NTTデータでは、2023年から一部の部門でNotionおよびNotion AIを導入し、情報共有の課題解決に取り組んできた。同社の利用部門の担当者が効果的な使い方を解説した。
「Notion」はドキュメント作成・共有、プロジェクト管理、社内ナレッジ共有などの機能を持つクラウドサービスだ。2023年には「Notion AI」がリリースされ、文章の翻訳や要約、編集、アイデアだしの機能なども利用できるようになり、大企業を中心に導入が進んだ。
NTTデータもユーザー企業の1社だ。同社では、2023年から一部の部門でNotionおよびNotion AIの活用をはじめ、情報共有の課題解決に取り組んできた。NTTデータグループの米田司氏(コーポレート統括本部 ITマネジメント室)とNTTデータの合田剛史氏(ソリューション事業本部 セキュリティ&ネットワーク事業部サイバーセキュリティ統括部)がNotionの導入に至った経緯と効果的な使い方を語った。
NTTデータグループでは、コーポレート統括本部ITマネジメント室(以下、ITマネジメント室)と、ソリューション事業本部 セキュリティ&ネットワーク事業部サイバーセキュリティ統括部(以下、サイバーセキュリティ統括部)で、情報共有に関するさまざまな課題をNotionおよびNotion AIで解決してきた。
ITマネジメント室は社内システムの企画・開発・運用を担う部門だ。米田氏の所属するチームでは約40のシステムを開発、運用しているが、「それらの情報を1つのツールで管理したい」「充実したデータベース機能を備えたツールで管理し、さらにそのデータを活用したい」などの課題があった。
また、同チームでは協力会社メンバーの入れ替わりも頻繁で、ITリテラシーにばらつきがあった。ナレッジの属人化が進んでいたため、ナレッジを共有して品質を標準化したいという思いもあったという。
米田氏は、「私たちのチームでは、資料を探したり進捗を確認したりと価値を生み出す前の作業に時間を要する課題がありました」と説明し、この課題を解決するためにNotionを導入したと話す。
Notionの導入時には、社内のセキュリティ対策ガイドラインの要件を満たしていることを確認している。具体的には、SAML認証によるアクセス制限ができること、ISO27001などの公的認証が取得されていること、NDAの締結によりSOC2 Type2レポートを提示できることなどが重要なポイントだった。不正操作監視のために1年間の監査ログも確認できる点も評価したという。
Notionの導入後、同社ではさまざまな業務にNotionを活用してきた。米田氏が4つの具体例を紹介した。
同チームでは、あらゆるドキュメントをNotionに集約し、「Notionを探すだけで情報にたどり着ける」ようにしている。Notionのデータベースに蓄積された情報はさまざまな視点で表示できるため便利だという。
会議資料や設計書、作業手順書など、全てのドキュメントを一つのデータベースに格納し、プロジェクトやシステムごとに必要なドキュメントだけを表示するページを用意することで、各メンバーが自身に関連するドキュメントを見つけられるようにしている。これによって、周りの人の手を煩わせることなく必要な情報にアクセスできるようになった。
Notionを活用しタスクを管理することで、チーム全体で複数プロジェクトの状況を可視化できるようになったという。メンバーのタスクのアサイン状況や仕事量、タスクに関連する情報、過去のタスクの対応経緯などが全てNotion上に蓄積されている。
タスク管理については、「タスクの登録はさまざまな場所から。タスクの把握は自分視点で」をコンセプトにした。このコンセプトにしたがって、各プロジェクトにひも付くタスクをチームで入力し、個人がプロジェクトを横断して自分のタスクを把握できるようにした。
標準の「担当者」プロパティとは別に、「ボール持ち」というプロパティを追加することで、複数人での共同作業でも「今、誰がボールを持っているか」が明確となるように工夫したという。
Notionの議事録に発言内容を直接記入して会議を進めていくことで、Web会議における発言しにくいという問題に対処したという。また、議事録内でタスクを割り当てることで、会議とタスク管理の一体化を実現している。
さらに、議事録に録画データを登録して会議の詳細を把握できるようにし、情報共有目的での参加を削減している。Notionではデータ総量は無制限なため、録画データなどの容量の大きなファイルも気にせず格納できる点が便利だという。
システム開発、運用中に発生するトラブルの対応に、Notionのテンプレート機能を利用している。トラブル対応では、解消に向けて迅速な対応が必要となるが、そのやり方は人によってばらつきやすい傾向がある。そこで、あらかじめNotionでテンプレートを用意しておき、トラブル発生時にはテンプレートに沿って情報を埋めていくことで一定の品質を確保し、迅速かつ漏れなく対応を進めることができるという。また、Notionでは、テーブルやコードブロックなど多彩な表現ができるので、スッキリと情報を整理できナレッジとして蓄積できるようになったと話す。
サイバーセキュリティ統括部は、ゼロトラストセキュリティ製品を顧客企業に導入している部門だ。同部門では、テキストの入力、編集の割合が非常に高く、効率化する必要があると感じたという。そこで、Notionで管理しているナレッジを基に文章を生成、編集できる「Notion AI」の利用を決めた。さらに、自社のナレッジを蓄積、管理しているNotionですぐにAIを利用できる利便性やデータ管理の安全性も高く評価した。
「Notionはユーザーデータをモデルのトレーニングに使用しないと明記しています。顧客情報や売り上げといった情報をNotionに入れる場合でも、データの安全性が確保されていることを重視しました」(合田氏)
現在は、文章の校正や要約、ドキュメントやメールの翻訳、要点の洗い出し、ブレインストーミングやネクストアクションの抽出、壁打ちなどにNotion AIを活用している。
同社では従来、会議の参加メンバーのメモを基に議事録を清書し、それを「Slack」や「Microsoft Teams」で共有していた。この運用が議事録の記入漏れやミスにつながっていた他、過去の議事録を探せない、議事録作成の担当者が会話に入れないといった問題もあった。
Notion AI導入後は、文字起こしツールで会話の内容をテキストし、そのメモをNotion AIが要約、ネクストアクションを抽出して議事録に反映し、議事録データベースに格納する運用に変わった。
議事録作成の負荷が軽減されただけでなく、データベースに蓄積された議事録をプロパティで簡単に管理できるようになった。
サイバーセキュリティ統括部では、Notion AIの「Q&A」と「AIコネクター」を利用している。Q&Aは、Notionに蓄積された情報を基に、ユーザーの質問に回答する機能で、AIコネクターはNotion以外のシステムと連携できる機能だ。
サイバーセキュリティ統括部では、コミュニケーションツールとしてSlackをメインで使っているので、有益な情報はSlackに蓄積される。これまではナレッジを溜めるためにSlackの情報をNotionに転記する作業があり負担だった。
Notion AIを導入後は、Q&AとAIコネクターを使ってNotionとSlackの情報を連携させ、検索や質問ができるようにしたことで、ナレッジ管理を効率化できた。合田氏は、今後もNotion AIの機能を使いこなしていきたいと話す。
「これからNotion AIを導入する方には、すぐに効果が実感できる要約機能とAIコネクターの利用をお勧めします。慣れてきたらプロンプトの書き方のルールを作ったり、視覚的な表現ができるMermaid記法でフローチャートなどの図を作ったりすると良いと思います」(合田氏)
Notion AIは、Notionに蓄積したデータを基にAIの機能を利用できることがポイントだ。生成AI活用において、自社のデータをふまえた回答を引き出したいとするニーズが高まっている中で、Notionは有力な選択肢の一つとなるだろう。
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