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GoogleがMicrosoftに仕掛ける顧客争奪計画 セキュリティ渦中に

競争相手であるMicrosoftが大規模なサイバーインシデントの影響に対処している中で、Googleは「ある取り組み」をはじめた。顧客の乗り換えを促すようなその取り組みとは?

» 2024年06月07日 07時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]
CIO Dive

 2023年に相次いだ国家に関連する攻撃者による侵害は、Microsoftの主要な製品を危険にさらした。Googleは「Microsoftの度重なるセキュリティの問題から、企業や公共機関には、より良い選択肢が求められている」と述べた。

Microsoftのセキュリティ渦中にGoogleが仕掛けた計画とは

 競争相手であるMicrosoftが大規模なサイバーインシデントの影響に対処している中で、Googleは「ある取り組み」をはじめた。顧客の乗り換えを促すようなその取り組みとは?

 2024年5月20日、Googleは、同社の生産性向上ツールである「Workspace」を新規の企業顧客に18カ月間無償で提供すると発表した。Bloombergによると(注1)、この大きな特典を享受するために、企業顧客は3年契約を締結する必要があるという。競争相手であるMicrosoftが、大規模なサイバーインシデントの影響に対処している中で、Googleは、このような取り組みを始めた(注2)。

 2023年に相次いだ国家に関連する攻撃者による侵害は、Microsoftの主要な製品を危険にさらした。Googleは2024年5月20日に「Microsoftの度重なるセキュリティの問題から、企業や公共機関には、より良い選択肢が求められている」と述べた(注3)。

 Googleは「新規の企業顧客は期間限定で、『Workspace Enterprise Plus』や『AI Security』のアドオン、『Mandiant Incident Response Retainer』、移行時の特別価格を利用できる」と発表した(注4)。また、500人以上のユーザーをWorkspace Enterprise Plusに切り替えた公共機関は、1年間の無料サービスの特典を得られる。

 米国土安全保障省のサイバー安全審査委員会(CSRB)は、2024年4月の報告書でGoogleが引用したように、Microsoftを厳しく批判した(注5)。

 CSRBは報告書で「2023年に、中国政府に関連するハッキンググループ『Storm-0558』が行ったMicrosoftのクラウド環境への侵害は、スパイ活動で金鉱を掘り当てたようなものだった。Microsoftのセキュリティに一連の失敗があったために、Storm-0558は攻撃に成功できた」と述べた。

 Amazon Web Servicesを提供するAmazonのアンディ・ジャッシー氏(CEO)は、2024年4月の決算説明会で、クラウドビジネスにおける覇権を争うMicrosoftを非難し(注6)、「全てのプロバイダーがセキュリティについて同様の実績を持っているわけではない」と指摘した。

 Googleは2年前にMandiantとSiemplifyを買収し(注7)、クラウドセキュリティを強化した。世界で3番目に大きいクラウドサービスプロバイダーであるGoogleは、2024年の初めに、企業向けビジネスの関心を自社に向けるための取り組みとして、3大ハイパースケーラの中で最初にデータ消去手数料を引き下げた(注8)。

 しかし、Googleのクラウド戦略の中核がセキュリティであることに変わりはない。

 Googleは報告書の中で、2009年に発生した「オペレーション・オーロラ」と呼ばれる一連のインシデントで、同社がStorm-0558による一連のサイバーアタックの標的にされたことを認めている。

 Googleは、次のように述べた。

 「巧妙で容赦のない攻撃者の標的にならずに済む組織はない。『プロジェクト・オーロラ』以降、14年以上にわたり、これらの侵害から社内システムと顧客を守るために、プラットフォームの基本的なアーキテクチャ、防御アプローチ、中核的なセキュリティ原則に沿った企業文化の見直しを実施してきた」

 Microsoftのサティア・ナデラ氏(CEO)も、2024年4月の決算説明会において、セキュリティを優先事項としている旨を強調した。同社の広報担当者は電子メールで、セキュリティに関する自社の動きを再確認し、同社が最近、アメリカ合衆国サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)の「セキュア・バイ・デザイン」のコミットメントに署名したことを指摘した(注9)。

 広報担当者は「Microsoftは、サイバーセキュリティコミュニティー全体のステークホルダーと引き続き緊密に連携している」とも述べている。

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