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生成AI「AI Companion」でZoomでの働き方はどう変わるのか

AIによるイノベーションを追求するZoomは、2024年10月10日(現地時間)に開催された年次イベント「Zoomtopia Japan Virtual 2024」で「Zoom AI Companion 2.0」を発表した。Zoomの生成AIアシスタントはどのように進化し、従業員の生産性や顧客の体験を支援するのだろうか。

» 2024年10月24日 08時00分 公開
[平 行男キーマンズネット]

 「Zoomtopia Japan 2024」は、AIの活用をメインテーマに1500人以上が参加する大規模イベントとなった。米国やヨーロッパ、アジア、日本でグローバルに展開されるこのイベントで、Zoomビデオコミュニケーションズ(以下、Zoom)の創業者兼最高責任者であるエリック・ユアン氏は、Zoomの将来に向けたAIビジョンと具体的な取り組みを紹介した。

 ユアン氏は冒頭で、家族や趣味のバスケットボール、特にウォリアーズへの愛着を語りつつ、顧客との対話から得るインスピレーションの重要性を強調した。AIによって、そのような価値ある活動により多くの時間を割けるようになる可能性を示唆した。

 Zoomは過去1年間で3000を超える新機能をリリースしている。主な成果として、2024年3月の「Zoom Workplace」のローンチ、2023年9月の「Zoom AI Companion」のリリース、2023年8月の「Zoom Docs」の導入が挙げられる。これらの革新的な取り組みにより、Zoomはビデオ会議ツールから統合型ビジネスツールへと進化を遂げた。

 その結果、Zoomの革新性は業界からも高く評価されている。Fast CompanyはZoomを最も革新的な企業の一つに選出し、GartnerのMagic Quadrantでもリーダーとしての地位を維持している。最新の「Gartner Peer Insightsレポート」では、Zoomが顧客から選ばれた唯一のベンダーとなった。

ZoomがAIで実現する新たな働き方

 ユアン氏は、ZoomがAIファーストのワークプラットフォームへと進化したことを強調した。「Zoom Workplace」に搭載された「Zoom AI Companion 2.0」や「Zoom tasks」などの機能は、有料のユーザーアカウントであれば追加料金なしで利用できる。

 「1926年にヘンリー・フォードは労働時間を48時間から40時間に短縮する革命を起こしました。生成AIもまた、私たちに自由な時間をもたらします」とユアン氏は語る。現代の私たちは会議や電子メール、チャットに追われる日々を送っているが、これらのタスクをAI Companionが支援することで、より創造的な活動に時間を割くことが可能になるという。

 ユアン氏は、AI Companionの活用例として、毎朝のミーティングスケジュール確認や、重要な意思決定のための会議参加の絞り込みなど、日常的なタスク管理におけるAIの役割を具体的に説明した。「近い将来、AI Companionが会議に参加し、契約の交渉までアシストしてくれる時代が来るでしょう」と、AIの可能性を示唆した。

 Zoomは、AIイノベーションの推進と同時に、ユーザーのプライバシー保護を最優先事項としている。具体的にZoom AI Companionは、ユーザーのコンテンツをZoom AIのモデルや第三者のAIモデルと共有しないというポリシーを徹底している。この方針が、フォーチュン500企業の57%を含む400万を超えるユーザーアカウントにZoom AI Companionが支持される理由の一つだという。

 このようなセキュリティとプライバシーへの厳格な姿勢は、企業ユーザーからの高い信頼獲得につながっている。ユアン氏は「ユーザーの個人情報を保護するために最大限の制御を提供することが、Zoom AI Companionの最も重要なポイントです」と述べ、今後もこの方針を堅持する意向を示した。

Zoomビデオコミュニケーションズ エリック・ユアン氏

よりパワフルにビジネスを支援する「AI Companion 2.0」

 Zoomは2024年10月に「Zoom AI Companion 2.0」を発表し、Zoomの全ての製品にこの機能を取り込んでいる。これがZoomのAIファーストワークプラットフォームだ。Zoom Workplaceの「Zoom Meetings」や「Zoom Phone」などのツールを使うさまざまな場面で、AI Companionがユーザーをアシストしてくれる。

 Zoom AI Companionは、Zoom Workplaceだけでなく、「Microsoft Outlook」や「Microsoft Office」「Gmail」「Googleカレンダー」「Google Docs」などとも連携させることで、顧客や同僚と会話をする時間を生み出す。直近では会議の文脈理解、要約にとどまらず、リアル会議の日時調整まで実施する。

 Zoom AI Companionの実力は第三者機関によるテストで「Microsoft Copilot」に比べて音声文字起こしで36%、会議サマリー作成では16%優れているというデータが出ている。Zoom Workplaceには、AI Companion 2.0を活用するさまざまなプロダクトが用意されている。AIアシスタントの活用例と主なプロダクトは以下の通りだ。

パーソナルな電子メール作成

 Zoom AI Companionは、電子メールやチャットの作成や要約をサポートする。ミーティングのコンテンツなども含めた完全な電子メールを作成することが可能だ。相手によってトーンを変えるなど柔軟にパーソナルな電子メールを作ってくれる。ユーザーはサイドパネルから簡単に電子メールを作成して送信するだけで、電子メールやチャットの束縛から解放される。

会議内容の要約

 会議の内容を、過去の経緯を含めてZoom AI Companionが要約する。議事録のためのメモをする必要がないので、ユーザーはミーティングに集中できる。多くの会議や打ち合わせを抱えるマルチタスクユーザーの時間を大幅に削減してくれる機能だ。要約した内容は「Zoom Dogs」の中で編集できる。

クリエイティブなアイデアの作成

 プロダクトやキャンペーンのアイデアが欲しいときは、AI Companionが創造的なアイデアを提案する。時間のかかる新しいアイデアを生み出す作業もAI Companionが支援する。さらにアイデアをチームで整理する作業もサポートする。

AI Companion 2.0(出典:ZVC JAPANの投影資料)

ユーザーのタスク遂行を支援する「Zoom tasks」

 Zoom AI Companion 2.0の最先端のテクノロジーを利用し、ユーザーのアクション項目を常に把握する「Zoom tasks」がまもなくリリースされる。Zoom Workplaceの機能を拡張し、会議や電話、電子メール、チャット、ドキュメントなどからユーザーのタスクを検出し、タスクの遂行をサポートする。

My tasks(出典:ZVC JAPANの投影資料)

動画の作成・共有機能「Zoom Clips」

 簡単に質の高い動画メッセージを作成、共有できる「Zoom Clips」に、ユーザー自身の動画からアバターを生成し、数秒でビデオメッセージを作成してくれる機能が搭載される予定となっている。ビデオメッセージの作成は、新たに動画を撮影する必要も音声を録音する必要もない。

従業員体験プラットフォーム「Zoom Workvivo」

 Zoom Workvivoは、従業員を中心にしたイントラネットプラットフォームだ。働く場所がデスクでも現場でも1つのプラットフォームで声が届き、誰もが一員であると感じられるようにすることで従業員のエンゲージメントを高電子メール。Zoomではこれを「デジタルハート」と呼んでいる。

さまざまな業界で活躍するZoom Workplace

 Zoom Workplaceは政府や医療、教育、製造、小売などの他、さまざまな業界をカバーするソリューションを提供している。アメリカでは政府機関向けのコミュニケーションプラットフォーム「Zoom for Government」にAI Companionが搭載された。最先端のソリューションを幾つか紹介する。

コンタクトセンター向け「Zoom Contact Center」

 Zoom Contact Centerは、従来の音声通話に加え、ビデオやチャット、SMS、SNSなど、Webチャネルを搭載したコンタクトセンターソリューションだ。CRM やその他のアプリケーションと連携し、顧客や従業員の体験を向上させる。

 24時間対応可能な会話型AIチャットbot「Zoom Virtual Agent」がパーソナルでエンゲージメントレベルの高い会話で、コンテキストを理解して自然な回答を導き出す。Zoom Contact Centerは、世界中の1,300以上のブランドで利用されている。

教育機関向け「AI Companion for Educators」

 Zoomは教育の分野にも注力している。現在はグローバルで約9万の教育機関がZoomを使って学習の結果を出し、その多くがZoom AI Companionを利用している。

 学生には、リモートでも対面でもAIアシスタントが学習を支援する。教室内ではチャットbotがリアルタイムで質問に答える。授業後は自動的にサマリーを作成する。クイズを出題して知識の定着を行うなど学生のエンゲージメントを上げることに貢献する。

 教師には、Zoom AI Companionがさまざまなリソースから情報を参照し、短時間で簡単に講義のコンテンツを作成するなどのサポートをする。

ヘルスケア向け「Zoom Workplace for Healthcare」

 Zoomはヘルスケア分野にもフォーカスしている。世界中の14万を超えるヘルスケアの機関がZoom Workplaceを利用している。ヘルスケア業界向けの「Zoom Workplace for Healthcare」は、Zoom AI Companion 2.0を搭載して医学事象を取り込むなどの業界ニーズに対応し、カスタム化およびパーソナル化を進めている。また、医療記録やヘルスケアデータ、アプリケーションとの統合によりZoom AI Companionの価値を最大化する。

医師向け「Zoom Workplace for Clinicians」

 Zoomはドクターも支援する。診療記録を中核にZoom AI Companionが臨床ワークフローを自動化することで臨床医の時間を節約し、医師が重要なタスクに専念できるように助ける。医師が患者のためにより時間を使えるようになることを目指している。

現場従業員向け「Zoom Workplace for Frontline」

 多くの業種では現場のスタッフが顧客に対する重要なサービスを担っている。小売や工場、看護師なども含めて80%のスタッフは現場で働くフロントラインの人たちだという。

 「Zoom Workplace for Frontline」は、現場で働く従業員向けのソリューションで、生産性やエンゲージメント、コラボレーションなどを、モバイルを中心としたプロダクトで促進する。Zoom AI Companionが勤務シフト、職場におけるコミュニケーション、業務管理、勤務の洞察などを支援する。

 このように、Zoomはさまざまな業界向けにAIを活用したソリューションを提供している。AI Companion 2.0の発表を皮切りに、Zoomは今後もAIを活用した新機能の開発を続けていく方針だ。

本記事は、ZVC JAPANが2024年10月10日に開催したバーチャルイベント「Zoomtopia Japan Virtual 2024」の内容を編集部で再構成した。

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