ガートナーによると、ある特徴のある企業の8割は、2027年までに成果を生み出せなくなるという。さらに、この特徴に関連した要素を持つ企業の9割は従業員のスキル格差が拡大し、組織内外で混乱や断絶が生じるとみている。こうした特徴を払拭するために、何をすべきか。
ガートナージャパン(以下、ガートナー)は2024年3月14日、「デジタル・ワークプレースと働き方の未来に関する展望」を発表した。
ガートナーによると、ある特徴を持つ企業の8割が「2027年までに成果を生み出せなくなる」という。その特徴とは何か。
ガートナーは、2027年までに、日常型AIを主導する組織を設けない企業の8割は、生成AI導入の乱立と混乱で成果を生み出せなくなるとみている。
生成AI(人工知能)への関心が高まる中、デジタルワークプレース領域においても生成AIを当たり前に使う「日常型AI」(Everyday AI)の時代が到来している。従業員の生産性向上や効率化に貢献するものとして日常型AIに期待が高まる一方で、リスクに対する適切な措置を取れない企業も多い。
ガートナーは、「適切に準備することなく生成AI製品を展開しようとする企業は、従業員の混乱を招くと同時に活用に懸念が生じている」と懸念を示す。「AIを安全に利用できる状態」(AI Ready)になく、前提条件の確認やリスクレベルの評価などが十分でないケースはリスクを抱える可能性がある。
生成AIは従業員の働き方を変える可能性を秘めているが、現時点でその効果やリターンを明確にするのは容易でなく、進化過程にある日常型AIに対する結論を急ぐのは得策ではない。まずは従業員が慣れるための期間を、1〜2年といった余裕を持って設定することが重要だとガートナーは説明する。これからの企業は、生成AIなどの新たなテクノロジーの積極的な利用を従業員に期待することになる。最も効果を生み出せる可能性のある従業員をまず特定し、利用を促進する傾向が高まるというのがガートナーの見立てだ。
こうした状況について、同社の針生恵理氏(ディレクターアナリスト)は次のように説明する。
「生成AIを適切に利用するために、実際に手を動かし、生成AIに意欲的に取り組む人から構成されるガバナンス組織(CoE:センターオブエクセレンス)を立ち上げ、ポリシーやルールを策定するのがよいだろう。さらに、(中略)ビジネス部門内に生成AIを有効に活用するための実践コミュニティ(CoP:コミュニティオブプラクティス)を立ち上げることで、仕事に効果を生み出す生成AIの活用を促すことも有益となる。デジタルワークプレースを担うリーダーは日常型AIに対する過度な期待を抑え、リスクを共有し、より良い利用やスケジュールについてビジネス部門とコミュニケーションを図り、従業員にとってのリターンを生み出せるようにすることが重要だ」
現在、多くの企業はコミュニケーションのツールとして、テキストチャットや音声、Web会議機能などさまざまなコミュニケーション手段を持つ「Microsoft Teams」や「Google Workspace」「Zoom Meeting」「Cisco Webex」などのツールを採用している。生成AIがこうした環境に影響を与える可能性は高い。既に生成AIを実装し、機能強化を図る製品も登場している。
一方で、現在の生成AIは「もっともらしい嘘をつく(いわゆるハルシネーション)問題」も内在している。ビジネスコミュニケーションでこうした問題が発生した場合は、社内外で意思疎通の食い違いが出たり、関係が悪化したりなどのトラブルを招く恐れもある。
ガートナーの池田武史氏(バイスプレジデントアナリスト)は「生成AIの適用範囲は多岐にわたるため、導入時のトレーニングが十分に行き届かないまま利用が拡大する懸念がある。従業員には生成AIの社内外コミュニケーションへの利用を推奨する一方で、コミュニケーションの際の留意点についてガイドする必要がある」と述べる。
池田氏は「ガイド」の具体的な内容として、次の2点を挙げた。
なお、「2027年までに、社内外でのコミュニケーションにおける生成AI利用のトレーニングを怠る企業や組織の90%で従業員のスキル格差が拡大し、組織内外で混乱や断絶が生じる」とガートナーはみている。
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