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業務外注の界隈でAIの導入率が圧倒的に高い理由

BPOは、他の業界と比較してAIの導入率が高いという特徴がある。その理由と活用方法について紹介する。ぜひ組織にAIを取り入れる際の参考にしてほしい。

» 2024年04月18日 08時00分 公開
[Michaela GossTechTarget]

 AI(人工知能)の導入方法に悩んでいる組織は、ビジネスプロセスアウトソーサー(BPO)の例を参考にすべきだ。他の業種に比べて、BPO業界におけるAIの導入率が高いという。その理由と、具体的な活用方法を紹介する。

BPOにおけるAI導入率が高い理由

 コンサルティング企業であるMetrigyのロビン・ガレイス氏(CEO兼プリンシパル・アナリスト)によると、これはBPOが社内のCX戦略のためにDX(デジタルトランスフォーメーション)、つまりAIのような革新的なテクノロジーを受け入れているためだという。コンタクトセンターにとってAIは目新しいものではないが、より新しいテクノロジーに投資するBPOは、多くの場合、エージェントと顧客の満足度を高めている。

 「AIと自動化:BPOにおけるCX成功のためのステージ設定」と題したウェビナーでは、ガレイス氏と、業務効率化ソリューションを提供するNICEのトム・スタンリー氏(地域を担当するバイスプレジデント)が、BPOおよびそのコンタクトセンターエージェントにおけるAIの長所や短所、使用例を確認した。

 ガレイス氏は、ウェビナーで次のように述べた。

 「多くの人は『AIを活用すべきだろうか。エージェントを困惑させるかもしれない』と心配するが、私たちはAIの活用が利益になるとみている。AIは、組織の成功を長期化し、組織が必要とする回答を提供してくれるためだ」

BPOによるAIの活用方法

 Metrigyの調査によると、BPOは他業界の組織よりも、AI投資を優先事項として認識している。こうした背景から、BPOは自社や顧客のためにAI戦略を実施した経験を持ち、AI投資に関して信頼できるアドバイザーになる可能性が高い。

 BPOは、主に次のような方法でAIを活用している。

  • エージェント・アシスト。これらのテクノロジーは、コンタクトセンターのエージェントがより効率的に業務を遂行できるよう支援する。画面ポップアップや販売提案、次の最良のアクションの推奨などを活用し、よりパーソナライズされたCXを生み出せる。BPOは、より優れたエージェントアシスト・テクノロジーにより、他の業界よりも平均処理時間が短い傾向を有する。

 

  • 会話型AI: 会話型AIは、コンタクトセンター内のチャットbot・チャネルとして機能する。CXリーダーは、トレンドを評価するために、会話型AIを社内で活用できる。ガレイス氏は「エージェントに対して、その日の成功の要因について尋ねられる」と述べている。組織全体のデータへのアクセスも向上するため、エージェントは顧客の質問に迅速に答えられる
  • 感情分析: この種の分析は、エージェントがCXを向上させるのに役立つため、エージェント支援テクノロジーに分類される。感情分析では、自然言語処理を使用し、文字や声のトーンを通じて顧客の感情を測定する。そのため、顧客がフラストレーションを感じた場合、AIはそれらをライブエージェントや、問題を処理するのに適した別のエージェントに転送できる
  • テキスト分析: この分析もエージェント支援テクノロジーに含まれるが、顧客の経験とはあまり関係がない。特定の質問に答えるために、エージェントが組織のデータを素早く検索するのに適している。特定の問題を分析するために、トランスクリプト内の主要な用語やフレーズを特定し、エージェントがそれをどのように解決したか、そして、より良い解決策は何かを特定できる
  • セルフサービス: チャットbotやFAQ、対話型音声応答システムは、AIを活用したセルフサービスの最も一般的な例だ。これらのチャネルにおいては、エージェントと話すことなく、顧客が独自に問題を解決したり、質問の回答を受け取ったりするルートを提供する。コンタクトセンターのリーダーがこれらのチャネルを維持し、正確で最新の情報を提供できるようにすれば、エージェントはより差し迫った問題を抱えた顧客をサポートできるようになる
  • bot: Metrigyによると、ほぼ半数の組織がチャットbotを採用している。チャットbotや音声bot、その他のタイプのどれを使用している場合であっても、半数以上の組織はチャットbotが適切に機能するように専任のスタッフを配置している。チャットbotはエージェントの仕事を奪うのではなく、むしろ新たな雇用を生み出している

 多くのBPOが、会議の議事録やセルフサービスチャネル用のコンテンツ、顧客フィードバック用の要約などを作成するタスクにおいて、ワークフローに生成AIを導入している。これらの試みにより、BPOは、生成AIの活用においても他業界をリードしている。

BPO業界におけるAIの長所と短所

 BPOはAIの導入において他業界に先駆けているため、このテクノロジーの長所も短所も把握している。長所は次の通りである。

  • エージェントの経験と効率の向上
  • 収益と顧客満足度の向上
  • DX戦略の強化
  • エージェントのリソースの確保、新しく改良されたテクノロジーへのアクセスの提供、スキルアップをはじめとする、既存のエージェントに対するより強力なサポートの実現
  • AIテクノロジーへの理解の深化
  • より多くの顧客データの取得と分析

 一方で、BPOにおけるAIの活用にはまだ課題もある。課題には、次のようなものがある。

  • 適切なスキルを持つエージェントの不足
  • 外注のコンタクトセンターに対する需要の減少
  • AIや自動化技術への投資額が増加する可能性
  • 顧客から信頼されるAIアドバイザーになれるかどうか
  • 顧客のシステムとの統合
  • 組織固有のニーズを満たすシステムを見つけられるかどうか

 包括すると、BPOは他の業界に対して、AIを導入した未来を見せている。特に、2022年後半に「ChatGPT」が発表され、生成AIへの関心が高まった後ではなおさらだ。Metrigyによると、2023年のAI導入率は予想より低く、コンタクトセンターでAIを使用している組織は全体の36%だが、BPOの場合は70%だった。この経験から、BPOは、自社の顧客を含む他組織におけるAI導入戦略を支援する立場にあるといえるだろう。

 「BPOは社内で多くの経験を積むことができる。『私たちは、自社のためだけでなく、顧客のためにもAIの導入に取り組んできた』というような経験だ。そして、それらの経験は、BPOに真の意味でのデジタルトランスフォーメーションの土台を提供するだろう」(ガレイス氏)

 ミカエラ・ゴス氏は、TechTargetで、カスタマー・エクスペリエンスとコンテンツマネジメント・サイトを担当するシニア・サイトエディターだ。2018年にライター兼エディターとしてTechTargetに参加した。

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