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住信SBIネット銀行が顧客対応の工数半減 kintoneで生成AIをどう活用している?事例で学ぶ! 業務改善のヒント

住信SBIネット銀行は、kintoneを利用して顧客対応にかかる工数を半減させた他、生成AIを組み合わせることで業務効率化を図っているという。それは具体的にどのような方法なのか。

» 2024年10月31日 07時00分 公開
[金澤雅子キーマンズネット]

 住信SBIネット銀行は、サイボウズが提供する「kintone」で業務効率化を図り、顧客対応にかかる工数を半減させた。また、生成AIをkintoneと組み合わせることで、さらなる業務改善に取り組んでいる。サイボウズが2024年10月23日に発表した。

 生成AIとkintoneを組み合わせることによって、具体的に何ができるようになり、どう効率化しているのか。

生成AIとkintoneの組み合わせで何ができる?

 住信SBIネット銀行は、インターネット専業銀行として2007年に開業し、デジタルバンク事業をはじめ、パートナー企業にフルバンキング機能を提供するBaaS(Banking as a Service)事業や、カーボンクレジット・第一次産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)などに取り組むTHEMIX事業など、銀行を超えたテクノロジー企業として対応領域を拡大している。

 同行のカスタマーセンターでは、オペレーターが顧客からの問い合わせ内容を所管部に確認する際に、表計算ソフトと電子メールを利用していた。しかし、ビジネスが拡大するにつれて、大量データによるファイル破損のリスクや、大人数でのファイル共有によるデータ更新時や電子メール送受信時のオペレーションリスクなどの課題が発生した。

 これらの課題を解決するため、同行はkintoneを情報共有基盤として導入した。採用の決め手となったのは、kintoneがISO認証やFISC安全対策基準など、金融機関に求められるセキュリティ要件を満たしており、監査ログを残せることだという。また、ITスキルが高くない従業員にも使いやすいと考えたこと、スモールスタートが可能なため初期投資が少なくて済むこと、拡張性に優れて外部連携がしやすい点も評価したとしている。

 同行はkintoneを導入後、業務フローの再構築に取り掛かった。その結果、カスタマーセンターから他部署に問い合わせるエスカレーション業務にかかる工数が半減したとしている。データの信頼性や堅牢(けんろう)性を高めることによる業務高度化も図れたという。

カスタマーセンターの各部署へのエスカレーション業務にkintoneを活用(出典:サイボウズのプレスリリース)

 同行ではエスカレーション先の部署の担当者など、カスタマーセンター以外の複数部門でもkintone利用が拡大している。kintoneアカウントは、当初の20ユーザーから2年経った現在は550ユーザーに増加し、kintoneによって作成されたアプリケーションの数は、実験的に開発したものも含めると200を超えた。

「顧客の電話に対話型AIが自動応答」 実現に向けて何をやっている?

 住信SBIネット銀行は、顧客対応を効率化するために、kintoneと生成AIを組み合わせて利用している。

 同行が目指すのは、「顧客からかかってきた電話に対話型AIが自動応答する」という形だ。対話型AIの受入テスト(UAT)の際に利用するシナリオを、生成AIを使って作成しているという。

 生成AIをkintoneに連携させるプラグインとして、同行はM-SOLUTIONSが提供する「Smart at AI for kintone Powered by GPT」(以下、Smart at AI)を利用している。Smart at AIを利用することで、kintoneのアプリケーション内で生成AIを利用してテキストを生成できるようになる。

 Smart at AIを利用して生成AIによって作成した質問文を、対話型AIがどう回答するかのUATに使うことで、どのような効果が生まれるのか。チャットベースの生成AIが一問一答形式で処理するのに対して、kintoneとSmart at AIとの組み合わせでは、APIコールの連続実行によって繰り返し処理されることから、時間と手間を大幅に削減できるという。また、AIを活用することで、業務担当者がシナリオを作成する際に発生しがちなバイアスや偏りを防ぐことが期待され、UATの精度向上を図れるとしている。

kintone+Smart at AIで、受け入れテスト(UAT)のシナリオを作成(出典:サイボウズのプレスリリース)

 今後、住信SBIネット銀行は、各種システムと利用者をつなぐためのフロントエンドUIとしてkintoneを活用する予定だ。また、AWS(Amazon Web Services)で展開している基幹システムとのAPI連携を進めることで、セキュリティ要件を満たしながら業務がクラウドで完結するような環境を目指すとしている。

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