがますます進行していることを考えると、雇用主が従業員の要求に強硬な態度で臨むのか、職場としての要求を緩和するのか、それともまた退職者が増えるのかについては(注5)、時間がたたないと分からない問題だ。

 オフィス復帰の方針がもたらす不幸は、従業員を動揺させている可能性がある。BambooHRが2023年8月に明らかにしたところによると、2020年以降、従業員の満足度は低下しており(注6)、2022年から2023年にかけて最も下げ幅が大きかった。調査企業のForrester Researchによると、この落ち込みは、従業員体験への投資が減退した時期と一致している(注7)。

 従業員は、「対面での業務のインセンティブとしてであれ、充実感を得る手段としてであれ(注8)、現金が増えればより幸せになれる」と回答した。彼らにとって朗報なのは、ここ数年における昇給の中央値の上昇に雇用主が対応して報酬を増やしつつあるということだ(注9)。

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