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AIで「面倒な見積もり作成」をどれくらい時短できるか? 成否を分ける仕事の振り分け方CFO Dive

AIは価格設定や見積もり業務のサポートにも使えるが、効果的な活用にはAIで処理する方がいい作業と人間が担当するべき作業の見極めが重要になる。その基準はどこにあるのか。

» 2024年05月22日 10時00分 公開
[Maura Webber SadoviCFO Dive]
CFO Dive

 Professional Pricing Societyの配信に登壇した専門家によると、AIツールは企業が提案や見積書の微調整に費やす時間を劇的に削減できるが、それを採用する意味がある場合とない場合を理解することが重要だという。

AIが見積もりプロセスに与える影響

 テキサス州オースティンを拠点とするHamilton AI Strategy Advisorsのブルックス・ハミルトン氏(プリンシパル)は、次のように述べた。

 「『ChatGPT』のリリースから分かるように、価格設定の専門家の間でAIに多くの関心が寄せられており、AIが見積もりプロセスに革命を起こす可能性も大いにある(注1)。しかし、実用的な知識および具体的な事例と、それらをどのように実現するかという理論の間には大きな隔たりがある」

 ハミルトン氏は「提案や価格見積もりを作成し、承認を得るという多段階かつ時間のかかるプロセスを分解することがポイントだ」とも述べている。Capital Pricing Consultantsのリディア・ディリエッロ氏(CEO兼創業者)によると、そのステップは企業によって異なるが、Excelやスプレッドシートにデータを入力する作業の繰り返しであり、担当者はこれらの点を面倒に感じるという。

 価格設定の担当者は提案要求書(RFP)を入手した後、見積書を上司に提出し、許可を得なければならないが、価格設定にまつわる疑問が解決されるまで許可は下りない。ディリエッロ氏によると、このような疑問には、価格設定や販売量の変更の影響に関する仮定のシナリオが含まれることも多いという。

 「これは、担当者にとって『この数値を解析するための計算に4時間を費やさなければならない』ことを意味する。しかし、そのような必要はない。AIツールに入力し、10分間計算させれば答えが出る。担当者は、人間として決定を下し、上司に提案すればよい」(ディリエッロ氏)

 ディリエッロ氏によると、価格設定の分野でAIを導入するのに適しているのは「非常に時間がかかる反復作業」だという。同氏は、「大量のデータを扱い、任意の操作を繰り返し、さまざまな仮のシナリオを考察する場合こそ、AIを使用する理想的な機会だ」と付け加えた。

 ディリエッロ氏は「商品の数量変動に関するシナリオや価格ポイントの変動に関するシナリオなど、上級幹部が求める全てのシナリオは、3日間の作業を要するものではなくなる」と述べた。同氏はAIによって企業が見積もりに費やす時間を30〜70%削減できるという算定を目にしたことを指摘し、「変数を入力し、ボタンを押してAIに解析させるだけで15分で済む」とも述べた。

 ハミルトン氏は、次のように述べた。

 「企業はRFPに費やす時間を削減することで、より多くの利益を得られる。多くの企業は入札依頼に十分なスピードで対応できていない。勝つためにはまず入札を行う必要がある。クライアントの入札依頼の全てに応じることができれば、おそらく収益率が向上するだろう」

 また、ハミルトン氏は、AIが適切なツールとならない領域を理解することが重要だと警告した。同氏は「AIは反復作業の解析に適している。一方で、価値判断を下すのは私たちであり、顧客に何を送り、それが市場戦略の全体像にどのように適合するかを評価する必要がある」と述べている。

 ディリエッロ氏とハミルトン氏は、2024年4月末にシカゴで開催されるProfessional Pricing Societyのイベントで、AIを使って見積もりプロセスをスピードアップするワークショップを行った。

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